TomoNogi

なかなか寝付けない方、どうぞご覧ください。映画とアートと呟きの毎日です。 県立高校→ニ…

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なかなか寝付けない方、どうぞご覧ください。映画とアートと呟きの毎日です。 県立高校→ニュージーランドで映画学と中国語専攻→カナダでカメラマンとしてワーホリ→就労ビザ→現在ニュージーランドで映画制作準備中。 https://karoriproduction.com/

マガジン

  • Cheaper Than 1$ Noodle Review

    1ドル・百円前後以下のインスタントラーメンのレビューです。 こちらでも: https://www.facebook.com/media/set/?set=a.563862317048702&type=3

  • 散文集「記憶達」

    留学、ワーホリ 、旅行などでモヤモヤした時の事を色々書いてます。

  • ジリ貧撮影考察

    超低予算での映像・写真撮影の考察を少々

  • 超主観的「国」レビュー

    いろいろな国にお邪魔した時の感想・主にトイレの事とかです。

最近の記事

光の花

光の花 凶気  交差点で、タイラーは足を止めた。  周りの通行人の顔が見えなかった。  これは夢だと、すぐに分かった。  隣に、大きな男が立っていた。嬉しそうに話しかけてくる。顔は見えたが、見覚えは無かった。服の上からでも分かる屈強な体で、取っ組み合えば、負けるかもしれない。その声は常識的で大人しそうな印象を与えた。  その男は、タイラーに既に長いこと話し込んでいた。とても楽しそうだった。隠し趣味を遂に語れる人間を見つけたのだろうか。 「これね、ハマってるん

    • 「封印」 第二十七章 無実 (終章)

       クーデターが終わった。新政権が樹立され、公安は一度解体された。クーデター側についたアンサング達はすぐに再採用され、首相側に送られたイウェンは逃亡するしかなかった。首相の後を継いだのはダムナグ社前副社長だった。ヴァサルの息子。 「あのバカ息子、また殺したみたいですよ」  アンサングは長官の部屋に入った。長官はアンサングと同じ新聞を読んでいた。一面は、クーデーターから逃亡中の、イウェン。最背面に、釈放される、ダムナグ二世と、護衛のオブスター。ひき逃げで家族死亡。責任能力無しとし

      • 「封印」 第二十六章 焼却

         バハイの警官達と、南耀軍の生存者達は、空爆が終わった直後、街に切って返した。一軒一軒家屋やオフィスをクリアしていく彼らは、黙々と、死んだ家族の仇を討つ様に、遭遇する感染者を撃ち殺していく。その最中、感染した仲間にも、彼らは容赦しなかった。  ドアを慎重に開き、銃身で取手を数回叩く。廊下に、男の姿が浮き上がった。  その頭を撃ち抜く。圧縮された鋭い銃声と共に、男は倒れ、警官達は速やかに屋内を制圧アする。  キッチンで、警官は足を止めた。  死んだ犬。開けた玄関を振り返る。引っ

        • 「封印」 第二十五章 解放

           アンサングがトンネルを抜けた時、既にエテューが、ライリーに向けて、引き金を引こうとしていた。 「待て! エテュー、待て!」  アンサングの残弾数は1発。今ここでライリーに死なれる訳には行かなかった。エテューという優秀な警官を失いたくなかった。  よってアンサングは銃を少し下げながら、接近した。 「まだだ、エテュー! 下がれ!」  エテューは動かず、ライリーが顔を上げた。ライリーが何かを言うか、する前に、アンサングは銃をさらに下げた。 「公安のアンサングだ。ダムナグと政府の違

        光の花

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        • Cheaper Than 1$ Noodle Review
          15本
        • 散文集「記憶達」
          39本
        • ジリ貧撮影考察
          5本
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          12本

