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【書評】中川裕「アイヌ文化で読み解く『ゴールデンカムイ』」(集英社新書)

 今年大団円を迎えた『ゴールデンカムイ』は、アイヌの文化を詳細に取材していることで知られています。アイヌ文化の認知度向上に大きく貢献したといっていいでしょう。

 本書は、『ゴールデンカムイ』でアイヌ語監修を務める専門家による解説書です。

『ゴールデンカムイ』はアイヌ文化に対してリスペクトの念を持っていますが、あくまでフィクションのため架空の習俗なども書かれています。なので、実は『ゴールデンカムイ』でアイヌ文化を「学ぶ」ことは危険なのです。

 本書では、漫画から引用されたコマもふんだんに使いながらアイヌ文化の実際を解説しています。その範囲は、アイヌの価値観(「カムイ」の概念など)、伝承された物語、食文化、アイヌ語など多岐にわたっています。

 例えば、作中で美味しいものを食べた時の言葉として描写される「ヒンナ」。ファンの間では「美味しい」という意味として定着していますが、本来は「ありがとう」という感謝の言葉。食べ物に限らず使います。

 また、動物の内臓などを刻んだ料理「チタタプ」は、「つくりながらチタタプと唱える」と描写されますが、これは野田サトル先生の創作です。

『ゴールデンカムイ』は単体でも十分面白いのですが、本書を読めばさらに何倍も面白くなると思います。


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