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世界のニュースを日本人は何も知らない②

前回の投稿の続きになります。(前回のnoteはこちら↓)

今回はアメリカ、イギリス、ドイツなどについて書いていきたいと思います。

アメリカ

まずアメリカについて。前回日本には世界のニュースがなかなか入ってこない(メディアが扱わない)と書きましたが、例外的なのがアメリカだと思います。

例えば、昨年の大統領選に関しては毎日のようにニュースで流れていました。ハリウッド関連のエンターテイメントに関しても毎日のようにテレビ等で目にします。

これは日本とアメリカ両国の歴史からくる距離感の表れとも言えますが、多くの日本人は表面的なアメリカしか知らずにいると思います。

例えば、アメリカでは年々所得格差が激しくなっており、アメリカ人のほとんどが貧困に喘いでいるという事実は日本人はあまり理解していないのではないでしょうか。

ちなみに、私が毎年仕事で行っているカリフォルニアでは、最も賃金が高いエリアにおける報酬の中間値が、年収約2000万年です。アメリカ連邦政府は、サンフランシスコで夫婦二人と子供二人の4人家族の家庭で、年収約1300万以下だと「低所得者家庭」と定義しています。ちなみにこれは日本に置き換えると、年収250万円で都内に在住する4人家族のような感覚です。

サンフランシスコ近辺では、恐ろしいほど物価が上昇しており、1ベッドルーム(日本の1DK、1LDK相当)の平均家賃が月40万円程度です。これはニューヨークよりも30%高く、マイアミの2倍です。

また、GOBankingRatesという金融関連情報サイトの2017年のリサーチによると、アメリカの18歳以上の成人の半数以上が、1000ドル(約11万円)以下の貯金しかないという調査結果が出ています。

このような厳しい経済環境に置かれたアメリカの一般市民の中には、*ポリコレに対する反発が目立ち始めています。そのなれの果てがトランプ大統領の誕生だったのだと思います。

ポリティカル・コレクトネス(英: political correctness、略称:PC、ポリコレ)とは、性別・人種・民族・宗教などに基づく差別・偏見を防ぐ目的で、政治的・社会的に公正・中立とされる言葉や表現を使用することを指す。(WIKIPEDIAより引用)

アメリカでは、25%が保守派、先進的な革新派は8%足らずで、残りの3分の2がどの政治的信条にも属さない人々だと言われていますが、その人々が、日々の生活や過激な政治的主張による国の分断に疲れ果てていると言います。

人口の大多数を占める年収5万ドル(550万円)未満の人々の83%がポリコレに反対しており、それはアジア系、ヒスパニック系、アフリカ系のような人種的少数派も同様です。

つまり、厳しい経済状況下で困窮した生活にあえぐ中、自分の生活改善に直結しない「政治的な正しさ」に嫌気がさしている人々がアメリカにはこれだけ多く存在するということです。

このような人たちがリベラル派や左派の富裕層が口にするきれいごとにうんざりし、トランプ元大統領のはっきりしたものいいや、アメリカの一般市民の雇用を守るという力強い言葉に惹かれたのは驚くべきことではありません。多くの人々の願いは国の経済が上向くこと、現在の生活の質を保つこと、自分の子供の未来を守ることであり、政治的正しさや不法移民に支援を与えることではないのです。

トランプ元大統領を支持した人々は、みんながみんな人種差別者や排外的と主義者いうわけではなく、ただ自分たちの生活を守りたいという小市民がたくさんいたというわけです。

トランプ大統領誕生時も、これらの本質的な背景はあまり日本のメディアで語られることはなく、彼の特異なパーソナリティーに焦点が当てられていたような気がします。

同時に、約半分の国民たちは、トランプの大統領就任に反対する「常識」と「理性」を併せ持った人たちだったことを忘れてはいけません。実際私の友人や同僚は反トランプ派ばかりでしたが、その常識や理性が吹き飛ばされるほど今のアメリカの状況(格差)は厳しということでしょう。(私の友人はトランプの就任が決まった際に絶望の涙を流していました)

イギリス

私がイギリスに住んでいたのは今から20年近く前なのですが、この20年間でイギリスも大きく様変わりしたように感じます。

ちなみに20年前はブレア政権で、経済的にも好調でイケイケな感じがしました。

しかし、この20年で移民の流入は加速度的に進み、イギリス全土で「英国生まれの非白人」が激増しました。

とりわけロンドンはニューヨークやトロント以上に人種のるつぼとなり、人口の40%近くがイギリス生まれの外国人という統計が出ています。一方、白人は44.9%程度で、ロンドン内の学校で話される言語は300以上と言われています。

結果として、ロンドン中心部からは白人が減少し、彼らは郊外や別の群に移動していったのです。

ちなみに、このグローバリゼーションは悪いことばかりでもありません。イギリスは食事がまずくて有名ですが、ロンドンから白人が激減したこの20年でイギリスのレストランはどんどん多様化し、おいしいレストランが増え、観光客も食の多様化を楽しめるようになったと言います。(国全体の劇的な変化を考えたら、おいしいレストランが増えたなんて言うのはとても些細な変化ですが、旅行者にはありがたいですよね)

