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都市開発における地域連携の拠点が、“そこにあること”の意味

前回は、TokyoYard PROJECTのコンセプトである「共創」と「実験」、またプロジェクトを知るための入り口となる施設「Partner Base」をご紹介しました。
>>都市の課題を乗り越え、「共創」と「実験」を実装したまちづくりにするために

今回は、Partner Baseで品川開発プロジェクトのことを知ってもらったパートナーがより深く街に関わるための運営拠点「TokyoYard Building」についてご紹介します。

都市開発プロジェクトが開業後に地域の拠点やフロアを構えることはありますが、わたしたちJR東日本がなぜ2024年度開業(予定)の約4年前からビル一棟をすべて地域連携のハブに据えたのかを、JR東日本 品川開発プロジェクトチームの渡邊直樹がお伝えします。

渡邊直樹(JR):JR東日本 事業創造本部 品川まちづくり部門 主席。2016年7月より現在まで品川開発プロジェクトを担当。Partner Base Takanawa Gateway Station および TokyoYard Building主担当。

TokyoYard Buildingでなにをするのか

今春にオープンした、TokyoYard PROJECTの核となる「TokyoYard Building」は、企業やパートナーのみなさまがこのエリアのまちづくりにより深く関わり、ビジネス創造、文化創造、情報発信、交流をしていく街の運営拠点として、既存のビルをリノベーションしてつくられました。スタートアップのオフィスなどが入居し相互作用を生み出しながら、ビジネスパートナー向けのギャザリング、ミーティングなどオープンな議論を行っていきます。

またTokyoYard Buildingの重要な機能のひとつに「地域との連携」があります。わたしたちが考える「パートナー」とは、行政、会社員、個人事業主をふくむ地域の事業者のかたがたを指しています。地元のみなさまがもつネットワークや行動を起こしたいという地域への想いをできる限り広くすくいあげ、JRが一方的にやりたいことではなく、地域の力で自発的に街がかたちづくられていくようなプロジェクトが生まれていくことを目指しています。

さらに、こうした地域のパートナーとの「共創」「実験」 と同時に、地域住民のみなさまへの情報の提供を行い、交流の機会を創出し、歴史と未来を大切にしたまちづくりを一緒に進めることもわたしたちの重要なミッションです。TokyoYard Buildingでのプロジェクトの進捗ご紹介 ・参加型イベントの開催 ・地域のみなさまとのまちづくりなどを検討しています。

「JRがなにをやっているかわからないけど、なにやら新しい建物がまたできた」では、結局地域を置いてきぼりにした開発になってしまいますから、わたしたちが街をつくる意味を失ってしまいます。例えば地域の課題を持ち寄り、TYビルに入居しているスタートアップに課題解決のアイデアを提案してもらうなど、このビルでの取組を様々な形で地域の未来に繋げることができないか、と考えています。

都市開発の拠点が、「そこにあること」の意義

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TokyoYard Buildingは、地域のみなさまにとっては、生活のなかにいきなりできた得体の知れない存在かもしれません。なぜJR東日本がTokyoYard PROJECTの運営拠点を地域の中につくり、かつ街ができる前からビル一棟を地域連携のハブにしたいと考えたのか。それは、開発を通して周辺の街に触れるなかで感じた発見や課題があったからです。

JRの開発チームで行った街歩きなどのフィールドワークを通してわかったのは、JRが都市開発を行うことに興味・関心を持っていないかた、将来このエリアに新たな街ができることをご存じないかたも多くいるということです。同時に、新駅ができたことをきっかけに「自分たちの街をどうしていくべきか」と、これからの街のあり方を見直すかたがたも多くいらっしゃることもわかりました。わたしたちの目にうつっていない地域のみなさまの思いが、わたしたちのプロジェクトにはまだまだ足りていないと感じました。

高輪ゲートウェイ駅周辺はビジネスオフィスと、住宅や昔ながらの商店など地域のかたがたの生活が混在するエリアです。「いまここにある暮らし」「街に残すべきもの」を不動産業者の論理で上書きして街と生活者を分断するのではなく、既存の街の価値を守りながらも、そこにあるひとつひとつの暮らしの価値を広げていくエリアにすることがわたしたちのまちづくりでやるべきことなのです。

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そのためには地域の暮らしに対する解像度をあげることがなにより大切です。開発をする場所に運営の拠点があること。街をつくるのであれば、そこで仕事をすること。開発の中心地で周辺のかたがたの暮らしや息遣いを感じながら、街ができていく様子を日々観察し、それによって生まれる変化を敏感に感じとることが一番のインプットとなります。

ここ数ヶ月で一気にリモートでの仕事が社会全体で推し進められ、意外とどこでも仕事ができてしまうということは多くのかたが気づいたことかもしれません。しかし、地域のみなさまといつでも会える物理的な距離の近さは、インフラやモビリティを事業にするJR東日本のような会社が、常に変わらず大切にすべきことだと考えています。