        記事

          「封印」 第二十四章 根拠

           疫病サレスが流行った時、ライリーの妻は、ワクチンを受ける事を躊躇った。妊娠していた。近所の医師に相談すると、医師はワクチン接種の推奨はしなかったが、同時に拒絶の明言を避けた。医師は正直な人だった。  ワクチン接種を拒否した事で、妻がサレスに感染した場合、治療費及び入院費は全額負担になると、政府が決めた。保健庁とダムナグ社、医師会の人間達は口を揃えて、ワクチンに副作用は無いと言った。それでも妻は、念の為にとワクチン接種を拒んだ。  1ヶ月後、妻は疫病で倒れた。ワクチン接種をし

          「封印」 第二十四章 根拠

          「封印」 第二十三章 腐敗

           夜、男は部屋を出た。もう我慢できなかった。こんな隔離で、食糧も底をつき、職場にも行けず、何も出来ない。  護身用のナイフを手に、男は非常階段から一階まで降りた。見張りの警官が二人、アパートの玄関前に立っていた。その内の一人が、こちらに歩いて来た。銃を背中に回し、ズボンのチャックを開けながら、非常階段の扉を開けた。この前男の顔を殴った警官だった。  警官は男に気づいた。 「何してんだお前?」  警官は顔を顰めた。 「さっさと戻…」  男のナイフが、警官の腹に突き刺さった。 「

          「封印」 第二十三章 腐敗

          「封印」 第二十二章 劣化

           じいちゃんの猫が死んだ。死ぬ前に、じいちゃんは電話してくれた。 「ブバがさ、もうすぐ死にそうなんだよ。お別れを言いに来てやってくれよ」  電話のじいちゃんの声には元気がなかった。 階段で座るブバも元気がなかった。 「もう歳を取ってるからね。膵臓が悪いみたいだよ。ご飯も食べられない」  じいちゃんはブバの背をそっと撫でた。ブバは動かず、苦しそうでもなかった。何かを待っているように思えた。 「でも、ちゃんとお別れを言ってあげた方が良いと思ってさ」  じいちゃんは悲しそうだった。

          「封印」 第二十二章 劣化

          「封印」 第二十一章 烈火

           自分と妹は、トラックの荷台の段ボールに入れられた。 「お父さんはここに残るから、先に行ってな」  拳銃を後ろ腰に差し、トラックの荷台の扉を、父は閉めた。母が助手席から降りた。 「あんたはいつくんの?」 「明日には行くよ」 「でも…」  父は妹を振り返った。 「あいつは、すぐに治療しないとダメだ。今ならまだ検問を抜けられる」  そう言って父はトラックの鍵を母に渡す。 「戒厳令の発令中です! 絶対に家の外に出ないでください!」  パトカーが大通りを過ぎていく。  父は母の肩をそ

          「封印」 第二十一章 烈火

          「封印」 第二十章 一緒

           部屋は暗かった。 「エリ!」  テレビと壁が、真っ赤に染まっていた。  笑い声が聞こえた。キッチンで何かが倒れた。何かが、落ちて、床を転がった。  ライトを向ける。  頭。誰かの。首の血管を食いちぎられていた。その血管をたどり、ライトを上げる。  エリが笑っていた。  それを見て、声を出せなかった。  エリが一歩前に出た。さらに笑顔が広がった。赤黒い口と欠けた歯が、妙に歪んでいた。 「遅かったね、エテュー…」  腰が抜けそうになった。腰が机を打った。廊下が揺れた。  階段か

          「封印」 第二十章 一緒

          「封印」 第十九章 任務

           隔離は、過去のサレスに感染した事がない、ワクチンを接種されていない人間を優先的に行われた。  故に親が隔離された。隔離先では成人、子供、老人が区別されていると聞いた。  携帯は繋がらず、ニュースも止まり、情報はもうほとんど入らなかった。  隔離制作開始から一週間、食料は底をついた。配給は来なくなった。そもそも配給されたのは、マンゴーの缶詰と水だけで、アレルギーのある自分は食べることができなかった。缶詰を隣人と交換したが、皆水不足で、やがて電気も止まった。 「必ず支給は行われ

