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なぜ、いま、VoC経営なのか。#5 第2章 VoC活用シーン ②既存商品・サービス改善

Insight Tech CEO 伊藤です。不満買取センターを運営し、独自のデータ×独自のAIで「声が届く世の中を創る」ことを目指しています。

このnoteは連載「なぜ、いま、VoC経営なのか。」の第5回(#5)をお届けします。【#1~#4も是非ご覧ください】

この連載では本シリーズでは【VoC経営】を以下の通り定義しています。

ユーザーや生活者一人ひとりの声に耳を傾ける。
それを、一人ひとりの不満や期待に応えるために活かす。
加えて、寄せられた声の総体の中から経営課題を見出し改善するとともに、その中から新たな価値創出の可能性(イノベーションの種)を見出し、ビジネスを強くし、生活者や社会に新たな価値を提供しようとする経営。

#5は第2章の2回目です。
第2章ではVoCの具体的な【活用シーン】について以下の5度に分けてお伝えしています。今回は「2.既存商品・サービス改善のヒントを得る」です。


【VoC活用シーン】
1.CS・NPSを高める鍵を具体的に理解する
2.既存商品・サービス改善のヒントを得る ←今回
3.新商品・新規事業のアイデアを創発する
4.ユーザーとのコミュニケーションを深化させる
5.ユーザー対応・問い合わせ対応を最適化する

今ある商品・サービスの不断の改善が顧客のロイヤルティを高め、利用継続につながり、顧客生涯収益の最大化につながる、というお話です。そこでVoCはどのような役割を担うのか、早速お話を進めていきましょう。

2.既存商品・サービス改善のヒントを得る

市場総量の拡大が見込みにくい時代

日本は他の先進国に先立ち、人口減少が進展しています。

合計特殊出生率など「率」がよく話題になりますが、そもそも、母親相当の年齢に該当する人口の減少はもう避けられない事実であり、いくら合計特殊出生率が横ばい、微増したところで出生数が増加する見込みは立ちません。加えて、団塊世代が後期高齢者になりつつあるなか、死亡数の増加も止められない事実です。

これを踏まえると、人口減少自体は避けられない事実・前提といえます。

人口が減れば国内市場が減少する、という単純なお話ではないですが、買い手が減少する以上は、大幅な市場拡大が見込みにくいのも事実です。


【Data Topics】
下図は経済産業省の商業動態統計における「小売業」の販売額の推移をグラフにしたものです。もちろん景況の影響もありますし、個人の消費意欲にもよる上、物価の影響もあるため、人口減=販売減という単純な構図ではないですが、前年比の指数でみる限り、成り行きでの市場拡大が見込みにくいという前提を納得いただけるかと思います。

2Bのビジネスであっても、国内市場を対象とするセグメントにおいては、間接的には何らかの形で国内の2C市場にかかわることも多く、このことは多くの業界においてビジネスの前提となります。

つまり、多くのビジネスにおいて国内市場に関しては「総量の拡大が見込みにくい」前提で考える必要があります。

離反防止が収益安定の最重要ミッション!

市場が拡大しないとすると企業のマーケティングで重要になるのは「いかに市場シェアを維持・拡大するか」であることは言うまでもありません。

シェアを維持・拡大するための対応は大きく二つです。

①新規の顧客を獲得し続けること②既存の顧客の取引継続を促すことの2つです。単価については①と②の双方に掛かる異なる概念であるためここでは割愛します。

では市場総量の拡大が見込みにくい中で、①と②のいずれを優先することが賢い選択なのか。いうまでも②です。
①の場合はいずれかのブランド・商品からのスイッチングを必要とするため、生活者の意思決定においてスイッチングコスト(スイッチングに伴う抵抗感・負担)を伴うこと、そしてそれを購買行動につながるためには相応の初期獲得コストを必要とするからです。

顧客の初期獲得コストをかけることはもちろん大変重要ですが、このコストを打ち返すには、長い期間自社の商品・サービスを利用してもらう必要があります。つまり、顧客生涯価値を極大化させる必要がある。そう考えると、①新規の顧客を獲得する効果を大きくするためにも②既存の顧客の取引継続を促すことが前提であることがお分かりいただけると思います。

流出し続ける顧客を流入で補うのは限界がある。流出自体を止めなければ収益構造が持続可能になりえない、というお話です。

このような考えに立ち、多くの企業では「リテンション(離反防止)」がマーケティングの最重要ミッションとなっており、その重要性は日々高まっていくのです。

離反しそうな顧客をみつける、で十分でしょうか?

一人ひとりの顧客の取引データが蓄積されているような業界(例:金融、運輸、流通・・・)ではいわゆるビッグデータを活用したCRM(Customer Relationship Management)の1つのテーマとして「離反の予兆を捉える」取り組みを進めておられると思います。

一人ひとりの顧客に対して離反懸念をスコアリングし、なんらかのオファー施策でフォローしようというものです。いわゆる機械学習モデルが最も得意とする領域の1つです。私も過去に挑戦させていただいたことがあります。リスクのある顧客を知ることができる大変有効なアプローチです。

でも、それで十分でしょうか。
この人、離反しそう、とわかったときに、どう引き留めるのでしょうか?

料金の割引だけで引き留められるのでしょうか? もっと言えば、そもそも離反しそうになる状態を回避すべきではないでしょうか?

