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三角関数の人類史③~ヒッパルコスの偉業

前回はこちらです。

 本日紹介するのは、古代ギリシャの偉大な科学者・ヒッパルコスです。前回登場したアリスタルコスよりも100年ほど後の紀元前2世紀に活動しました。

ヒッパルコス

 彼は長期間にわたる天体観測をもとに、いくつもの発見をしました。

月と地球の距離の計算

 一例を挙げると、地球と月の距離の比の推定です。前190年、ギリシャで皆既日食が観測されましたが、同日にエジプトのアレクサンドリアでは5分の4のみが隠れる日食でした。

 ギリシャとエジプトの位置の差も加味すると下のようになります。

出典:P.オーディフレッディ著、河合成雄訳『幾何学の偉大なものがたり』創元社

 ヒッパルコスは、角度と辺の比をもとに計算し、地球と月の最長距離は地球の半径の83倍、最短距離は71倍と考えました。
 実際には56倍と64倍なので、時代を考えればかなりの精度です。

「三角法の父」

 ヒッパルコスは『円の弦について』という書物を著し、三角法の知識を体系化しました。このため、彼は「三角法の父」とも呼ばれます。
 また、角度一周分を360度とし、度を60分に分ける方法もヒッパルコスが考案したとされます。

 古代ギリシャにおける最も偉大な科学者といえるヒッパルコスですが、残念ながら著作は現存していません。

 彼の学説は、クラウディウス・プトレマイオスの『アルマゲスト』をはじめ、後世の学者が著書の中で言及しているため、知ることができるのです。

(続く)


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