記事一覧
ラブちゃん(25句連作)
菜の花忌中華そば半ライスセット
春の昼中指の肉やわらかく
王将の天津飯や春来る
己が身を指で弾いてほうれん草
「ラブ、ラブ」と尻尾をさがす春休み
ぬいぐるみの足の短く犀星忌
三月や読み差しのまま返す本
襟ぐりにレースあしらい春の服
毎日をひかるみどりの山葵漬
ラブちゃんがリードを引いて花の窓
春駒をえくぼの深い同級生
ライナスのくるぶし棕櫚の日曜日
聖週間踊るとまわるジャム
お隣さんからもらった桃
桃が2個どっちが上手く剥けるのか競ったりして夏感じてる
いない部屋いない朝食注がれた牛乳光る君がいない朝
君は今日もまた出かけてこの町のベランダからは八百屋が見える
夜だからアンドーナツを作ろうよ このままどこかへ消えちゃおうよ
I know that you are an angel.ここでいいのか飛んでいかなくて
トマト・玉ねぎ・コーヒーフィルター・愛 君の街にも雨は降るのかい
そ
イマジナリー・(ガール)フレンド
真実はしんじつ、と書いてマミと読む。真実はわたしが望めばいつだってやってきてくれる。すこし、めんどくさそうに。すこし、息を切らして。
眠れないから会いにきて。
わたしのそんなわがままを叶えるために、真実は今日もわたしのもとに訪れた。ミルクと蜂蜜を入れたカモミールティーを淹れる真実の背中を空中で蹴れば、その反動でソファに倒れこんでしまう。
「ねえ、真実」
「なあに」
「真実はどうしてわたしのわ
春キャベツのパラドクス
春キャベツって、甘すぎてきらい。
ほのちゃんが言った。
わたし、甘い野菜ってきらいなんだよね。さつまいもとか、カボチャとかにんじんとか。ごはんに合わないもの。
そう、とわたしは返す。今日の夜ごはんは生姜焼きと茄子とズッキーニの焼き浸しと新玉ねぎのサラダとわかめスープ。ほのちゃんは生姜焼きの下に敷かれたキャベツのスライスを飲み込む。
でも、料理をしたのは彼女だし、嫌ならキャベツなんて省いた
ふたりの夜に消えるパラドクス
ねえ、あれ、なんていうんだっけ、馬がくるくる回るやつ。競馬? そんなんじゃないよ、遊園地にあるやつ。ああ、メリーゴーランドか。
「それ! メリーゴーランドだ」
急になに、茉麻うるさい。寧々が枕に耳を押し当てる。あたしも寧々もなにも着ていなくて、シーツが冷たかった。あたしたちはふたりで裸になってベッドで眠るけど、お互いの体に触れることはない。ただ単にうちに客用布団がなくて、ふたりとも寝るときは服
地獄はいつもきみの形をしている
ベッドの上で寝転びながら、キッチンの方でやかんが沸く音を聞いていた。お湯を沸かすくらいであればキッチンから目を離しても構わないだろう。IHだし。ワンルームだし。キッチンにはベッドから五歩も歩けば辿り着く。
隣で眠る泰介はほとんど寝息を上げることなく、手を胸の上に置いて寝ているので……彼はいつもそうだった……、死んでいるんじゃないかしら、と思う。口元に手を当てると弱く息が当たって安心した。
コ