それでは今日も幸田露伴の『風流佛』を読んでいきたいと思います。
股引、頭巾、二重とんび、鹿の皮の袴、足袋二枚、毛皮の手甲などでしっかりと防寒しますが外は大吹雪。鼻の穴まで吹き込む吹雪。命おしくば御逗留なされの親切。急ぐ旅にもあらず。今日だけ厄介になりましょう。こたつに座り、ぼんやりと見回すと、そこには柘植のさし櫛が……。お辰が落としていったのか……。ゆうべの亭主の物語が今更のように思い出されます。おれが仏なら……七蔵を頓死させて行方知れぬ親に会わせ、宮内省から褒章を与え、小説家には面白く書かせ、絵師には美しく描かせ、豪華な衣服に変え、極上の油を髪につけさせるのに……。珠運は小刀を取り出し、櫛に一日がかりで彫り付け、紙に包んで、お辰が来たらどんな顔をするだろうと待ちます。
猿尾枷は、樹皮に付着して懸垂する糸状の地衣で、ブナ林など落葉広葉樹林の霧のかかるような森林の樹上に着生します。
白鳥徳利とは、白磁の、口の細長いとっくりのことです。
というところで、「第四回」が終了します。
さっそく「第五回」を読んでいきたいと思うのですが……
それはまた明日、近代でお会いしましょう!