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もやし炒めを極めてみた話。

こう見えてわりとオタク気質なところがあります。いや、そんなのnote読んでるとわかるよ、といわれそうですが、実生活では一部の親しい友人や両親を除くと、あまりそんな風には見られていないようなので、あえてそこから話をスタートさせてみました。

子どものころから実験とか解明が好きで、小学生時代の理科の実験なんて、いつもわくわくものでした。しかし、いつしか自分の本質は理系の方向にはないと気付かされることになります。その後、大学生のころは近代文学に染まったものです。

小説ってストーリーを追うだけでなく、作者の意図を解こうとしだすと、物語の奥にあるなにかを見つけられるような気になるんですよね。それにたどり着くための工程が面白くて面白くて、のめりこんでいったものです。

おなじ話を何度も読み返すことってあるじゃないですか。その行為の原動力は、単にストーリーが面白かったからというだけではなく、そんな解き明かしたいという欲求に基づくものなんじゃないかと思っています。つまるところ、ひとつの対象を突き詰めて考えたり、極めていったり、そういうのが楽しい性分だったんでしょうね。

そんな自分の嗜好みたいなところですが、おとなになっても変わってないなぁと思うことがあります。それが料理をしてるときだったりするんですよね。

🍴ところで、もやし好きですか?

というわけで、その気質を遠慮なく料理に向けて発揮して、何かについて語ってみようと思います。

その題材はもやし。
もやし、お好きですか。
私は好きです。

そもそももやしって、絶対的に主食のポジションにはならない存在なのに、食べるときはけっこうな量を食べてる気がします。お鍋にしても、炒め物にしても、ほかの具もいろいろ入ってるんですけど、一番たくさん使ってるのはもやしだったりしませんか。

🍴もやしはいつももりもり

たとえば豚肉をメインにした中華鍋だと、豚の薄切りにねぎ、しいたけ、にら、豆腐なんかを中華スープで炊いていただくのですが、ここに圧倒的に量的には優勢な感じで、もやしを入れます。にらもけっこうたくさん使うんですけど、にらの場合は加熱すると、くたっとなってかさが減りますよね。

でももやしは違う。スープの中でもいきいきと背筋を伸ばしてそのまんま。食べてもしゃきしゃきと、存在をしっかり主張してきます。にらが香りなら、もやしは食感。そんな気がします。

🍴もやし炒めを極める

そんなもやしの中でもある時期から、お気に入りになってるのがこれ。

もやし炒めです。

ごくシンプルな料理なんですけど、ちょっとしたこだわりで作り方をアレンジすることで、できあがりの印象が大きく変わるひと品だったりします。今回はそのこだわりについて。お話ししようと思います。

まずは材料。シンプルです。

もやしはざっと1/2袋分。あとは刻んだねぎと、にんにくです。

今回はこれを2セット用意して、作り方の違うもやし炒めを食べ比べしてみます。ちょうどもやし1袋使いきり、中途半端に残ったりしないエコな企画です。もやしって、安い代わりに傷みやすかったりもしますしね。

🍴みずみずしいタイプA

まずひと品目の完成図はこんな感じ。さっそく作っていきましょう。

フライパンに油を敷いて、ねぎとにんにくを入れて火にかけます。

にんにくの香りが立ってきたら、もやしを投入。混ぜ合わせながら、強火で炒めていきます。

もやしが少ししんなりした感じになったら、塩をひとつまみとこしょうをパッパッ。

実はトケイヤKitchenのレシピは塩を直接味付けに使うことはあまり多くありません。

ですが、今回はあまりのシンプルさに、味には塩を振り、香りをこしょうでプラスする組み合わせです。

これで“もやし炒めA”のできあがり。

しゃきしゃきしたもやしの食感が美味しいです。加熱してもみずみずしい食感。ポイントは手早く炒めること。そのおかげで、もやしの水分がしっかり残ってるんですよね。強火で短時間、炒め物の基本ってやっぱりこれでしょう。

手早く炒めるこのスタイルが、けっこう一般的なもやし炒めではないかと思います。

🍴旨味が凝縮タイプB

それに対して、ある日試してみて以来、はまってるのがこちらのスタイル。

ぱっと見た写真で、どれくらいタイプAとの違いが伝わるのかは、ちょっとわかりませんが、ここではなんとなく色が濃いかなと思ってもらえればOK。食べると明らかに違う“もやし炒めB”がこれなんです。

では作っていきます。

まずフライパンにごま油を入れて火にかけます。

煙が立ってきたら弱火に落として、もやしを投入。そして全面に広げます。なるべく広く、フライパンの面積いっぱいに、もやしを敷き詰めるようにするのが最初のポイントです。

