それでは今日も坪内逍遥の『梓神子』を読んでいきたいと思います。
上方を中心に流行した浮世草子の流れが続く時代に、怨霊は生前、物語を25の頃に見聞きしたままに書いていたが、その後、勧善懲悪の大砲を引かれ、我が持仏堂を打ち崩され、紙魚に手足を食われ、古本箱に押し込められ、日の目見ぬ暗闇に埋められたと言います。嬉しいのは、寒月・紅葉・露伴・魯庵、同じ流れの若い人達が我を慕うてくれること!しかし浮世とは定めのないもので、いつ捨てられて、もとの地獄に帰るかわからない。露伴は我のために大読経を行なったが、その後「畢竟馬前の塵」と蹴散らし、魯庵は「広くて浅い」の一言……ああ無情……悪ければ悪いと何故親切に言ってくれないのか……
松壽軒は、井原西鶴の別号です。
それにしても、西鶴の霊とは……とんでもないものに取り憑かれましたね……
というところで、「第五回」が終了します!
さっそく、「第六回」へと移りたいのですが……
それはまた明日、近代でお会いしましょう!