見出し画像

なぜ、いま、VoC経営なのか。#10 第3章VoC活用を拒むもの

Insight Tech CEO 伊藤です。不満買取センターを運営し、独自のデータ×独自のAIで「声が届く世の中を創る」ことを目指しています。

このnoteは連載「なぜ、いま、VoC経営なのか。」の第10回(#10)をお届けします。【#1~#9も是非ご覧ください】

この連載では本シリーズでは【VoC経営】を以下の通り定義しています(VoC:Voice of Customer)。

ユーザーや生活者一人ひとりの声に耳を傾ける。
それを、一人ひとりの不満や期待に応えるために活かす。
加えて、寄せられた声の総体の中から経営課題を見出し改善するとともに、その中から新たな価値創出の可能性(イノベーションの種)を見出し、ビジネスを強くし、生活者や社会に新たな価値を提供しようとする経営。

#10は第3章として「VoC活用を拒むもの」について皆さんと認識共有できればと思います。

第2章ではVoCの様々な活用シーンをご紹介し、「あーこういう感じで活用すれば効果が出るんだな」という点についてお分かりいただいたと思います。

一方で、現実にVoCから「ユーザーの真実」を炙り出そうとするといくつかの壁に直面します。#10ではその壁についてお届けします。次回#11では第4章として、その壁を乗り越える術をお伝えできればと思います。

VoC活用の3つの壁

VoC経営に向けて、例えば自社に届いている顧客・ユーザーの声(コンタクトセンターのテキストログや顧客満足度調査に書かれたフリーコメントなど)を活用しようとデータを眺めると、以下の3つの壁に直面するのではないでしょうか。

1.客観性:優先課題を客観的に炙り出せない
2.即時性:目検や都度分析故に時間がかかってしまう
3.活用度:VoCを起点に意志決定する仕組みがない

画像1

つまるところ、顧客やユーザーの声、あるいはSNSや不満買取センターなどのプラットフォームで語られる生活者の声(いわゆるVoCデータ)は【テキストデータ】として集約されることが大半であり、VoCの【テキストデータ】の扱いにくさとこれにより意志決定のしにくさが課題として顕在化しやすいのです。

それぞれについてどんな壁(課題)なのか見ていきましょう。

1.客観性:優先課題を客観的に炙り出せない

テキスト形式のVoCデータは典型的な非構造化データです。つまりすぐにデータとして処理できるようなデータではない、ということです。

テキスト形式のVoCデータから「顧客・ユーザー・生活者の意見」をあぶりだすことは容易ではありません。アンケートのように選択された結果ではなく、各人が各人のスタイルで表現された声の結果であり、客観的に分析しにくいものです。

例えば、単に単語だけを集計したところで「何が言われているかわからない」。また、一つの発言で複数の意見がある場合、「結局何が言いたいのかわからない」。つまり単純な集計処理では真意は理解できないのです(下図Case1)。

加えて、「汚れが取れない」と「水垢が落ちにくい」など表現は異なるけれども意味合いが類似する意見も多く、これらをうまく「かたまり」として判別できないと、意見の量的な意味を正確に理解することができません(下図Case2)。

また、テキスト形式のVoCデータのなかには様々な感情表現が記載されていますが、これらを主観で判断・分類することは揺らぎを生むこととなり難しく、意見の質(重要さ)を正確に理解することも難しいのが実情です(下図Case3)。

画像2

私たちのチームへご相談いただくケースの大半が上記のいずれかに合致しており、「単純なテキストマイニングだけではVoC活用に至らない」というご相談が大半です。

2.即時性:目検や都度分析故に時間がかかってしまう

企業によっては月に数千~数万単位の問合せを受けるケースや、毎月数千件の顧客アンケートを実施するケースもあるかと思います。

前述の通り、VoCデータは数字データとは異なり、取り扱いが難しいデータであるため、分析に膨大な時間と工数がかかり、結果として、タイムリーに課題や機会を把握することが難しくなっています。

VUCA時代においてスピーディに市場把握をする必要がある中で、この点は大きな障壁になっています。

また、目検の負荷の高さが前述の客観性を低下させる(目検による分類やラベリングの揺らぎを発生させる)原因にもなり、「VoCデータ活用しにくいループ」に陥っているケースも多いようです。

このことは単に分析的な課題だけではなく、「緊急度が高いVoCをいち早く見つけフォローする」ことを難しくし、企業としての信頼性を低下させる可能性がある大きな課題と考えられます。

画像3

つまり、VoCの活用度を高めることは、単に業務効率の向上(人件費削減などのコスト削減)のためにやるのではなく、「いまできていないことをやれるようにする」「それにより企業の競争力を高める」ことが目的なのです。

3.活用度:VoCを起点に意志決定する仕組みがない

企業が直接保有するVoCデータが一元的に集約されているケースはほとんどありません。これが大きな課題となります。

お客様からの問い合わせはコンタクトセンター、アンケートはマーケティング部、チャットボットでの問い合わせはデジタルサービス部、といった具合に、VoCデータが各部署に分散して蓄積されており、且つ現場レイヤーのみ取り扱っているというケースが多いのが実情です。

私たちが運営する不満買取センターに寄せられるデータを活用いただいている先進企業でさえも、不満のVoCデータの活用が「個別」「都度」となっているケースが大半です。

つまり、VoCの活用が各ラインでの個別最適にとどまっており、マネジメント層や経営層がスピーディ且つ統合的にVoCに触れ、そこから経営に関わる意志決定や事業戦略の方向性を決定する仕組みが整備されている企業はごく一部です。

データ分析の精度向上及び効率化はもちろん重要ですが、その結果を成果につなげるためには、VoC起点で意志決定につながる仕組みが不可欠です。多くの企業でこのような仕組みがないことが大きな障壁になっています。

マーケティング施策はオンラインとオフラインで実施しながら、そのフィードバックともいえるVoCデータを個別に活用する、というのは理にかなっているとは思いにくいです。

画像4

まとめ

今回は「VoC活用を拒むもの」として以下の3つの壁(課題)についてお話をさせていただきました。皆さんの企業ではいかがでしょうか。

1.客観性:優先課題を客観的に炙り出せない
2.即時性:目検や都度分析故に時間がかかってしまう
3.活用度:VoCを起点に意志決定する仕組みがない

これらの課題は多くの企業が抱えている課題です。言い換えれば、この課題をいち早く克服することでVoC活用の文脈では競争力を発揮することにつながり、優位に立つ可能性がある、というのが「今」なのです。

VoCデータを蓄積している、SNSデータやオープンデータを購入している、では不十分です。それはあくまで「Oil」。そこから価値を出すためには「意志」と「工夫」が必要です。

私たちInsight Techはこの課題をブレークスルーする役割を担いたいと考えています。この課題をブレークスルーすることで多くの企業が簡単にVoC活用ができ、「VoC経営」が当たり前になる社会を創りたいと願っています。

ではどのような対応が必要なのか。
それについては次回お伝えさせていただきます。

この章でお伝えしたことは以下のホワイトペーパーでもご覧いただけます。よろしければご覧ください。

日による温度差が大きい毎日。ご自愛ください。

では、また次回!


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?