そして、そのまま待ちます。タイプAのように混ぜたりしません。ただじっと待つ。これがふたつめのポイント。

どれくらい待つのか。それはもやしの底に訊いてみます。フライ返しで底から持ち上げて、こんがりとした焼き色が付いてます。そう、もやしがOKだよ、といってます。

底から一気に天地を返すようにひっくり返して、ここでねぎとにんにく登場。これがみっつめのポイント。手早く混ぜるタイプAとは違って、時間をかけるので、最初ににんにくやねぎを入れると焦げてしまうので、ここで入れます。

そして、新たに底になった面も、またじっくりと弱火で焼いていきます。

両面にこんがりと焼き色が付いたら、塩をひとつまみとこしょうをぱらり。強火にして、全体を加熱しながら混ぜ合わせたらできあがりです。

どうでしょう。作り方を読んだ上で見てみると、タイプAとの違いがくっきりと浮き上がって見えてきませんか。

ひと口食べると、タイプAと比べてもやしはしんなりとしています。でも噛むごとにその芯の部分にはあのしゃきしゃきが残っていることに気付くはず。そしてじっくりと弱火で加熱したことで、かなりしっかりと水分が抜けていて、もやしの旨味がぎゅっと凝縮されています。

タイプAが“もやし炒め”なら、こちらは“焼きもやし”と呼びたい仕上がりです。時間をかけて焼き上げたこともあって、なんだか愛おしさが胸にこみあげてくるようです。

🍴AとBの使い分けも

手早く炒めたタイプAもあのいきいきとしたみずみずしさは、これぞもやし炒めという美味しさです。しかし、この焼きもやしスタイルにはちょっと目新しい感動がないでしょうか。

もちろんどちらも美味しいので、時と場合にあわせて、タイプAにするかBにするかをチョイスして作っています。だって、どっちも好きですから。でもどちらかを選んでいます。そのキーになるのは主に調理時間です。

手早く作りたい時間のない日はタイプA。ちょっとのんびり料理をしたい休日の夜はタイプB。そんな使い分けも楽しいなと思います。

ちなみに、お酒を軸にもやし炒めを使い分けすると、タイプAはなんといってもビール。圧倒的にビールが飲みたくなります。それに対してBは赤ワインのおつまみにするのも、おすすめです。

もやしって、どことなく土を感じる大地の香りがあると思うのですが、水分を飛ばすとそのニュアンスが凝縮される印象があります。そして焼き色を付けることで生まれる香ばしさ。さらに香り付けのこしょう。これが、若くてすこし濃いめの赤ワインにもやし炒めタイプBが合う理由だと思ってます。

🍷もやしとワイン

たとえばカベルネ・ソーヴィニヨンとか、マルベックとかカルメネールとかそういう品種のデイリーなものは試してみてほしい組み合わせです。相手がもやし炒めなので、ワインはあくまでデイリーなものがおすすめ。もやしはいつまでもどこまでも、とってもフレンドリーな素材ですからね。

より、このもやし炒めBを赤ワインに近づけるなら、ねぎとにんにくを入れるタイミングで、刻んだベーコンを入れるのもおすすめです。お肉の風味が入ると、一気に距離が縮まります。なんならいっそ、焼いたお肉の付け合わせにしてもよし。もやし炒めを極めてみたら、なぜかワインが飲みたくなった、とある日です。

🍛おまけのアレンジ

最後におまけのもやし炒めアレンジ。

その名も“カレーもやし”です。

もやし炒めの味付けの段階で、カレー粉とケチャップ、お好みソースを投入。お好みソースは、とんかつソースでも中濃ソースでもOKです。この場合、ケチャップとソースにも塩分があるので、塩はしません。

あとは味がからむように炒め合わせるだけ。

スパイシーな香りが食欲をそそります。

このカレー風味のもやし炒め、タイプAをベースにするか、タイプBをベースにするかは、お好みで大丈夫。その日の気分や準備時間、合わせるお酒やメインのおかず、そんなキーに合わせてみてください。  

🍴こだわりで生まれた2つの味

もやし炒めはシンプル。でも奥が深い。

こういう、作り比べ、食べ比べ系のテーマは、我ながら楽しいなと思っています。ちょっとかっこよくいうと、考察系の記事って、書き上げたあとの達成感が、より大きいんですよね。

それでいて、テーマがどこまでも親しみやすいもやしを素材にした炒めものだったりする、そんな親しみやすさと考え込んでいるさまのギャップが面白いなとも感じます。

なんにしても、物価上昇の激しい昨今において、料理する立場からすると、もやしは経済的で助かる食材です。そんなリーズナブルな素材も、作り方にこだわってみると、ふたつの味に仕上げられるというのが、今回の個人的なゴールでした。

美味しかったです、どちらも。

お読みいただきありがとうございます☺️いただいたサポートは新作メニュー作りに役立てさせていただきます🍴🙏