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温泉地で出会った美味しい湧水 10選

 「長湯して 水の旨さも 山の宿」 

 群馬県の温泉宿で、脱衣所や待合室などに掲げられている標語です。
温泉利用許可申請をした施設において、マナーアップ啓発資料として張り出されています(※著作権は群馬県に帰属)。

 確かに長湯した後のキンキンに冷えた水の旨さは卓抜のもの。
私は旅に出る時は愛車にペットボトルやポリタンクを積載し、近くの湧水処で給水してから宿に向かいます。長くこの習慣を続けてきました。湯治の際は飲用だけでなく、米を炊く際など生活水としても使用します。

 一方で湧水は水道法の適用外になるため、明確な管理者がおらず水質検査がされていない場合がほとんど。お腹を下した場合は自己責任です。私は幸いあたったことはなく、これからも湧水や伏流水はブーメラン覚悟でいただくつもりです。何故なら旨いからです。

 
 今回は温泉地で出会った美味しい水を10選ご紹介します。車で回れる範囲なので東日本だけです。写真が残っておらず、やむなくお借りしている物もあります。

 くれぐれも、飲用の際は自己責任で。

①須川高原温泉 「栗駒神水」(秋田)

※観光ポータルサイト「美ちしるべ」より拝借

 宮城県石巻から秋田県由利本荘を結ぶ398号線沿いにあります。
鳴子方面から北上し、県境を越えると小さな鳥居と共に現れます。地酒にも使用される天然水を求め、多くの観光客が見受けられます。春には山菜採りでも賑わう地です。

 東に行くと須川高原温泉、直進し湯沢方面に下りると小安峡温泉です。
どちらも高温源泉が待ち受けているため、しっかりとここで水分補給したいところ。観光スポットとして管理されているようなので、水質基準を満たしています。

須川高原温泉 大日岩を望む この写真はあった

須川高原温泉、又は小安峡温泉から10分ほど

②檜枝岐温泉 「安宮清水」(福島)

※尾瀬桧枝岐温泉観光協会HPより拝借

 走行困難なことから「酷道(国道)」とも呼ばれる352号線。
福島から新潟に架かるほぼ中央に位置するのが檜枝岐村です。温泉については同南会津の木賊温泉と湯ノ花温泉の方が印象が強く、正直全く記憶に残っていません。

 逆に檜枝岐では、お蕎麦と水の旨さを鮮明に覚えています。
「旅館ひのえまた」の館主から湧水処の存在を聞き、裏手にある「安宮清水」に採水に行きました。

 膝下くらいの高さからチョロチョロ出ており、しゃがんでペットボトルで汲みました。風呂から上がる度に飲む水が美味しく感動でした。

旅館ひのえまた ここから裏山に歩いて行くと湧水処がある

檜枝岐温泉街の外れ

③片品温泉郷 「観音様の水」(群馬)

隣は民家 茅葺屋根が可愛い

 群馬県片品村は全国有数の名水の産地。村内の水道水は全て伏流水で賄われるほどです。10カ所ある湧水処を回りましたが、最も気に入ったのが「観音様の水」です。

 茅葺屋根の下にあり、善意の募金箱もあります。管理者がいるということでしょうから安心ですね。

 湧水口は一本ですが、凄い勢いで清水が飛び出しています。20ℓのポリタンも見る見る水位を上げていきます。真夏でもかなり冷えており、手ですくって喉に流し込むと思わず「旨い」と唸ってしまいます。

 覚えている限りここが私のベスト湧水です。

タンクが洗いやすいのもポイント

片品温泉郷まで15分、老神温泉まで20分ほど

④湯宿温泉 「名も無き湧水」(群馬)

湯宿温泉から赤谷湖に抜ける途中にある

 群馬県の小さな温泉街「湯宿温泉」。そこから国道17号を猿ヶ京方面に向かい、途中から側道へ。相俣ダム管理支所を目指すと名も無き湧水処があります。本当に誰も管理している形跡はないです。

 こちらは湯宿温泉「金田屋」に宿泊した際、館主から教えて頂きました。独泊だったため、チェックアウトの際に一緒に車で出ました。ご主人の運転する軽トラを追いかけてこちらに着きました。

 水苔が付着しているので、一見不衛生に見える方もいるかも知れません。ですが、逆です。青々としたコケが生えているのは毒性がない証拠。ない方が塩素を含んでおり危険とのことです。
 大峰山の伏流水、スッキリとしていて美味しいです。物理的にポリタンクが入らず、2ℓペットまでしか補給が出来ません。不安な方は煮沸した方が無難でしょうか(私はガブガブ飲んでますが)。

写真中央右 何も目印がない

湯宿温泉街から車で3分ほど みなかみ町新治B&G海洋センターの近く

⑤那須湯本 「民宿松葉 宝来水」(栃木)

※じゃらん様より拝借

 那須湯本のシンボルとも言える「鹿の湯」から、石畳を降りて行くと小さい民宿街が連なります。内湯を持たず、入浴は外湯の共同浴場を使用します。

 そのうちの一つ「民宿松葉」の玄関口、竹筒から湧水が出ています。
こちらも善意の募金箱があり、宿が管理をしているようです。宿の真ん前なので、余りダイナミックにポリタンクを当てると気まずいです。車も横付けできません。そっと2ℓペットボトルでいただきます。

