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#1465 今日で『風流佛』読了だぁ!

今日でいよいよ『風流佛』も最終回です!相・性・体・力・作・因・縁・果・報・本末究竟等という諸法の実相の因果律が「団円」というタイトルで締めくくられます!それでは早速読んでいきましょう!

団円 諸法実相

帰依仏[キエブツ]の御利益[ゴリヤク]眼前にあり

恋に必ず、必ず、感応[カンノウ]ありて、一念の誠御心[ミココロ]に協[カナ]い、珠運は自[オノ]が帰依仏[キエブツ]の来迎[ライゴウ]に辱[カタジケ]なくも拯[スク]いとられて、お辰と共に手を携え肩を駢[ナラ]べ優々と雲の上に行[ユキ]し後には白薔薇[ホワイトローズ]香[ニオイ]薫[クン]じて吉兵衛を初め一村[イッソン]の老幼[ロウヨウ]芽出度[メデタシ]とさゞめく声は天鼓[テンコ]を撃つ如く、七蔵がゆがみたる耳を貫けば是[コレ]も我慢の角[ツノ]を落として黒山[コクザン]の鬼窟[キクツ]を出[イデ]、発心[ホッシン]勇ましく田原と共に左右の御前立[オンマエダチ]となりぬ。

「黒山鬼窟」とは、不浄な苦悩に満ちた山やおそろしい鬼などの住む洞穴のことです。

其後[ソノノチ]光輪[ゴコウ]美[ウルワ]しく白雲に駕[ノ]って所々[ショショ]に見ゆる者あり。或[アル]紳士の拝まれたるは天鵞絨[ビロウド]の洋服裳[スソ]長く着玉いて駄鳥[ダチョウ]の羽[ハネ]宝冠[ホウカン]に鮮[アザヤカ]なりしに、某[ナニガシ]貴族の見られしは白襟[シロエリ]を召[メ]して錦の御帯[オンオビ]金色[コンジキ]赫奕[カクエキ]たりしとかや。夫[ソレ]に引変え破褞袍[ヤブレオンボウ]着て藁草履[ワラゾウリ]はき腰に利鎌[トガマ]さしたるを農夫は拝み、阿波縮[アワチヂミ]の浴衣、綿八反[メンハッタン]の帯、洋銀の簪[カンザシ]位の御姿を見しは小商人[コアキンド]にて、風寒き北海道にては、鰊[ニシン]の鱗[ウロコ]怪しく光るどんざ布子[ヌノコ]、浪[ナミ]さやぐ佐渡には、色も定かならぬさき織[オリ]を着て漁師共の眼にあらわれ玉いけるが業平侯爵も程[ホド]経て踵[カカト]小さき靴をはき、派手なリボンの飾りまばゆき服を召されたるに値偶[チグウ]せられけるよし。是皆[コレミナ]一切経[イッサイキョウ]にもなき一体の風流仏、珠運が刻みたると同じ者の千差万別の化身[ケシン]にして少しも相違なければ、拝みし者誰[タレ]も彼も一代の守本尊[マモリホンゾン]となし、信仰篤[アツ]き時は子孫繁昌[シソンハンジョウ]家内和睦[カナイワボク]、御利益[ゴリヤク]疑いなく仮令[タトイ]少々御本尊様を恨めしき様[ヨウ]に思う事ありとも珠運の如くそれを火上の氷となす者には素[モト]より持前[モチマエ]の仏性[ホトケショウ]を出[イダ]し玉いて愛護の御誓願[ゴセイガン]空[ムナ]しからず、若[モシ]又[マタ]過[アヤマ]ってマホメット宗モルモン宗なぞの木偶[モクグウ]土像[ドゾウ]などに近づく時は現当二世[ゲントウニセ]の御罰[オンバチ]あらたかにして光輪[ゴコウ]を火輪[カリン]かりんとなし一家[イッケ]をも魂魂[コンパク]をも焼滅[ヤキホロボ]し玉うとかや。あなかしこ穴賢[アナカシコ]。

というところで、『風流佛』読了です!

夏にふさわしい妖艶で恐ろしい小説でしたね!

さて、このあとの「紅露時代」に関しては……

また明日、近代でお会いしましょう!

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