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資格と学歴ではどちらが就職・転職で効果があるのか

拙著でも詳しく書いておりますが、私は元々、学歴がありませんでした。
長い間中卒でしたし、高卒になったときも通信制高卒でした。


【著書】あすを学ぶ: 中卒ホームレスだった少年が大人になって勉強をやり直して宅建士・行政書士・司法試験予備試験などに合格し、人生を変えたお話


正直なところ、中卒から通信制高卒になったところで、ほとんど変化はありませんでした。
アルバイトに受かりやすくなったくらいです。

中卒又は高卒のままだと、就職・転職市場ではいずれにしろ「低学歴」なので、その事実が極めて重くのしかかってきます。

地方出身の人はよくわかるでしょうが、そもそも地方には仕事がないので、とても少ない椅子を取り合う形になります。
そうなると、地元の国立大学卒の人たちにはどう足掻いても勝てません。
極めて少数のホワイトな椅子は、瞬時に地方国立大学卒の皆さんが占有するのです。

私も駅がないような田舎の出身なので、案の定仕事がなく、東京にでてくることになりました。

もちろん東京でも低学歴が就ける「ホワイトな仕事」なんてないので、最初はそこそこブラック、かつ、いつでもクビになる身分の派遣社員で食いつなぎました。
そして、何とかして有名な国家資格を取得して、転職で挽回しようと試みました。
記憶している範囲では、運転免許、英検2級、FP2級、宅建士などを取得しました。

これによって、当時の転職市場では、一定の評価を受けることも多くなりました。
特に宅建は不動産業において評判が良く、面接官に「へぇ宅建持ってんだ。いいじゃん」みたいな軽いノリで褒められることが増えました。

ただ採用されるかは別の話で、最終選考くらいまでは行くのですが、ライバルとなった候補者(有名大卒の人)には勝てませんでした。
私は当時、大手不動産会社又はその子会社、もしくは金融業の会社を中心に受けていたのですが、どうしても最終選考前後で落とされてしまいます。

そこでもっと頑張って、行政書士と司法試験予備試験に合格しました。
予備試験は知る人ぞ知る最難関資格です。
正直にいうと、司法試験の方が受かりやすいなと思っているくらいです。
お金と時間に余裕があるなら、司法試験の方がやりやすいです。

私は、文字通り命懸けで極貧生活をしながら予備試験の合格までたどり着きました。
合格後には貯金がほぼゼロになるくらいのギリギリの状態です。
約3年に及ぶ受験生活の間、ろくなものを食べられていなかったので、栄養失調にもなりましたし内蔵も傷めてしまいました。
それほどの代償を支払って、やっと勝ち取った合格でした。

これで大学院卒(ロースクール卒)と同等に扱われるはずだと思って転職市場で150社ほど受けてみたのですが、残念ながら変化はほとんど見られませんでした。
年齢も30歳手前になっていたこともあるでしょうし、法律系業務未経験というのもあるでしょう。
何より、司法試験予備試験がまだ知名度が全く無い時代だったので、誰もその試験の難しさを知らなかったのです。
ゆえに、書類選考すらほとんど通りませんでした。

ホワイト職種・ホワイト企業のほとんどが「4年制大学卒」を学歴の最低条件としていた時代だったので、そもそも応募を受け付けてくれない状態だったのです。
その結果、応募しても最短その日のうちにお祈りメールが届きます。
7割近くの会社からは返事すらもらえませんでした。
最難関試験の一つである司法試験予備試験に合格しても、転職市場ではあまり効果はなかったです。
死ぬほど努力したからこそ、凄まじい絶望感に苛まれました。

ただ、極々一部の企業(具体的には2社ほど)については、法律系職種の書類選考を弁護士(インハウスローヤー)が行っていることがあって、その人達からは高い評価を受けました。
最初はとても疑われて、面接時に合格証書を持ってきてくれと言われたりもしましたが、葉書サイズの粗末な合格証書(予備試験の合格証書はただの葉書)を見て納得してくれたようで、そこからはとても褒められました。

そういう意味では、極めて限定的な意味で効果があったように思います。
お陰様でそのうちの一社に拾ってもらえて、無事法務職としてのキャリアをスタートすることができました。

その後、一橋大学の院に進んで修士号を取得したわけですが、ここで初めてまともな学歴が履歴書に記載されることになりました。
ちなみに、効果は絶大でした。

まず、入学して1年くらい経ったときに、ハイクラス層向けの転職サイトに登録したのですが、以前は登録そのものを断られたサイトでした。
そこも無事に登録が認められて、数日で数百件のスカウトメールをいただくことになりました。
他のサイトでも似たような感じで、捌ききれないほどのスカウトメールをいただきました。

正直なところ、司法試験予備試験の学力レベルは博士相当だと思っていますし、ある意味博士以上の学力が必要になってきます。
そのため、大学院入試なんてほとんど努力せずに合格できました。
一般的な研究計画書をかいて、教授からの圧迫面接に耐えつつまともな回答をし続けられれば大学院は受かります。

