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詩や短歌をよみます 自由律の俳句もよむかも
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#現代短歌

空っぽのあなたの家に忍び込み花束置いて消えていきたい

僕の15さいの墓標

僕の15さいの墓標

硝子ならいくらでも割る僕は悪にもなれないがねむれるのなら

慎重に測定してよ身長を僕らの背丈は夏の積雲

キスをした。漫画の中のきみたちは。眺めることも叶わない夢

トラックよライトノベルのトラックよ僕の”ふだん”を消し飛ばしてよ

うだるようさくらが舞った春の熱身体の中に飲み込まれてく

浮かされて羽化しそこねた揚羽蝶それをみた君は気味悪がる

ディスイズアペンディスイズアペンと呟いた呪文のよう

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ぽてぽてと混ざるキュウリにニンジンにハム塩コショウポテサラ食べたい

ここだけの話、地面はみずいろです。かくいうわたしはオレンジいろです。

「おかあさん、あれはなんなの」「あれはねえ、渚に佇む幽霊なのよ」


ビフテキののこっとるまだ一切れよお腹の中に同志がいるよ

どんぶりは、腹に溜まるが満たされぬ。満たせぬものはなんなのかしら

万年の血汐のような悩みよりあなたの熱が恋しい、晩夏

したいのにする気も特に起きぬのはきっとあの子が昇ったからね

しりしりと削るる脳は夢心地ぼくは此岸に戻りたいのに

道の駅西瓜をおいた夕暮れにほおずきが浮くちりんちりりりん

ずっと待っていた。わたしは哀しかった。ただそこにいたいだけなのに常に痛みを感じていた。いつもみんなをみていた。みんなはわたしから眼をそむけた。夏の雨に降られるようにこの世界から消えてゆくのがこわかったわたしは、夕暮れの境界に立ち尽くすようにして自分で自分を縛り付けていた。長いときが経った。ひとはわたしをじぶんの仲間でないなにかとして畏れた。脚がひきのばされ顔が横につぶれたわたしの姿をみたものはみん

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椿のようにとろけなさいしゃらりら君はわたしの躰のなかよ

夕立がとろけるように降ってきた。あじさいが咲くように傘が次々とひらいた。ぼくは傘もなく立ち尽くしていた。理由は単純、忘れてきたからだ。しかしぼくには分かっている。もうすぐあの子がぼくのそばに来て、「仕方ないわね。また忘れてきたの……」ほら、こんな風になかば呆れ顔で傘の片側を差し出してくれるのだ。彼女は誇らしげなかおをして愛らしい傘を突き出す。ぼくは恭しくその片側に収まった。苔と草いきれと湿った土の

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