また、イギリスでは教育にもグローバル化が影を落としています。小中学校において価値観の衝突が深刻な問題になってきているのです。

例えば、イギリス第二の都市であるバーミンガムでは、公立学校でイスラム過激化思想を広めるために、校長の入れ替えなどさまざまな陰謀が企てられているという密告が市役所に入り、教育省や元テロ対策長官などが調査に乗り出すというという事件が起きました。

日本人の私から見ても、「そんなバカな」と思うようなニュースですが、調査はロンドン東部や北部などのイスラム教徒が多い地域の学校にもおよび、21校に監査が入った結果、そのいくつかが極度にイスラム教に偏った教育を施しているなどの問題が発覚したのでした。

イギリスの大規模な世論調査「The British Social Attitudes」によると、2003年には48%の人が「イギリスにおけるイスラム化の心配をしている」と答えたのに対し、2013年には62%に増加したとのことです。

このような状況がBrexit(イギリスのEU離脱)に拍車をかけたことに間違いありません。

(イギリスの現状に関しては、ブレイディみかこさんのエッセイを読んでだので、この後改めて書きたいと思います)

ヨーロッパと移民問題

移民問題は今後我々日本にも重くのしかかってくる重要な問題であり、先人たちから多くを学ぶ必要があると考えています。

その主役はドイツになるのですが、ここではまずすスウェーデンに焦点を当てたいと思います。

スウェーデンはここ数年移民問題で頭を悩ませています。2018年の世論調査では、スウェーデン人の過半数は移民の削減を希望しています。ただ、この傾向はスウェーデンだけでなく、他のヨーロッパ諸国でも似た結果が出ています。削減派はギリシャが82%、ハンガリー72%、イタリア71%です。経済的に厳しい国ほど反移民感情が高くなります。

スウェーデンでは、上記の国民感情を受けて、移民排斥を訴える右派が議席を大きく増やし、大きな話題になっています。

スウェーデンはEUにおいて、人口一人当たりに対して最も多くの難民を受け入れてきたのですが、その反動で極右政党が大きく国民の支持を伸ばしているのです。

そしてドイツです。ドイツはヨーロッパでもっとも豊かで、工業力も人材も豊富な素晴らしい国です。ゆえに、EUの中でもリーダー的な存在です。

過去の戦争で大量虐殺をした歴史や植民地への贖罪の意識が働いて、難民を積極的に受け入れる政策を出したのもドイツです。しかし、あまりにも多くの難民が押し寄せることになってしまったため、EUの実権を握るドイツは難民の受け入れを各国で決めるべきだと主張し始めました。

上記の貧しい国々も勝手に人数を割り当てられたため、多くの国が激怒したのですが、結局イタリア、マケドニア、セルビア、チェコといった貧しい国々がドイツの尻拭いをしている状況なのです。

ちなみに余談ですが、イギリスは基本的にドイツが大嫌いです。これはイギリスで暮らすまで知らなかったのですが、戦争の歴史があり、今でも多くの人々が(子供たちでさえも!)反ドイツ感情をいただいている人が多く、普通に生活していても、アンチドイツコメントを聞くことがよくありました。

そんなイギリスですから、「大嫌いなドイツの言うことを聞いて難民を受け入れるなんてやってられるか!」という具合に、国民投票をやってEUから離脱を決めたという背景もあります。

イギリスはフーリガンという輩が多いことでもわかるように、大変血の気が多く短気で、またいろいろなことを自由にやって金を儲けようという商売気質が強いお国柄なので、なんでもかんでもルールを作って事細かく支配しようとするドイツやフランスとそりが合わないのは自明の理なのです。

かつて世界を牛耳っていたイギリスは、本来ならヨーロッパの盟主は自分たちだと言いたいところですが、実際のところEUはドイツとフランスに牛耳られており、面白くなかったので、Brexitに至ったと言えます。このような事実も日本ではあまり知られていないのが現実です。

日本のお手本はカナダ?

というわけで、アメリカやヨーロッパでは移民難民問題も複雑に絡み、ナショナリズムが台頭してきておりますが、それらの国々とは一線を画すのがカナダです。

カナダは今でも移民や難民の受け入れに大変オープンで、世界経済フォーラム発行のレポートによると、「働く人の多様性が世界で最も高い国」であり、同時にマクロ経済政策が世界で最もうまくいっている国の一つだと言われています。これだけ世界中で移民の受け入れが問題になっている中で、今でも積極的に移民を受け入れ、そして経済的にも好調を維持しているカナダから日本は学ばなければいけないことがたくさんあると思います。

ちなみに、私はカナダに住んだことがあり、今でも年に1,2回仕事で訪れています。私のカナダ愛をつづったnoteはこちらになります。

というわけで、今回はアメリカ、イギリス、ヨーロッパについて、日本人があまり知らないであろう現実について書いてみました。もちろん私の知識が不足している部分もあると思うので、説明が足りない部分もあるかと思います。

ただ、移民受け入れ問題も含めて、日本は近い将来今以上にどっぷりグローバル化に浸かることになることを考えると、多くの人々に知っていて欲しい内容だと思いました。

私はグローバル教育を生業にしているので、常にアンテナを高く張り、世界の動向に注目をしていますが、無論勉強不足な部分も多いので、これからもしっかりと世界の動向をウォッチしていこうと思います。


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