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#1393 第十七回は、最終試験後のぶんせいむの計画を、るびなに報告するところから……

それでは今日も幸田露伴の『露団々[ツユダンダン]』を読んでいきたいと思います。

今日から「第十七回」に入りますよ!それでは早速読んでいきましょう!

第十七回 桟[カケハシ]や命をからむ蔦[ツタ]かつら
危[アヤウ]い哉[カナ]々々、古人[コジン]のたまはく御用心々々

山鳥の尾の長き契りを遂ぐべき夫婦さへも難波江[ナニワエ]のよしあしに中たがひして二世の恩愛を短かき一節[ヒトヨ]の夢となすあさましの世の人心[ヒトゴコロ]と見限りて深山[ミヤマ]の奥に住み給ひし何某[ナニガシ]が今時の法師せめて鸚鵡[オウム]丈[ダケ]も正直ならば佛法[ブッポウ]の功徳もあるまじきにあらずと云はれしは僻言[ヒガゴト]ぞかし。我が狂言綺語[キョウゲンキギョ]なんどこそは鶯[ウグイス]の鳴く程ゆかしからず、鶏[ニワトリ]の謡[ウタ]ふ程おもしろからざれど、憎き鴉[カラス]のみだれ鳴きあながまやと捨て給はず、せめては鶴の一聲[ヒトコエ]の評を賜へと思ふのみは信天翁[アホウドリ]の誠[マコト]にも似たれば、鳥よりも劣れるに似たることなり。
るび「夫婦揃つて来たのは何だえ。そして愁[ウレイ]を含んで居るのはどうかしたかえ。」
妻「いゝえどうも致しませんが。」
るび「せんがどうかしたのかえ。何だか気にかゝる口のきゝやうだね……あら涙がうるんで居るよ。」
しん「お尋ねなくとも一度は是非申上げねばなりませんが遂[ツイ]心後[ココロオク]れが致しまして。」
るび「何かお父[トッ]さんが妾[ワタシ]の身の上に付[ツイ]てお話しでもあつたのかえ。」
妻「はい其事[ソノコト]で御座ります。」
しん「お嬢様、私[ワタクシ]から只今委細申し上[アゲ]ますからどうぞ話の終りまでとつくりとお聞きなすつて。」
るび「あい。」
しん「お存知の通りおとゝひの試験で亢龍子[コウリョウシ]といふ支那人が大層お父[トッ]さんのお気に入つたのであれあの向[ムコ]ふの別館にお客分にしてお置きなさる位ですが今朝私[ワタクシ]夫婦をお呼[ヨビ]なすつて仰[オッシ]やるには、るびなの夫もまづ定まつたが、今年も直[スグ]にくりすますが後[ウシロ]に逼[セマ]つて居るから婚姻はなるべく早くしやうと思ふから二人に吩咐[イイツケ]るが十二月九日までに一切の準備[ヨウイ]をしろ。十日には婚禮[コンレイ]をさせる積[ツモ]りだと。」
るび「えッ。」

ということで、この続きは……

また明日、近代でお会いしましょう!

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