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⑥自宅紹介その1

前回はリアルな資金計画の話をしましたが、実際にどんな家に住んでいるのか、気になった方もいるかと思いますので、今回は自宅の紹介(設計編)をさせていただきます。


1.before 図面

母屋1F before 図面
母屋2F before 図面

こちらが母屋のbefore図面です。古民家の図面が残っているのは希ですので、実測して図起こしをします。母屋は築100年くらいの2階建の建物と、後に増築された35年程度の平家が繋がってできています。元々は農家で養蚕などもされていたため、その名残がありました。実測と並行して、柱の傾きや床の不陸も調査します。柱に関しては3cm程度傾いていたのですが、それを矯正しはじめると建物全体を直す必要が出てくるため、そのままにしています。
図面表記は設計事務所によって様々ですが、青線で描いてある部分を解体する箇所、黒字を既存のまま利用するように表現しています。合わせて330㎡程度あり、今回の工事としてはその半分以下の145㎡程度(2階建部分の一部と平家部分)を改修しています。残った部分に関しては後々改修を考えています。予算の都合と十分な生活スペースを取れたこともありますが。

母屋外観(木張り部分が工事範囲)

設計をスタートするにあたり、上記をベースに工事範囲と大まかな予算を照らし合わせながら決めたうえで、プランニングをしました。概算をとる際は、それ以外のサブプランも検討しておくとなお良しです。例えば、平家部分のみを改修するプランなど予算とそれに見合う計画があると後々の調整がしやすいです。

2.after 図面

母屋1F after 図面
母屋2F after 図面

赤線部分が改修した範囲になります。
大きな設計方針としては下記を意識しました。

①既存のゾーニングは大きく変更しない
元々キッチンだったところはキッチン、水廻りは水廻りと向きや使い勝手は変更しますが、既存のプランも理にかなっていたことから尊重し、大きな変更を行うリスクを抑えています。窓の位置なども、サイズや開き勝手は変えてますが、基本的に同じ位置としています。

キッチン(既存)
キッチン(改修後)

②耐震要素は既存のままで、プランで工夫をする
筋交いなどのプランニングの制約となるものも、あえてそれありきでプランで工夫することにしました。設計期間が短く、構造計算を行う余裕がなかったため、ポジティブに捉えることで結果としても満足いくプランになったと思います。

筋交い(既存)
筋交い(改修後)

③細かく仕切らない
築年数の古い部分に関しては、柱・梁がしっかりしており、一般的な和室と比べてもひとまわり大きかったので、そのおおらかさをなるべく活かして細かい間仕切りがない(ほぼワンルームのような)空間にしました。ただし、だだっ広くはならないように、フローリングの床と同じレベルに畳を設けて変化をつけるようにして居場所にバリエーションを持たせています。

和室(既存)
和室(改修後)

3.構造躯体について

母屋の解体時

解体する前にある程度、柱位置や筋交などを予想していますが、改めて確認し必要箇所は大工さんとも相談して補強や入れ替えをします。建物のコーナー部分に柱を追加したり、水廻り部分の大引きが腐食していたので交換するなど、解体してみないとわからない部分も多々あるため、前回お話ししたように不測の事態にも対応できる予算を組んでおくことが重要です。また、補強を行ったのは平家部分のみで築年数が古い箇所に関してはそのままにしています。100年も前の、石場建ての上に直接柱が乗っている伝統工法と呼ばれるものでしたので、補強を入れると逆効果になるためです。

石場建て(既存)
平家部分の腐食箇所

また、平家部分が奇跡的にギリギリ新耐震の建物であったため、不本意ながらこの部分のみでローンを組んで工事を行うということも頭の中では想定していました(結果問題なく今回工事の範囲で組めましたが)。そういうオプションを考慮するうえでも、築年数などを事前に把握しておくことは基本です。
構造躯体がどうなっているか実測調査をもとに判断する必要があるので、柱や梁の太さ、基礎、屋根の状態、増改築の有無などの情報収集は古民家選びの重要な要素のひとつです。適切な構造補強を設計から行う時間的・予算的余裕があれば良いですが、そうでない場合が多いため、これまでの地震に耐えてきた実績や前述の情報をもとにリスクをどこまでとるか決断します。

4.断熱気密について

断熱気密をしっかりと行うため、屋根と柱・梁のみを残すスケルトンにまで解体しています。
解体時の不測の事態は床の大引きを全て交換したことです。元々は既存利用を考えていたのですが、断熱材の厚みや気密の施工を考慮すると交換するのがベターであったためです。

床の断熱材
壁の断熱材

断熱性能の決め方に関しては、地域区分にしたがってどこを目指すかを設定します。改修工事のため厳密な計算や性能を求めることは難しいですが、使用する断熱材やサッシの性能をもとに目標値を設定します。

地域区分

丸森町は地域区分4、その中で断熱等級6近辺を目標値として各箇所の断熱材やサッシを決めていきました。この数値はUa値(外皮平均熱貫流率)といって、外気に触れる壁や屋根、窓等の開口部から室内の熱がどのくらい外へ逃げやすいかを数値化したものです。値が小さいほど性能が良いことを示します。省エネ基準が0.75、それに対して0.34を目指すため、以下のような断熱材と厚みを設定し、サッシもトリプルガラスを用いています。

床断熱材:押出法PF断熱材3種aD(λ=0.022) t=125mm
壁断熱材:高性能GW(λ=0.035) t=120mm
天井断熱材:高性能GW(λ=0.035) t=240mm

こういった数値で表すしか共通の言語がないのですが、この目標値を決めるにはその空間を実際に体験するのが一番手っ取り早いです。ですので、私は自宅を設計事務所としてのショールームとして扱い、移住を希望されている方に体験して頂けるようにしています。既存部分もあるため、その違いがよく体感できるようになっています。実際に体験してもらい、その性能をそのまま部分改修で用いた事例もあります。

部分改修の事例:古民家レストラン Es 個室

設計に関して細かいことを語りはじめたら永遠と続いてしまうため、今日はこのくらいで。
次回も自宅案内を続けていきます。

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