見出し画像

忘れられない彼の誕生日

あれは上京して1年が経った頃
人生初めての同棲を経験する。

彼が大学生だったこともあり、大学の目の前にある彼のお城に二人で住んでいた。(家賃は彼の親持ち)

地元に居た頃はこんな風になるなんて全く想像できていなくて、人生は何が起きるかわからないと痛感する。

特に印象に残っているのは彼の誕生日。

🍰

前日からお部屋を造花で飾り付けし、彼と私の2人の歴史(4か月ほど)を記したアルバムを自主制作、料理もケーキもすべて手作りして準備万端。

誕生日

主人の帰りを待ち望む子犬のような気持ちで、ジーっと玄関を見つめながら彼の帰りをひたすらに待った。

彼の自転車を停める音が帰りの合図と理解していたので、外に気配を感じるや否や、今までつけていた明りを全てオフにし息を潜め、扉を開いた瞬間に、パーン・バーン・ドーンという複数のクラッカーで出迎えた。

人によっては心臓が止まるサプライズだったと、今となっては考えようかもしれない。

前夜祭

普段は青いカーテンを基調とした部屋が、ピンク・黄色・赤といった元気な色とりどりの花たちで埋め尽くされるのに驚く彼をみて、してやったりという気持ちだった。

💐

昔からサプライズやお祝いをすることが好きで、祝われる側よりも相手を祝いたい気持ちが強かった。

喜んでもらえるかな?どんな反応をするかな?と少しばかりの自己満足が入ったサプライズ好きも、父親譲りなところが血は争えないと痛感する。

主役の彼に手を洗ってきてといっちょ前に命令し、リビングで待機させた後、誕生日(前夜祭)は始まった。

彼が食べたいと言っていたピザ・ちらし寿司・スペアリブ・酢豚をあらかじめ作っておき、テーブルに並べてセッティングしておいた。それをみて目を丸くする彼に、満面のドヤ顔をして仁王立ちする私。

しかしここで思いもよらない問題。
一生懸命作ったスペアリブが、鳥の手羽先という全く違うメニューだったことが判明。

事前リサーチは入念にして・・・スペアリブという文字も確認したはずなのに、一体どこで手羽先の道に進んだのだろう。

我が家ではこれがスペアリブだよ!と無理やりスペアリブにして、素直に間違えたと言えないところも父親譲りでため息が出る。それでも、美味しいと笑顔で食べる彼にほっと胸をなでおろす。

最後にサプライズでケーキのロウソクを灯して、渾身のアルバムと一緒にテーブルに置いた瞬間、彼が男泣き。

笑顔で号泣する彼に感極まり、ふたりで「ありがとう、ありがとう」と伝えあう涙の誕生日となった。 

🕯️

*** 
10年経った今
彼とはお別れして、今はシェアアパートでくらしているから、人生は何が起こるかわからない。

綺麗な思い出として心にしまっておこう。

written by みんちゃん