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「お客さんのことを徹底的に考え抜く=消費者視点」が学べる一冊。『USJを劇的に変えた、たった1つの考え方 成功を引き寄せるマーケティング入門 - 森岡毅』【書評】

森岡 毅 著『USJを劇的に変えた、たった1つの考え方 成功を引き寄せるマーケティング入門』

本著をひとコトで表現するならば、「お客さんのことを徹底的に考え抜く=消費者視点」というものが、ビジネスにとっていかに大切なのかを教えてくれる一冊。
サービス提供者もクリエイターも、気づけば「いいものを作ってるんだから、手に取ってもらえるでしょ?」という落とし穴にハマッてしまう中、大いなる気づきを与えてくれる。

サービスや作品を提供する際に、どの視点に立てば良いのかを、USJの実例をもとに解説してくれる一冊です。

新規事業成功率が、30%から97%へ!USJの着眼点。

本著はマーケティングについて書かれた本でありながら、マーケッターだけが読む本ではない。サービスを提供する人や、自身の作品を提供するクリエイターたちも理解しておくべき「消費者視点」が学べる一冊だ。

USJを「消費者視点」という価値観と仕組みに変えることによってV字回復を果たした軌跡を追いながら、その方法論はもちろんのこと、いかにマーケティングの考え方が重要かを、専門用語を多用するのではなく、平易な言葉で教えてくれる。

マーケティング?

と、横文字の言葉に距離を感じる人も大勢いるかもしれない。しかし、売りたいものを売るのではなく、売れるものを売るためには、ひとりでも多くの消費者が満足するものを提供しなければならない。つまりは、いかにすれば消費者の視点に立てるのか。提供側と消費者の架け橋になるような考え方が、すなわちマーケティングなのだと思う。

もちろん消費者視点が、組織が定める舵とマッチしないこともある。そんなときは組織と戦う姿勢も重要で、そういった組織内での苦労も本著では語られている。マーケティングを机上の空論に終わらせず、その考え方を組織に浸透させ、組織を動かし、結果的にUSJをV字回復に導くというプロセス。マーケティングを背景に敷いた組織改革の実例を学ぶこともできる。

サービスの提供側は、ついつい上から目線になってしまう。クリエイターは、ついつい自身の作品にあぐらをかいてしまう。
でも、考えてみて欲しい。質の高いものがゴロゴロと存在する世の中だ。美しいものも楽しいものも、美味しいものも山ほどある。しかし、人間の可処分所得・可処分時間は限られている。消費者は楽しみを選べるわけだ。

インターネットを使えば、良質なものを比較・検討することが容易になった昨今。消費者に選ばれる戦いは、以前よりもはるかに過当競争化している。そんな中、「いいものは売れるんでしょ?」のスタンスは、あまりにも古すぎる。いいものばかりが並ぶ市場。消費者の視点を置き去りにしてしまっては、その手元に商品やサービスを届けることは難しいだろう。

本著ではマーケッター以外も、マーケティングの考え方を身につけたほうが良いと推奨している。その考え方には、問答無用に同意する。他者視点に立つほうが人に喜ばれるのは世の常。それは何もマーケッターだけに限ったことではなく、社内での立ち位置を決めたり、人間関係を円滑に進めたりする上で欠かせない。

さまざまな場面で、つい主張が曖昧になってしまう人ほど、本著で語られるマーケティングの考え方が、味方になってくれると思う。何をもとに主張すればいいのか、その方向性を示してくれる考え方が身につくからだ。

USJという幅広く知れ渡った映画コンテンツを武器にしたテーマパークが、なぜあれほどまでに苦戦を強いられたのか。そしてどうやって現在の圧倒的な立ち位置を築けたのか。論より証拠。その過程を知ることは、生きる上での自身の考え方に、きっとプラスになるはずだ。

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