「死ねない死者は夜に生きる」第14話(全14話)
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颯は鼻をひくつかせた。
体が臭い。化膿した傷口のような、腐臭とも生臭さともつかない臭いが鼻につく。
手のひらで首回りを撫で回すと、ポロポロとかさぶたのようなものが剥がれ落ちた。
首筋の流血は止まっている。痛みもない。指先のすり傷や切り傷でさえ鬱陶しいほどに痛みを主張するのに、噛み切られても支障がないとはどういうことだ。咲に似たなにかに襲われたのは夢か錯覚だったのだろうか。それにしてはあまりにも鮮明な記憶だ。
室内を見回すと、赤茶色の染みがそこかしこに飛び散