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『古事記ディサイファード』第一巻004

■大切なのは疑問を持ち続けることだ。神聖な好奇心を失ってはならない。 アルバート・アインシュタイン

さあ、ゲームを始めよう

 本書を読み進めるに当たって、予め原典である『古事記』の〈漢字かな交じりの読み下し文〉の文庫本などが手元にあれば臨場感が増して面白くなることは確実である。
 何しろ必要な暗号はすべて原典の中に書かれてあるのだから。もし手元になければ本書を片手に図書館にでかけてみるのも良いだろう。
 しかし古事記を最初から最後まですべて読む必要はない。本書の内容に対応する箇所を参考程度にところどころ拾い読みしてみる程度で十分である。
 だが、おそらく筆者すらまだ気づいていない暗号が含まれている可能性も否定できず、ひょっとすると読者諸氏がそれに気づいて解読されるかもしれないから、気が進めば全部読破されるのを止める理由はない。
 例えば岩波文庫の倉野憲司著『古事記』などは定番としておすすめである。
 あるいは講談社学術文庫の 207番、次田真幸著の『古事記(上・中・下)全訳注』でも良い。
 それ以外は全く必要ない。例えば歴史学的、民俗学的な薀蓄を解説した類の複雑な本は全く暗号解読には必要がない邪魔な情報ばかりでほとんど役に立たないだろう。
 本書で行う暗号解読はそういった類の〈古代史の謎を解く〉的な書物とはベクトルが全く異なる。
 なぜか古事記の暗号というとすぐに民俗学的なことや天皇家の話を持ち出してこられる方が多い。
 しかし繰り返すようだが筆者はそう言ったことには全く興味が無いし詳しくも無い。
 これはどこそこの民族を表している象徴だとか、民族同士の争いがどうしたとか、大和朝廷がこうしたとか、まつろわぬ民がどうしたとか、どこそこの民族はどこを移動してどっちへ行ったとか、白兎は実在の人物だったとか、川の治水がなんだとか、邪馬台国はどこにあったとか、その類の話はハッキリ言って全く関係がないし、どうでもよいのである。少なくとも本書で扱う暗号解読の観点からは完全に不要な議論なので意識の外においていただいて結構だ。
 参考書としては古事記の現代語訳などはいろいろな出版物が出回っているが物語の流れを追うには良いだろう。
 子供向けの絵本『いなばのしろうさぎ』や『やまたのおろち』や『うみさちやまさち』などがあれば神秘性がより実感されてとても楽しいはずである。
 その他インターネット上にはユーモアたっぷりにラノベ風にアレンジされた古事記や、詳しい解説など、無料で読める楽しい古事記関連のウェブサイトが星の数ほどある。あらためて古事記の表面的なストーリーの流れを掴む上では役に立つのでよろしければ気に入ったものご参照いただきたい。
 ただし、注意が必要なのは現代語訳や数多の古事記関連書籍は暗号解読という観点から見れば全く使いものにならないという点だ。
 なぜなら翻訳する時点で肝心の暗号部分が抜け落ちてしまっているからである。
 そもそも訳者がまさかそれが重要な暗号であるとは全く気づいてないのだから無理もない。当然意味も理解出来ないので肝心な情報をスルーしてしまうケースが殆どだ。
 原文や漢字仮名交じりの読み下し文は難解でとっつきにくい。加えて少々長くて退屈である。
 一方で現代語訳や解説書は暗号解読に必要な情報が欠落している。
 つまり一長一短というわけである。
 では、〈これだけ読めば良い〉という圧縮版はどこかにないのだろうか?
 実は、ある。
 今皆さんのお手元に……。
 本書の次章『Level 1』がそれである。
 次章では筆者の視点から見た独断と偏見による古事記の超要約を独自に用意してみた。
 僅か十数頁と読みやすくてしかも暗号解読に必要な情報が全て含まれており原文と現代語訳のいいとこ取りである。
 更に、敢えて漫才形式を採用している。なぜ漫才形式かというと、面白くしようとか奇をてらってということではない。暗号解読に限って論理的に解りやすさを追求していくと自然と漫才形式が合理的だという結論に至るというだけの話である。
 なぜなら漫才はボケとツッコミのロジックで成り立つものだからだ。
