【レビュー】『遠い1点と勝利』~第15節ファジアーノ岡山 VS V・ファーレン長崎~

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 岡山県に緊急事態宣言が発令。県からの要請により、無観客で行われた。ホームの後押しがない状況になってしまったが、スタジアムに集まった170枚の応援メッセージがキックオフ前の選手の背中を押す。ファン・サポーターの姿は見えないものの、期待に応えるべく、2試合ぶりのホームゲームに臨んだ。


スタメン

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ファジアーノ岡山
・フォーメーションは4-4-2。
・4試合連続でメンバー変更は無し。
・ベンチのFW山田恭也、MF野口竜彦、MF宮崎幾笑の若いアタッカーが試合の流れを変える働きができるか。

V・ファーレン長崎
・フォーメーションは4-4-2。
・松田浩監督のゾーンディフェンスを浸透中。
・MFカイオ・セザールとFWエジガル・ジュニオを中心に、能力の高い選手が揃う。
・ベンチには、FW富樫敬真、FW玉田圭司らの実力者が控える。


サイドに追い込むプレス

 岡山は、最終ラインの形を変えない長崎のビルドアップに対して、2トップとボールサイドのSHで規制をかけていく。中央を使わせたくないため、FW山本貴とFW川本梨誉がボランチへのコースを背中で消しながら、CBに寄せていく。

 プレスを受ける長崎はSBを出口に。岡山のブロックの外から第一ラインの突破を図る。

 岡山はCBからSBへのパスが出た瞬間に、MF木村太哉やMF上門知樹が素早い出足でプレスをかけて、斜めのパスを遮断。さらに、縦に誘導して、SBで奪う。または、SBが強く寄せて、下げさせる。サイドに追い込むプレスが効果的に働いていた。

ショートパスで岡山を動かすことが難しいと感じたのか、長崎は起点になれる2トップへのロングボールを選択。マークを引き連れながらサイドに流れる。中央で背負いながらのキープ。機動力のあるFWエジガル・ジュニオと高さのあるFW都倉賢、2トップの特徴を生かすボールを出して、岡山のブロックをひっくり返そうと試みる。戦い方の幅を広げてきた。

 

抜け目ない澤田崇に許した失点

 36分、長崎はゴールキックの競り合いでファウルを獲得。マイボールにすると、左サイドに展開。少し内側でパスを受けたDF米田がMF上門の寄せよりも早く、大外のMF澤田崇へ縦パス。DF河野諒祐を背負いながらキープしたMF澤田は、サポートに来たMF加藤大に預ける。MF加藤はこれをワンタッチで、サイドに流れるFWエジガルへ。

 展開を読んでいたDF阿部海大がキープを許さず、身体を入れてボール奪取。と思いきや、タッチが大きくなった瞬間を狙われて、押し上げてきたMF澤田に奪われる。体勢を崩しながらも、キープしたMF澤田のパスを受けたFW都倉が相手をかわしてシュート。

 ゴール前で打たれたシュートを防ごうとしたMF疋田優人のスライディングがこぼれ、DF徳元悠平の左足にぶつかったボールが、MF澤田の前に転がり、冷静に沈めた。

 岡山としては悔しい失点。SBを引っ張り出されて空いたスペースにDF阿部が釣り出されたが、対応できていた。FW都倉のシュートにも身体を投げ出して防ごうした。

 しかし、MF澤田の抜け目なさが全てを上回った。FWエジガルが奪われると判断すると、すぐに矢印を斜めに変えて、中央に切れ込んだ。それが、DF阿部からのボール奪取に繋がる。そして、ラストパスを送ると止まることなく、ゴール方向に走っている。シュートのこぼれ球を狙ったポジション取りが、ゴールを呼び込んだ。

 監督が代わっても、重宝され続けた背番号19。先制点をもたらした抜け目なさが、使われ続けた理由であり、彼の真骨頂なのかもしれない。


長崎のゾーンディフェンスを崩すために

 長崎はボールを回す最終ラインに激しいプレスをかけずに、2トップとボランチで四角の防波堤を形成。リトリートしながら、岡山のボール回しを伺う。そんな長崎の守備は、ボールを中心に個人が守らないといけないエリアを明確にするゾーンディフェンスがベース。

