それでは今日も幸田露伴の『五重塔』を読んでいきたいと思います。
「黙っていよ」とやり込められたお吉は、なにか言い出したげだが、口答えの甲斐がないことは経験でわかっているため、分別早く、「気にかかる仕事の話ゆえ思わず様子を聞きたくて……」と、夫の分別に従う上辺を装います。源太も顔をやわらげ、「何事もめぐりあわせじゃ、こう思っていれば半分やるのもかえって良い心持。世間は気持ちしだいで忌々しくも面白くなるものゆえ、出来るだけケチな根性を着けず、世の中を綺麗に渡りさえすればそれでいい」。その後、十兵衛を待ちますが、日差しが一尺、二尺と移っても現れません。
というところで、「その十二」が終了します。
さっそく「その十三」を読んでいきたいと思うのですが……
それはまた明日、近代でお会いしましょう!