自分たちの言葉で自分の場所を語ること、知らない世界への想像力を培うこと


開発コンセプトに掲げる「グローバルゲートウェイ」を体現しながら、ローカルの大切な思いを街に実装することは、街の未来を考えていくうえでとても難しいことだと日々実感します。

そのなかで、「グローバル」と「ローカル」を接続するためのヒントは、自分たちの土地の歴史や文脈を自分たちの言葉で語れるようになることにあるのではないかと考えています。

以前、地域に関する小学校の授業カリキュラムの一貫でわたしたち品川開発プロジェクトチームが地域の小学校へ足を運んだ際に、こどもたちが生まれ育った地域の歴史や魅力を語れることにとても驚いたことがあります。普通は、大人でさえ地域のなりたちなどは知らない人がほとんどです。自分たちがやりたいことを伝えにいったわたしたちが、逆に大きな気づきを与えてもらいました。

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JR東日本社員による港区立高松中学校での授業の様子

こどもたちは、街が開業する4年後、そして街が成熟するその先まで変化を間近に見ていく存在です。彼らが大人となったときに、自分たちの土地の歴史や肌で感じた文脈を自分たちの言葉で語れるようになることが、この街がグローバルゲートウェイとなる第一歩なのではないか、そう思うに至ったのです。

国際的に活躍する素養や、自分とは異なる価値観への想像力を得ていくことが、これまで以上に重要になっていきます。言語にとどまらず、あらゆるダイバーシティやサステナビリティなど、本来こどものころから考えていくべきことを、学校の授業とは違う目線で発信していく。街の新参者だからこそご提供できる、こどもたちを含む地域のかたがたにとっての学びのきっかけを、わたしたちなりに謙虚に少しずつつくっていく。そういったことが、国際交流拠点という街のアイデンティティをかたちづくっていくのだと思います。

そのためには地域のみなさまとの信頼関係を築いていく必要があり、その場としての活動をこれから開始していくことではじめてTokyoYard Buildingの意味が生まれるのです。

Playable(実験)を生み出すTokyoYard Buildingのなかを公開

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では、そのTokyoYard Buildingがどのような場所なのか、いくつかのフロアのご紹介をします。

Partner Baseでプロジェクトの概要を知っていただいたパートナーのかたがたに、まず最上階の「Playable Lounge」にお越しいただきます。開発中の街の様子を眺めながらミーティングを行うことを目的とした応接室です。

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10階「Playable Lounge」:プロジェクトを知っていただくPartner Baseの延長、「Gate 04」として位置付けています。各フロアには、TokyoYard PROJECTのコンセプトである「Playable」と紐づく名称がつけられています

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10階「游 -You-」:同フロアには、リラックスしたミーティングや海外のパートナー企業をむかえてディスカッションを行うことができるよう、和室を設けました

2階の「PlayGround」は、この街を舞台に活躍するパートナーのかたがた、 地域のみなさまとの交流・情報発信をする、TokyoYard PROJECTの核となるスペースです。社内の部署、役職を超えたディスカッションやカンファレンスがすでに行われています。

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2階「PlayGround」

また、グループ会社であるJR 東日本スタートアップ株式会社が運営する、スタートアップインキュベーションの拠点「StartUp Station」や、JR東日本グループ社員や入居したスタートアップ、パートナーのための会議室/プロジェクトオフィスである4階「PlayList」があります。

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4階「PlayList」

品川開発プロジェクトチームやJR東日本グループ・新事業創生プログラムの準備活動拠点となるプロジェクトオフィス3階「Player」5階「PlayAll」では、できあがっていく街のプロセスを目の前で実感しながらエリアマネジメント、プロモーション 、地域連携、エネルギーマネジメントなど、まちづくり推進の仕事を行っています。

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3階「Player」

このように、「共創」「実験」の創出の循環をビル全体で促す機能を備え、まちづくりに関わるパートナー・地域のみなさまとの接着点となることを目指していますが、TokyoYard Buildingの運用ははじまったばかりです。地域のみなさまとの繋がりはすでにありますが、パートナーとして街についてともに考えてくださる、一緒に行動してくださるかたがたは、わたしたちが知らないだけでもっとたくさんいらっしゃるはずです。広い範囲にむけての街との接点を誰でもアクセスすることができる高輪ゲートウェイ駅につくっていくとともに、TokyoYard Buildingにはパートナーや地域のみなさまにどんどん来ていきただきたいですし、わたしたちからも積極的にお声がけをしていきたい、そう考えています。

取材協力:JR東日本・天内義也、本田佳
インタビュー・構成:和田拓也
撮影:山口雄太郎
ディレクション:黒鳥社

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