《小説》書類上 〈第6回〉
「もしもし、わたしです。別のだれかじゃない。わたしがこれを喋っているんです。聞こえてますか? 理解していますか? わたしにはわからない。わかることなんてないんですよ。ひとまず喋ってみて、とりあえず実行してみて、それで初めて理解するんです。というか理解したふうなふりをします。理解するってことはそれの深みにはまるということでもあるんです。それの領土を承認するということです。なにか理解されたがっているものがあるとして、それのことがわかるというのはそれに割り当てられた境界線を認めて、