そもそも離反しそうな状態をどう回避するのか。それは「この商品・サービスのここが気になるな、ここが分からないな」というユーザーの声にヒントがあると考えます。つまり、VoCの中に離反につながる課題が隠されていると思うのです。

このことは、CRMデータを保有していないような、例えば食料品メーカーや日用品メーカー、家電メーカーであっても同じだと思います。むしろCRMデータがない業界ほど、VoCの重要度が高いと考えます。

オイシックス・ラ・大地さんの意志・お取り組みからも「顧客の声」と「継続率」との関連性の深さがうかがえます。

(記事抜粋)
サブスクの先駆け、オイシックス・ラ・大地の西井敏恭執行役員は「顧客データや声をもとに商品やサービスの改善を重ね、利用者の生活に本当にフィットしたものにする」という。料理キットも最初は振るわなかったが、年々おいしくなっている。またストライプインターナショナルの「メチャカリ」では、新品の新作やスタイリストが組んだコーディネートを毎週タイムリーに投入し、90%以上の継続率を維持している。


VoCで離反の可能性自体をプロアクティブに抑える

ではどのようにVoCを活用すればよいのか。答えはシンプルです。

手元にある自社に寄せられたユーザーの声を俯瞰し、優先的な課題を炙り出すのです。

コンタクトセンターに寄せられる声、メールでの問い合わせなどですが、現実には、1件1件のお問い合わせや質問に対応するところで終わってしまい、寄せられた声のビッグデータから優先的な課題や隠れた不満を見つけ出すことができている企業はごく限られている印象です。

なぜできていないのか。多くの企業からは「テキストのデータなので分析ができない」「人が分類しようと思っても主観になってしまい客観性が担保しにくい」といった課題をお聞きします。つまりVoCのテキストが扱いにくい、という課題です。

私たちInsight Techではこの課題を克服するVoC活用ソリューションをご提供しています。コンタクトセンターのログなどのテキスト形式のVoCを構文解析技術で解析し「●●がXX」というフレーズレベルで評価する。そして同様の意見の「量」と感情の強さ・離反との相関度などの「寄与度:質」の両面から強み・課題を炙り出す「優先課題図」というフレームワークです。

文章解析AIを活用したVoC活用ダッシュボード「アイタスクラウド」ではこの優先課題図をダッシュボード形式でご提供しています。どんな意見が多いのか、その意見は強い不の感情なのか、離反への相関は強いのか、を即座に理解できます。

優先課題図により顕在課題(量が多く且つ離反につながりやすい意見)だけでなく潜在課題(量は少ないが離反につながりやすい意見)も特定可能です。これらの課題をつぶしこむ形で施策展開をすることで離反の可能性自体を抑制することができるのです。

結果として、工数の削減(DXによる効率化)だけでなく、離反回避を通じた逸失収益の極小化を通じたトップライン貢献が大きいのは言うまでもありません。

実際に、他社へのサービス乗り換え要因の特定が難しかったという課題に対して私共がご支援させて頂いた以下の事例では日々のリテンション活動に活用頂いています。

顧客以外のVoCで競合との比較も忘れずに

ここまで(自社の宣伝もすこし入ってしまいましたが・・)で自社に届いたユーザーの声から顕在課題・潜在課題を炙り出し、これを改善につなげ、そして離反の可能性を抑制することが重要であることがご理解頂けたかと思います。

でも、よく考えてみると、生活者はあなたの会社だけを見ているわけではありません。日々、様々な情報に触れ、潜在的にあなたの会社の競合にあたる商品・サービスと比較したうえで、購買の意志決定をしているのです。私やあなたがそうであるように。

そう考えると、「自社に届く声だけで課題を特定してよいのだろうか」という次の課題が生まれます。自社のVoCだけでなく、競合へのVoCを含めて幅広く理解することで、市場における自社のポジションとそこでの強み・課題が明らかになるのです。VoC起点でのポジショニング戦略です。

例えば、私たちが運営する不満買取センターでは、生活の中のあらゆる不満を買い取っています。日々2万件ほどの不満が寄せられ、累積で2,300万件の不満のビッグデータを蓄積しています。もちろん、競合の商品・サービスに対する声も見られます。商品名などの固有名詞も入っています。

 もちろん、不満買取センターだけでなく、ツイッターやインスタグラムといったSNSを収集することで、具体的な利用シーンや競合との比較が可能となります。

これら集めた【自社以外のVoC】をアイタスクラウドなどのアナリティクスダッシュボードで可視化することで、業界共通の課題なのか、自社固有の課題なのかを明らかにでき、施策展開の優先順位付けがより的確に決められるのです。

とはいえ、いきなり【自社以外のVoC】から取り組むことはお薦めしません。まずは自社のユーザーの声に確りと耳を傾け、そこに隠れた課題(=対応することでロイヤリティを高めらえる機会)を炙り出すことをお勧めします。

まとめ

今回はVoC活用シーンの「2.既存商品・サービス改善のヒントを得る」に着目し、そのシーンの背景・課題・対応方向について以下の論点でお話ししました。

市場総量の拡大が見込みにくい時代
離反防止が収益安定の最重要ミッション!
離反しそうな顧客をみつける、で十分でしょうか?
VoCで離反の可能性自体をプロアクティブに抑える
顧客以外のVoCで競合との比較も忘れずに

このコラムが皆様のお役に立てばうれしく思いますし、VoC経営に取り組むきっかけになればこんなにうれしいことはありません。
今日はここまでです。今回も長文をご覧頂き、有難うございました!

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次回はVoC活用シーンの3回目として「新商品・新規事業のアイデアを創発する」をお伝えします。お楽しみに!

以下、お願い、です。

是非、次回以降もこのnote連載「なぜ、いま、VoC経営なのか。」を楽しみにしていただけると幸いです(お仕事の繁忙度によりますが、週に1度の更新を目標に頑張ります笑)。

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では、また次回!

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