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僕と○○へ。これまでとこれからの君と○○へ。#4

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第三話「#3」はこちらからご覧下さい。


■#4
ライブハウスのブッカー、そしてライブハウスの副店長として働き出した。

ライブハウスのブッキングはとても特殊な役職であると思います。
ハッキリいうと誰でも出来る仕事ではないです。ここではその理由は省きますが、とにかく難しく、また、「美味しくない」です。
(*このブッキングという仕事に関してのやりがいや苦悩や僕なりの哲学や美学に関しては別の機会にでもお話出来ればと考えています。)

ライブハウスにとってブッキングは生命線であり、そのブッキングが従業員のモチベーションを上げチームワークを作り、店の売り上げに繋がり、店の繁栄へと結果を残します。
また副店長ですが、当たり前にその上に上司として店長がいるので、それの補佐周りをします。
時に店長以上の仕事量を伴う場合もあります。
店長は責任を取る係り。
副店長は店長の仕事と他の従業員の仕事を円滑に繋げるパイプ係り。そしてそのほか雑務全て。
また、見方によっては「副店長とは、店長になれない人」という事ともとれます。それが案外、一番悔しかった記憶があります。
なのでその頃の自分はとにかく毎日ギラついていた記憶があります。
この10年間で最も多く、バンドやマネージャー、イベンター、従業員と喧嘩をしていた時期だと思います。
この頃の自分はこの10年間の間でも最も自己採点が厳しかった日々でした。納得のいかない毎日。
未だに僕の事を怖い人と思う方々は、この頃の僕を知っているからだと思います。

仕事が好きだから、音楽が好きだから、対立してしまう。むかついてしまう。
責任感があるから喧嘩をする。葛藤する。
僕はそんな自分を客観的にも主観的にも異常だとは思ってなかったですが、疲れるな~とは思って仕事していた記憶があります。
そんな自分に○○は歩み寄ってきますが、そんな○○を無視して、沢山の無茶をこの店でしてきました。
まるで憂さ晴らしかのように。
上司に怒られても、勝手にコンピCDを作ったりサーキットフェスをしたり深夜公演で埼玉の小学校から和太鼓を借りてきてドカドカ打ち鳴らしながら酒を飲むイベントをしましたし、きぐるみを着て代々木の町を徘徊して店の宣伝をしたりしました。
ライブの精算でバンドから『機材費払いたくない』と言われた時は「スタジオでもカラオケでも使ったら金払うだろ。なんでライブハウスには払えないんだよ」とキレて僕の財布からそのバンドの機材費を払ったりもした。集客ノルマ不足でノルマのお金をもらう時、ヘラヘラしながら支払うバンドにも怒ったり、逆に悔しそうにお金を出すバンドに対して泣きながら精算したりした。
今思えば、なにやってんだろう自分とちょっと笑えますね。

まだ全然売れていないバンドを見つけて、「3年後絶対結果が出るから付いて来て欲しい」と言っていた。
他の誰も興味を示さないバンドに光を感じた。
自分のセンスを信じてみたかった。
そうして音楽、仕事に熱中した日々でした。
とにかく、ギラついていた。
力が有り余っていた。
血の気が多かった。
全部、全員敵だと思うくらいに。


そんな毎日。

ある日、店に新人の女の子がバイトとしてやってきました。
その日は丁度店がメンテナンスの日だったので、何も教える事が出来なかったんだけどその子と一緒に店の看板のペンキ塗りをしていました。
それしかさせてあげる事がなくって。

一緒に喋りながらペンキを塗った。
そうして陽が暮れた。

僕はその子に一目惚れをしました。
あの瞬間は、音楽や仕事の事を忘れるくらいに胸がときめいていた。
そう今でも覚えている。

よく喋り、よく笑う女の子だった。

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イラスト:目黒しおり

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