見出し画像

岡山の名城・備中松山城の天守を"普段見えない角度"から見る

 岡山県高梁市にある備中松山城は、全国に12しかない「現存天守」のひとつがあることで知られています。

現存天守中で最小であり、最高所にある

 天和3(1683)年に修築され、明治維新以降も解体されることがなかった天守は、国の重要文化財に指定されています。また、天守の背後にある「二重櫓」も重要文化財です。今年11月4日~5日に内部が特別公開され、貴重な機会を逃さないため訪問してきました。


現存唯一の「山城」の天守

 備中松山城が築かれたのは、標高430mの小松山山頂です。中世には、さらに奥の大松山に城が築かれていました。天守や大規模な石垣を持つ著名な備中松山城の姿は、近世に整備されたものです。

 天守が残る唯一の山城であり、けっこうきつい登山をしなければなりません。その代わり、山道を登り切った時に目に入る石垣には感動を覚えます。

 城の正門にあたる大手門跡からは、天然の岩板と一体化した石垣が見られます。超弩級の迫力です。

 三の丸から見上げると、幾重にも石垣が連なっており、鉄壁の守りを感じさせます。

小柄だが風格ある天守

 二の丸まで上ると、ようやく天守が見えてきます。写真手前の門をくぐると本丸です。

 余談ですが、本丸では城跡に住み着いた”猫城主”が出迎えてくれました。

猫城主「さんじゅーろー」。よく人に馴れている

 さて、備中松山城最大の見所は、もちろん現存天守です。二層二階と小規模ですが、岩盤の上に建てられており、どっしりした印象を与えます。
 正面を見ると、突き出た出窓が目立っています。出窓の下部には敵を攻撃するための「石落」があり、上には唐破風からはふ(曲線を帯びた飾り部分)があしらわれ、風格を出しています。

 内部には囲炉裏があり、籠城時に使うことが想定されていたようです。

割と大きく、実用に足るサイズ

 二階には、「御社壇」という神棚のような場所があります。天守を現在の形に改築した城主・水谷勝宗が、同家の守護神である羽黒大権現を勧請した…とのこと。姫路城や松本城の天守の最上階にも、同様に神様をお祭りするお社があったのを思い出しました。

 天守の裏手に回ると、野面積みの武骨な石垣を間近に見ることができます。

野面積みとは、石をほとんど加工せず積む工法。

 しかし、天守の背面の様子は、見上げてもよく見えません。天守の後ろのスペースが手狭なため、距離を置いて見られないのです。

特別公開「二重櫓」からの景色

 さて、今回の訪問の目的である「二重櫓」に入ってみます。天守のすぐ背後にあり、城の裏手から攻めてくる敵を監視しました。普段は外観しか見ることができません。

今年はGWと11月の連休だけ公開された

 櫓の内部はこんな感じです。出土品や、近代に城が保存された経緯などが展示されていました。

二重櫓の二階の様子

 そして、櫓の二階からはこんな風景が見られました。普段見ることができない角度から、「天守の背後」を克明に観察できます。

 一階部分は、付櫓のように突出しています。正面では曲線の「唐破風」という装飾が目立ちましたが、背面では三角形の「入母屋破風いりもやはふ」が目立ちますね。天守の背面をこれほど綺麗に写せるスポットは、他にないと思います。
「一年に数日しかこのショットを撮れないのだ」と思うと、つい何度もシャッターを押してしまいます。

 ちなみに、二重櫓から北の方角(城の裏手)からはこんな景色が広がっています。この方角を監視するのが、櫓の本来の役割です。

大松山城という大要塞

 ほとんどの人は小松山城を見て、満足して(歩き疲れて)帰ってしまうのですが、さらに奥の「大松山城」も城ファンには見逃せません。

 余談ですが、二重櫓の中で近くにいた中学生くらいの少年が、お母さんに「もっと奥に大松山城がある」と教えていました。将来有望な少年です。

 では、小松山城の北の端にあたる木橋を渡り、大松山城へ登っていきましょう。

 訪れる人も少なく、草の生い茂った石垣も趣があっていいものです。

 面白いのが、山中にある「大池」という遺構です。石造りのプールのような貯水池です。

訪問時は水が抜かれ、発掘調査が行われていた。

 大池は、「討ち取った首や血で汚れた刀を洗った所だ」として「首洗い池」とも呼ばれているそうですが、さすがに後世の創作と思われます。

 また、大池とは別に、石造りの立派な井戸も残されています。

 大松山城の北端、すなわち「最果て」にあたる「番所跡」にも立派な石垣が残っています。今は訪れる人もほとんどなく藪におおわれていますが、かつては確かに城があったのです。

藪だらけなので夏場はお勧めしない

 現存天守に注目がいきがちな備中松山城ですが、天守以外にも見所のつきない城です。丸一日滞在しても見飽きない名城を、是非体感してほしいと思います。
 

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?