また、大学院で学ぶ内容も、9割くらいはすでに知っている内容だったので、予備試験に比べるとそこまで大変だったという感覚はありません。
予備試験は、どんなに一生懸命勉強をしたところで受からない人は一生受かりませんから、努力が正当に報われる大学院の方が極めて楽でした。
一旦「学位」と「資格」という性質の違いを無視して考えても、難易度という面では比べ物にならないくらいの差があります。

しかし、転職市場での効果という面で見ると、予備試験よりも学歴の方が圧倒的に上でした。
これには正直驚かされました。
ここまで違うものかと。

立派な学歴を持っていると、そもそもこちらから応募なんてしなくても、企業側からスカウトメールを送ってくれるのです。
最初はカジュアルな面談でもいいから、30分だけ時間をくださいと言われる側です。
つい1年前まで書類すら受け取ってもらえなかった人間なのに、大学院に入学したという事実だけで信じられない変化です。

それに、今までの面接は、基本的に上から目線で威圧的な態度を取られて、場合によっては面接で直接学歴などを馬鹿にされたりもしたのですが、学歴を手に入れた後の面接では、扱いが一変しました。
もちろん同じ面接官ではないのでたまたまかもしれませんが、本当に全く扱いが異なるのです。

これはおそらく、一橋大学というネームバリューのおかげなのだろうと思っています。
特に東大卒・京大卒の面接官からは、経歴をとても褒められました。
面接でも直接「最初ご経歴を拝見したとき、正直にいうと嘘かなと思いました。でも、もし本当なら、今までこんなに努力を継続した人を見たことがないくらい凄いことなので、是非お会いしたいと思った次第です。本当に尊敬します」とまで言われました。
私からすると、そのときの面接官の経歴の方が何倍も凄いと思うのですが、その話は一旦置いておきます。

その後もいくつかの会社を受けたのですが、ほとんどの会社で書類選考はすぐパスして、スムーズに最終面接まで行くことが多かったです。
内定も信じられないくらい簡単に出て、1次面接の段階で役員が出てくることが多くなり、しかも面接途中でCEOやCFOを呼ばれてその場で最終面接に移行するなんていう流れが多発しました。
面接中に役員同士の会議が始まって「これだけの方だとすぐに他の会社が内定出しますよ。うちも出しましょう」「そうだよね。僕もそう思う」などと眼の前で言い始めたりしました。

私自身は数年前から何も変わっていませんし、むしろ予備試験を受けていた頃の方が頭もキレキレだったくらいです。
試験から離れると思考速度は確実に遅くなるので、受験生の頃よりポンコツになっているといっていいほどです。
現実的な能力なんて、転職市場ではほとんど関係ないのでしょう。

あくまでも私の経験を基に考えると、転職市場では、資格よりも有名大学の学歴の方が高く評価されるように思われます。
もちろん資格はあったほうが良いですが、ちゃおの付録みたいなものです。

https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000002179.000013640.html  ちゃお7月号の付録


私の経験則では、学歴というエリートが当然に持っているものがあって初めて資格も評価されるという感覚があります。
つまり、学歴というパスポートを手にして入場門をくぐった後でないと、正当な評価を受けられないことが多いということです。

そういう意味では、学歴の方が重要だと考えています。

数年前にサラリーマンを辞めて投資家になった後も、他社の人事業務の一部を手伝うことが何度かあったのですが、そこでもやはり同様のことを思いました。
多くの有名企業では、入口の部分で学歴を見られるので、そこがまず第一関門です。
その第一関門を突破した後に、やっと経歴や資格を見てもらえます。

年収が高い上級職種や専門職種ほど、その傾向は強いように感じます。

大手企業では、採用の最終決定権を有する役員の多くが東京一工・早慶の出身者なので、最終選考に残る候補者のほとんどもそういう大学を出ている人たちばかりです。
その段階では学歴なんてあって当たり前で、それが最低限の条件というニュアンスで語られています。
だからこそ、最終選考では誰も学歴なんて気にしていません。

私が見る限りではそういう状態なので、入口部分では学歴に軍配が上がるかなと思います。

そして、2次面接以降からは資格が強くなっていくということも知っておきましょう。
これは専門職種の転職で特に顕著だと思います。
入口部分では学歴で見られることが多いですが、二次面接以降からは候補者の多くが学歴をすでに有している者同士になるので、資格や経歴によって差別化しないと勝てなくなります。
経歴については、よほど有名な企業で役職者として働いていたという事実でもない限りはどんぐりの背比べ状態なので、客観的に判断できる国家資格が重視されます。
むしろ、有名な資格を持っていることが当たり前という状態です。

したがって、学歴も資格も両方持っていないと最終的に勝ち残ることは難しいです。


以上のことを総合的にまとめると、学歴か資格でどちらが効果があるかという論点については、最終的には学歴も資格も両方必要ということになります。

ホワイトな企業で、ホワイトな職種で、比較的高い年収をもらいたいなら、どちらも持っていないと勝ち残れないでしょう。
それくらい競争が激しいです。

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