 暗号が仕掛けられている箇所は即ち古事記のボケなのであり、ツッコミを要求して誘っている部分なのである。
 そしてそこでタイミングを外さずにツッコミを入れることこそが非常に大切なのだ。
 ボケこそが先入観を打破して異なる新視点をもたらす扉であり、ツッコミこそが暗号解読に至る重要な鍵なのである。
 ゴーストバスターズ風に言えばボケはゲートキーパーであり、ツッコミはキーマスターなのだ。
 古事記はわざとボケているのであり、それはみなさんにツッコミを入れてほしいがためにほかならない。そこに気付かねばならないのである。
 古事記は凡そ千三百年もの間、誰かがツッコミを入れてくれるのをずっと待っていたのだ。
 したがって暗号解読の視点から必要な情報のみを独断と偏見で厳選した漫才形式が最も合理的なのである。
 そういうわけで、大真面目にふざけてみた。
 極力解りやすいように思い切って端折ってあり、暗号と直接関係がないところはバッサリと切り捨ててある。現時点で筆者が暗号ではないかと疑っている部分もこの際だから端折らせていただいた。
 逆に筆者が把握している限りの重要な暗号部分は確実に押さえてある。普通の現代語訳ではほぼ例外なく無視されるのだが解読のためには最低限必要な記述である。それがこの僅かな紙数の中に全て揃っている。
 つまり、理論的には参考書など一切なくても次章さえ読めば読者諸氏も独力で筆者レベルまでは解読できるはずなのである。実際には必ずしも読んだからと言って解けるものでは無いとは思うが少なくとも解読に必要な情報は過不足なくここに提供している。
 これほど短く、読みやすく、しかも暗号解読に必要な情報を網羅したものは他には存在しないと自負している。
 そしてこれは筆者による要約であると同時に、読者のみなさんに対する問いかけ、謎かけでもある。
 油断なさらずにお読みいただきたい。
 さらにまたそれは古事記を著した存在(表面的には太安万侶という地球人であることになっている)から現代人である我々(太安万侶から見れば千三百年後の未来人)への語りかけでもある。
 古事記は〈我が末裔達よ……〉と我々に問いかけてくるタイムカプセルであり、壮大なメッセージ装置なのである。
 常識、先入観、固定観念、歴史的学民俗学的な知識など全てを完全に捨て去り、是非とも推理小説かパズルゲームのつもりで謎解きに挑戦していただきたい。
 そのため、全体として単なる読み物としての枠を超え、直感力を鍛えるためのワークブックとしても機能するように配慮したつもりである。
 以降セクションごとに課題として【ミッション】と題する設問を用意してある。読者の皆さんへの問いかけである。
 是非立ち止まってご自分の頭で考えてみていただきたいポイントでは〈■〉マークを文末に入れてある。このマークが出てきたらいったん本書を置いて考えてみていただきたい。
 そして、一つ一つ段階を追って【ミッション】をクリアしていただきたい。
 各ミッションの設問は概ね易しいものであるが、中には筆者からみてもまず正解される読者は稀であろうと思われる問題も多い。よほど直感に優れていらっしゃり尚且つ図抜けた論理的思考力をお持ちの方で無ければ全問正解は難しいと思う。
 しかし、大切なことは正解することではない。
 間違っても全然かまわない。解らなくても一向にかまわない。
 なによりも立ち止まって自分の頭でじっくりと考えてみること、観じてみること。想像してみること。そのプロセスこそがとてつもなく重要だと筆者は信じている。
 読者諸氏の中には全ミッションをクリアされる方がもしかすると現れるかも知れないが、そのために最も大切なことをただ一つだけ申し述べておこう。
 それは〈常識を捨て去ること〉である。
 では早速みなさんをかつて無い知的冒険の旅へと御案内しよう。我々日本人の日常の中に潜む摩訶不思議なオーパーツを探し求めて。

(つづく)

※ 最初から順を追って読まないと内容が理解できないと思います。途中から入られた方は『古事記デイサイファード』第一巻001からお読みいただくことをお薦めいたします。


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