それでは今日も幸田露伴の『露団々[ツユダンダン]』を読んでいきたいと思います。
二階で物音がするのでちぇりいが二階へ行くと、足に手紙がつけた鳩が帰ってきています。手紙の宛名は「すみとる、じぇい、こばると」。手紙を読んで見ると、「この封を切りし者は、ふたたび封をなして同じ名宛に放つことを願う」と書いてあります。「わかった。こばるとがわかった。鉱物さ。それを溶かした水で書くと見えないが、熱にあてると青く出るのだ」。手紙をストーブにかざすと、ありありと文字が浮かんできます。「頼もしいじやくそん夫婦よ、婚礼は明後日と定められたが、父上の圧政を逃れて自身の望みを貫く手段を取ろうと思う。これ、あの人を深く信ずればなり。あの人が家から逃げる私の処置を是認せしならば鳩の左の足を細い糸で縛ってください。今夜十二時、ひそかに出ようと思うため、何卒、花園の西の隅のエンジュの木のほとりでお助け下さい。もし私の処置をよろしからずと思えば、鳩の右の足を縛ってください」。これを読んでちぇりいが言います。「お嬢様がおとなしい者だからこんな事になってしまったのですよ。ぶんせいむ様だって物好きにもほどがある。しんじあ様も意気地のない。あなたもあなただ。ぶんせいむ様に呑まれてしまって、少しも男らしい親切をしたことがないからこんな事になったのです。男いっぴきのくせに!」。「しんじあ様は、ぼすとんへ説教に行き、昨日から留守だから弱っているのだ」。そんな時、五時の鐘がぼんぼんぼん……。「戸を叩いているようですよ」。「鳩を取りに来たのだろう。こちらに通せ」。「大丈夫ですかね」。
ということで、この続きは……
また明日、近代でお会いしましょう!