          「封印」 第十九章 任務

          「封印」 第十八章 警察

           11歳の時、大規模な突入が、バハイ南区で行われた。近所の住人が大勢逮捕された。隣のアパートから、従姉妹達が引き摺り出される様子を、今も覚えている。  それを止めようとした父を、大柄な警官は押し倒した。  後頭部から、父は地面に倒れた。  頭蓋骨が陥没し、父は寝たきりになった。そのショックで、妊娠していた母は流産した。母と13歳の自分を残して、父は別の容疑で逮捕された。母は薬物に手を出し、自分が高校を出る前に自殺した。  責任を問われた警官は一人もいなかった。  警察が、自分

          「封印」 第十八章 警察

          「封印」 第十七章 激痛

           ダムナグ社に向かった人間が帰って来ない。  あの会社がした事を聞き、目の当たりにするまで、本当の悪がいることを、ライリーは知らなかった。いつもどこか異国の地で、悪意をもって行われる悪事というものは存在するものだと思っていた。  利潤追求という、企業という個々の責任感が分散された集団による、金と時間の全額投資。薬を作り、試し、売る。問題が発生すれば、それを隠し、法を金で改正し、売る。人が死ねば、それは持病のせいで、法では守られ、被験体に訴訟権利は無い。  実験は南耀で行い、中

          「封印」 第十七章 激痛

          「封印」 第十六章 災厄

           エテューと連絡が取れない。携帯は繋がらない。エリは最後の水を一口、口に含んだ。アパートは隔離政策として、防護服に身を包んだ警察が囲んでいる。 「開けてくれ!」  玄関を誰かが叩いた。 「署の人間だ! 頼む! エテューの同僚だ! エリさんいるんだろ!」  エリは急いでドアを開けた。血まみれの警官が二人、転がり込んで来た。 「大丈夫ですか!?」  二人のうち、若い警官はひどく出血していた。すぐにその警官は目を閉じた。 「タオルを…」  年配の警官が銃を手に、指示を出した。エリは

          「封印」 第十六章 災厄

          「封印」 第十五章 遭遇

           息子が刑務所にいる間、誰かに息子がどこにいるのかと聞かれる度、言い訳を考えねばならなかった。 「外国で働いている」 「どこで?」 「南耀で」  やがて、いつの日か、バハイの刑務所に書く手紙を、遠いエイナン島宛に仕掛けた時もあった。  誰にも話せなかった。  息子が出て来た時も、息子も私も、誰にも話せない事だった。  息子は10歳の少女と関係を持った。少女の家族は、私と同じ母子家庭で、息子が日々の食事代や家賃を補助することで、少女の母親は関係性を認めていた。  少女が同級生に

          「封印」 第十五章 遭遇

          「封印」 第十四章 氾濫

          「戒厳令が発令されました! 絶対に家の外に出ないでください!」  ものすごい数のパトカーが窓の外を通り過ぎていく。 「命令です! 絶対に屋外にでないで下さい! これは市の法令です!」  市の警報音がサイレンに重なった。 「よく言うよ。普段は何にもしないくせに」  窓際で、杖を手に、妻が不満をこぼした。  窓の外を、大勢の人間が走り去っていくのが聞こえる。カーテン越しに、人々が走る方向を覗くと、向こうから更に大勢の人間が走ってくるのが見える。警察のサイレンと、市の警報音は、至る

          「封印」 第十四章 氾濫

          「封印」 第十三章 軍船

           南で、その影は溢れ出した。木々の下を這い進み、島々の間を縫い上がり、水平線を超え、人間を含む全ての生ある生き物の血と体液の中に啜り沈み込み、その恐怖はたどり着いた。世界の果て、忘却の彼方、太古の歴史の片隅に置き去りにされたはずの闇の残骸が、帝国有史史上最悪の悲劇に移り変わる発端は、一人の兵士だった。 *  南耀から帰還した軍船。その軍船は水平線から突如出現した。事前通達は入っていなかった。 「軍船の追加情報。エイナン島の反乱鎮圧に向かった南燿軍のものと判別。帰還予定は2週間

          「封印」 第十三章 軍船