それでは今日も幸田露伴の『露団々[ツユダンダン]』を読んでいきたいと思います。
青木よき程に茂って、暑さも小川の水泡とともに流れ去る景色。庭には、イタリア製の寒水石の大亀の噴水、蔓草をからませて屋根としたる東屋、ここは5万坪の広大なぶんせいむの下屋敷。戸の外からじやくそん夫人がるびな嬢に声をかけます。「お嬢様、蒸しますのにご書見ですか」「絵を描いていたのさ」「墨絵の枯木に鳥ですか」「枯木ではないよ。新橋色という顔料で葉が描いてあるのだよ。高窓の日除けがただの白い紗じゃ面白くないから何か描いてみろとお父様がおっしゃるから、これを明日掛けておくのだよ。そこの高窓は西だから夕日がきらきらすると、熱を感じて、葉が青く現れて、日が没すればまた白くなってしまうのよ」「それだからしんじあ様の真似をして、うちの夫までが妙慧だの優美だのとあなたを褒めていますわ」「からかってはいやよ」
ということで、この続きは……
また明日、近代でお会いしましょう!