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僕と○○へ。これまでとこれからの君と○○へ。#13

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■#13
2019年9月某日。
「辞めたいです」
じゃなく
「辞めます」
そう、統括に話した。
時刻は深夜だった。

数分考えて統括は
『分かった』と。
続いて『退職日はいつにしたい?』と聞いてきた。

僕が10年前にバイトで働き始めたのが、2010年の3月1日だったから
「2020年の2月29日(うるう年)でお願いします」と告げた。
統括は受理してくれた。

喧嘩ばかりしてきた統括だったけれど、仲が悪い訳ではなかった。
むしろどの従業員同士よりも、僕と統括は仲が良かったと思う。
10年前、何も持たない自分を拾ってくれたし、時代錯誤だけど大きな失敗をしたら滅茶苦茶殴られ蹴られしたけど、それが愛情だと感じれるほどに、統括は熱い人であった。
尊敬もしていた。
だからここまでやってこれた。
この10年で、仕事のことも、仕事に関係ないことも、一番話したのは多分統括なのではないだろうか。

統括はとても勘違いされる人だった。
僕と似ている所が沢山あったけれど、決定的に違う所があった。
ぼくは、自分が好きなものを貫いて結果を残したい。
統括は、自分は二の次、どんなに興味が無くとも従業員に給料を渡すために泥を被り鬼になり、店を繁盛させて結果を残す。
こんな2人だからよく対立していたのかも知れない。
それと同時に、そんな統括だから、僕は尊敬出来たんだと思う。
そんな統括は凄く分かりづらい愛情表現をする人だから、人からあまり理解されないし、嫌われる事が多い。
それがまた僕は、なんだか悔しいなーとも思っていた。

とても恩がある人である。
だから僕はある約束をした。
『もう二度とライブハウスでは働かないです。』
『やばくなったらすぐに呼んで下さい。』

これが僕が出来る最大の恩返しであった。

そうして自分が退社するにあたって動き出す。
引継ぎもそうだし、本社含め相当な動きがあったと思う。
正直この時期の事はあまり思い出せない。
それくらい慌しかった。

そして2020年2月29日、僕は10年間勤めた会社を辞めた。
翌日の3月1日、ただの人になった。
横には○○だけが居た。

仲良くやろうぜ。

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イラスト:目黒しおり

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