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春の東北湯治①【約束の地 満開の鳴子温泉へ】

医師 「くれぐれも、無理はしないようにね」
私  「心得ております」
医師 「保険証忘れないように」
私  「大丈夫ですよ。近くに大きい病院もあります」
医師 「随分良くはなってきているから。フレスミン(筋肉注射)はまた打っておく」

 連休前最後の大学病院での受診。
血液内科の主治医から渡されたのは一枚の紙。簡単にだが私が病臥してからの容態の推移が記されている。どこの医師に見せても内容は分かるはずだから、と。

 私の身体は時々40度を超えるスパイク熱や、週単位で寝たきりになるほどの激痛が出る。不幸中の幸い、てんかんは起こることはない。
 湯治に出る際は一応主治医に行先を告げ、近くの病院もあらかじめ調べておく。

 今回の血液検査もアラームはゼロではなかったが、白血球を始めとする免疫系の数字は正常値に肉薄するほどだった。だが未だに、周期的に発生するフェリチン(貯蔵鉄)暴走やビタミンB12欠乏症、全身痛の原因は判然としていない。無論、生活習慣などで影響が出る範疇ではない。


 趣味だった湯巡りは「湯治」へ。それの前後でハッキリと体調の変化を捉えている。分かりやすいのは白血球の上昇だ。
 私の白血球数の平均は2,500~3,300程度(正常値:4,000~9,000)、男性の中では極端に少ない。以前増富温泉(山梨)で1週間湯治をすると、正常値の4,400を記録した。これは免疫力の向上を意味する。

 予防医療に後退した温泉療法。西洋医学に傾倒する医師会からは「プラシーボ」と言われそうだが、私にとってそんなことはどうでもよいことだ。

 ボルタレン、リリカ、トリプタノール、リボトリール・・・挙げればキリがないほど投薬した鎮痛剤の類。薬の強度は徐々に強くなっていったが、どれも効験は一時的で、痛みの根幹を断つものではない。現在は全てを手放した。

 源泉に一縷の希望を見出し、行く先々で出会った医療に見放されし湯治客。術後の縫合痕が身体に残る老父、抗がん剤の副作用をハンチングで隠す若者が、湯治場では実に前向きに生きている。
 それだけでも、私を突き動かすには十分すぎるほどだ。一病息災と思えるようになったのも、温泉があったからに他ならない。

 
 「今回も頼むぞ、1126(イイフロ)号」

 今宵もまた鳴子温泉を目指し、北へと旅立った。前回、桜の頃にまた来ますと約束した川渡温泉「高東旅館」へ。

 
 寒さと正比例の激痛。2月のピークを乗り越え、これから確実に回復期へ向かう。そんな心の余裕もあり気力充実のスタート。一息で鳴子までの運転は流石に痛みが出るため、途中ビジネスプランで一泊を挟みつつ北へ北へ。
 出発から常に立ち込めていた曇天は、宮城県に入ると快刀乱麻の如く晴れ渡っていった。

 古川インター(鳴子最寄り)手前で高速を降り、一カ所立ち寄り。過去にも記事にしているが、私は必ず温泉地に入る前に湧水を汲む。

 今回初訪となった湧水地は、鳴子温泉の30キロ南に位置する大和町「風早峠かぜはやとうげの水」。

 湧水処の選定基準は、味もさることながら車が横付けできるかも重要だ。20ℓのポリタンクで給水するので、あまり離れていては積載が出来ない。
また水量が境内の手水舎の様にちょろちょろでは時間がかかり、後ろで列を作られても気まずい。

 google先生で見つけた風早峠の水は、道路付け・水量ともに見事だった。5本の口から高圧洗浄の様にドバドバと出ており、車通りもないため濯ぎから給水までダイナミックに。

 そしてバックでピタリ、ほぼ完璧にトランク前に寄せ切った。
ここまで美しい給水は年にそう何回もあることではない。ここは峠の中でまだ路肩には残雪があるほど。喉からキンキンに冷えたを流すとクリアな湧水が食道を抜ける。1週間分の飲料水を見事に確保した。

 ここからは下道でじりじりと鳴子を目指す。途中457号沿いに派手な卵直売所の看板を発見。自炊生活が続くので地産の食材には目を光らせる。「宮開のたまご」という品だった。毎日食べるので10個入りを購入。

 
 その後「やくらい土産 どさんセンター」で食料を買い揃え、13時に高東旅館にチェックイン。以前も連泊で滞在した1階浴室近くの部屋へ。
 窓から数メートル外に満開の桜が見えた。50度を超える源泉升のすぐ横に根があり、地熱のためこの桜がこの辺りで最も早咲きだと女将さん。

 すぐ近くの川沿いの桜並木も綺麗なはずだ。
実はこの日、天気が良ければ花見をしようと、ある方と約束をしていた。 

                           令和4年4月18日

風早峠の湧水 ポリタンクを弾き飛ばすほどの水量
「洗車禁止」の文字が 
味・道路付け共にパーフェクト
457号泉沿いに卵直売所を発見
毎日食べるので、新鮮なものを

<次回はこちら>


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