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おかしいのは、自分か、政治か?ラブコメで炙り出される“永田町のフシギ” 『恋と国会』

【レビュアー/こやま淳子

正直いって、私は政治がよくわからない。コピーライターとして、どちらかというと社会派な仕事をしている方だと思うが、TVを見ていても政治家の言葉って、なんだか頭に入ってこないし、それは自分の無知のせいだと思うと、なおさら興味が低くなる。

しかし政治がわからないのは、実は政治のせいじゃないのか? わからない自分は普通で、おかしいのはあっちなんじゃないのか? そんな風にハッとさせられる漫画が、この『恋と国会』なのである。

ラブコメを楽しみながら、政治がどんどんわかってくる。

代々、総理大臣を輩出する名家に生まれた海藤福太郎と、元地下アイドルで(おそらく顔だけで当選した)山田一斗。そんな2人の国会議員のラブコメの様相をとりながら、「永田町のフシギ」が炙り出されていく。

おバカな地下アイドルが、空気を読まず、党に怒られたり波紋を呼んだりする言動が、読んでいる私たちにとっては、ことごとくマトモに見えるのだ。

漫画だからこそ描ける、それぞれの正義。

しかも、ただ一方的に日本政治を批判するのではなく、地盤を背負った政治家側の主張、野党の主張、貧困層出身の庶民の主張、さまざまな角度の主張を描いている。

「豊か」ってそういうことなんだろうか?
どんな田舎でもそこそこの暮らしができる。
ってことが本当に「豊か」ってことじゃないのか。
野党さんはいいですよね。
政権を担っていないから美しいことが言える。

野党・みんみん党のライバル議員と海藤の議論などは、そのまま世の中でよく繰り広げられている議論のようでおもしろい。そう、どんな立場にも正義はある。

若者に対して、やみくもに選挙に行くことを推奨するより、こういった漫画を読ませた方が、よっぽど政治に興味が湧くのではないだろうか。

そんな漫画というコンテンツの力を、あらためて感じさせられる作品なのだ。


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