起こるべきだが起こらなかったこと
夜中にリビングで本を読んでいたら、いつのまにか寝たはずのせがれが横に立っていた。
おれのTシャツを指差しながら、自分の口に手を当て何度も叩いている。胸にプリントされたインディアンのことを言っているのだ。おれがインディアンの説明をした時にその動作をした。そして「パパ、き」と言って寝室に戻っていった。「き」は好きのことだ。
せがれと長く時間を過ごすようになって以来、やつはおれに直接的な愛情を示すことが増えた。共有する時間のせいなのか、情緒の発達の段階なのかよくわからない。抱っ