 この辺り一帯は硫黄臭が凄く、電化製品や車も傷めてしまうほど。
宿に架かる橋、流れる川も白濁です。何処を掘っても濁り湯が出そうな気がしますが、これはクリアな天然水。硫黄が混じることはないのでしょうか。記憶に残る美味しい水です。

宿泊者は共同浴場を使用する こちらは滝の湯

那須湯本民宿街の中央あたり 

⑥松之山温泉 「庚清水 こしみず」(新潟)

新潟県の認定書が出ている

 日本三大薬湯で知られる松之山温泉から10分、美しすぎるブナ林「美人林」からほど近い場所にあります。県道沿いを見落とさぬ様スピードを落とすと確かにありました。

 世界有数とも言われる豪雪地帯十日町。ブナ林で磨かれた天然水は流石の旨さでした。ペットボトルに入れ、湯治宿の部屋の窓とカーテンの隙間に置いておいたら氷の薄膜が張っていました。
 松之山の超濃厚源泉で汗を絞り出し、風呂上がりに飲んだ一杯は生ビールを超えるキレがありました。

道の反対側 山しか見えない

松之山温泉から10分

⑦五十沢温泉 「八海山 雷電様の水」(新潟)

コシヒカリを育む八海山の湧水

 言わずと知れた日本一旨い米「魚沼産コシヒカリ」。それを育てるのは名峰八海山の伏流水です。私が湯治で利用する五十沢温泉(旧館)近くに「雷電様の水」という湧水処があります。

 林の中へと吸い込まれるように狭路を進むと、少し開けた境内に入ります。荘厳な雰囲気の中、石碑の元から滾々と湧き出る水を、多くの地元民が採水に現れます。

 埼玉ナンバーの私の車を見て、異口同音に「米はこの水で炊かなきゃダメだ」と土着民は言います。栃尾又温泉近くの農家直営「金山屋」で新米コシヒカリを買い雷電様の水で炊くと、それはそれは美味しい物に仕上がりました。

荘厳な雰囲気が漂う 魚沼の米が旨くなるのも納得

五十沢温泉から10分、又は六日町温泉から15分ほど

⑧野沢温泉 「六軒清水」(長野)

野沢温泉街の外れにある

 13か所の無料共同浴場が点在する野沢温泉。外湯巡りを思う存分愉しみたいところです。湯はひとつを除き高温なので、水分補給には入念に行います。

 メイン通りからは少し離れ、「秋葉の湯」の近くに六軒清水はあります。こちらも石碑があり管理はされている模様です。線が細く、ポリタンクも入らないのでペットボトルで少しずつ。

 タオルと小銭入れ、そしてペットボトルを小脇に抱え激湯巡りへと繰り出します。食道を冷水が通過する感覚が爽快です。

観光名所「麻釜」 湯巡りの途中に一杯

野沢温泉街の外れ

⑨田沢・沓掛温泉「修那羅 しょならの泉」(長野)

如何にもという湧水感

 長野県の田沢温泉や沓掛温泉は大好きな温泉地の一つ。
両温泉は温湯ですが、じっくり1時間ほどかけて入浴するとかなり汗が出ています。利尿作用も促進されるので、多めに水分は取っておいた方が良さそうです。

 最近は湯治で沓掛温泉によく訪れていますが、こちらも必ずセットで回ります。車で15分くらいです。野放し感があり、如何にもという湧水の雰囲気があります。こちらも心配な方は煮沸でしょうか。

 「美味しい湧水は?」と問われると、ここも筆頭です。

ちょうどポリタンクがスッポリ入る

田沢・沓掛温泉から15分ほど

⑩伊豆下田温泉 「大師の聖水」(静岡)

「マンダラ」という店先に出ている

 伊豆の南端、下田市と松崎町の境目にある婆娑羅峠。
「マンダラ」という飲食店の店先に「大師の聖水」が湧き出ています。

 以前下田の横川温泉にて長期滞在した際に、この水には随分お世話になりました。宿から車で10分、自炊生活を支えてくれました。地産の米を炊き、鰹節の出汁を取り、茶漬けをいただき、コーヒーも煎れます。

 海幸山幸を堪能できる伊豆。素材の旨さを引き出すのはやはり「美味しい水」だと再認識させられました。  

県道沿い バサラ峠というバス停もある

横川温泉から車で10分以内

おわりに

 以上10選でした。冬期通行止めの道も多いので、行く前に管轄行政のHPで交通情報を確認してから行きましょう。

 それにしても温泉と湧水は何故これほどまでに相性が良いのでしょうか。体内が浄化され、汗と一緒に悪運もまとめて流れて行きそうです。いつか、「市販の水は不味い」と言ってみたいです。

 湧水に関しては素人同然、山屋さんには到底勝てません。良い湧水処をご存知の方は是非教えて下さいませ。

                           令和4年4月 記

<続・温泉地で出会った絶品B級グルメはこちら>

<温泉地で出会ったB級グルメ10選はこちら>

<①栗駒神水>

<③観音様の水>

<⑥庚清水>

<⑧六軒清水>

<⑩大師の聖水>

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