それでは今日も幸田露伴の『露団々[ツユダンダン]』を読んでいきたいと思います。
第十回は、亢龍と唐狛が話しているところから始まります。唐「旦那さまは何を考えていらっしゃいます」。亢「貴様のような奴にも俺は俗物と違ってみえるか」。唐「ある老人が恬淡無欲の當世の太上老君、大聖人、大神仙だと評を致しました」。亢「してみれば天下皆めくらでもないが、それにしてもあの卜翁の言い草」。唐「無名翁が何か申しましたか」。亢「米国第一の美人に家事をやらせ、二億の財産を得て、天下の俗物にその高きを仰がせる……はは妙だな」。唐「新聞に出ていた求婚のことでござりましょう」。ここで唐狛は、亢龍が求婚するにあたって、ほかの男より不利な点を七つ挙げます。それを聞いて亢龍「だまれ、だまれ!」。唐「しかし不利ではござりませんか。ここにひとつ妙知恵があるので……」。そこで唐狛は、亢龍にささやきます。それを聞いて亢龍、「しからば奴を……」。亢龍の家には、食客として吟蜩子という日本人がいます。富貴も名誉もあえて求めず、ただ何となく世を送っています。ある日、興に乗じて故郷を出て、髪も衣も中国人風に変えて暮らしていたが、去年の暮、ある関帝廟で一夜の露霜を凌いでいたが、その暁に火事で焼けてしまいます。
ということで、この続きは……
また明日、近代でお会いしましょう!