 岡山のような前から奪いに行く、プレッシングをベースとした相手ならば、奪いに来たことで空いたスペースを使うことができる。相手が自発的に動くため、自分たちで相手を動かしやすい。

 対する長崎は、4-4-2の陣形を自分たちから崩すことはほとんどない。サイドからの攻撃は、SHとSBがスライドして守る。中央からの攻撃には、奪う力が突出したMFカイオ・セザールを中心にどしり構える。

 そんな長崎の守備ブロックを崩すためには、サイドチェンジと速い攻撃が有効。スライドを間に合わせないようなパス回し、ロングボールで局面を変える大きな展開。奪った後、長崎が陣形を整える前に攻め切る速いカウンター。これらは、あまり刺さらなかった。

 サイドチェンジ後は、ボールホルダーが孤立することが多く、1対2を作られて攻め込めない。長崎のカバーリングよりも岡山のサポートが遅かった。そんな中でも、DF河野はFW川本とワンツーを仕掛けたり、アーリークロスを送るなど奮闘。しかし、パスがずれたり、クロスを跳ね返されてしまう。

 完全に押し込んでしまえば、得点に繋がるようなチャンスはサイドから作れそうではあった。最後の質を高めながら、クロスを上げる前の工夫が必要。理想的なのは、ホーム北九州戦のMF木村のゴールを演出したDF河野のインナーラップのような形だ。

 カウンターも同じ。FWを走らせるも、後ろからの押し上げが遅い。深い位置まで攻め込まれてからのカウンターは、パワーを出すことが難しい。長い距離を走って、ボールホルダーをサポート、追い越さないといけない。やはり、前から制限をかけているため、規制に留まらずに高い位置で奪いたい。高い位置からのショートカウンターなら、よりパワーを出せる。

 相手のプレーを制限することに関しては、高いレベルにある岡山のプレッシング。奪うプレスへと進化できれば、カウンターの威力も高まるはず。


後半は攻勢を強めるも、遠い1点

 57分に、MF宮崎幾笑を投入。右サイドに宮崎(幾)、トップにMF上門を配置。SHが中に入り、SBを外に押し上げる。ゴール前に人数を集めて、厚みのある攻撃を試みるも、中央をさらに固める長崎の堅い守備を崩せない。

69分には、MF喜山康平、DF宮崎智彦をピッチに送り出し、DF徳元のポジションを1つ前に。DF宮崎(智)やDF徳元が上げるクロスは、長崎の高さに跳ね返されてしまう。

 ボールを保持する時間を増やし、MF宮崎(幾)が今までで一番良い攻撃への関与を見せる岡山だったが、長崎は61分にDF鍬先祐弥を投入し、SBを務めていたDF毎熊を1列上げ、76分には187㎝のDFフレイレも投入。守備の強度を上げる。

 81分、岡山のFK。MF白井が蹴ったパスを、DF井上黎生人が倒れ込みながらヘディングシュートを放つが、GK富澤雅也がファインセーブ。このまま長崎が反撃を許さず、0-1で試合終了。

ホームで勝点を得られなかった岡山は順位を17位に落とした。一方の長崎は、監督交代から3試合で2勝1分と勝ち点を積み重ね、順位を7位に上げた。

 

無観客の寂しさ

 「スタンドに人がいない」、昨シーズンに無観客試合を経験していたが、キックオフ前から大きな寂しさを感じた。昨シーズンの無観客試合は、全試合で実施されたいたもの。多くの試合が観客を入れて行われてた中での無観客試合は、非常につらい。

 Cスタで行われるホームゲームは、ファンやサポーターの手拍子と拍手が鳴りやまない。声は出さなくても、相手チームに与える圧力はJ2屈指だと思う。だけど、スタジアムに行くことができず、追いかけるチームと選手を直接的に後押しできない。

 昨シーズンのアウェイ長崎では、大敗したチームに対して何も声をかけられないもどかしさを感じ、リベンジを誓ったホームでは、ファン・サポーターがスタジアムに行くことさえ許されなかった。

 いち早くCスタに行ける日が来ることを願って。

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