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好きな小説の好きなあとがき

今朝公園の入口前の道路端で見かけた、若い母親が手をつないでいた2歳ぐらいの男の子。
以前にも何度か見かけていた。
キョトンとした顔、走る自動車を追うつぶらな瞳が印象的。
僕は帰宅するや、本棚からずっと昔に読んだ文庫、伊集院静の「機関車先生」を手にとってあとがきのページを開いた。

「子供の目の高さは、大人とちがう。大人よりもはるかに地面に近く、土の匂い、草いきれ、小動物の営みを敏感に感じとる。同時に、子供にとっての時間の流れは、はるかに大人より遅い。よくいわれることだが、四十歳の大人にとっての一年間は、生きていた時間の四十分の一にしか相当しない。ひるがえって、十歳の子供にとっては、十分の一である。
時間の歩みは、大人に比べれば遅く、それだけ季節の移りかわり、風の匂い、光の変化をいち早く察知する」(あとがき抜粋)

書き手はハードボイルド作家の大沢在昌。冒頭は児童文学者になりたいと思っていたという告白で、伊集院のこの小説が心底気に入ったんだと思える寄稿になっている。

あの男の子ぐらいの頃の僕の写真を思い出した。
素っ裸で水浴びしている僕とそれを楽しそうにながめる母親。小さなサイズの白黒プリントはどこかに仕舞ってある。

母親に連れられて自動車を眺めていた日を、男の子は覚えているかな?
保険会社のCMの「なんでもない日が、思い出になる」って、いいコピーだと思う。
子供たちのために、早く日常が戻ってほしい。

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