【レビュー】『ヘビーメタルのようにアグレッシブで熱狂的な勝利』~第34節ファジアーノ岡山VS町田ゼルビア~

試合結果

2022 J2 第34節
9/4 19:03K.O. @シティライトスタジアム
岡山(2-0)町田
5分 田中雄大
54分 佐野航大

スタメン

マッチレポート

1万人超のサポーターが歓喜。強度で圧倒し続けた90分

岡山の強度が町田を圧倒した。

中3日で町田を迎えたにも関わらず、岡山はエンジン全開だった。コロナ陽性者が復帰する中で、デュークとチアゴが前線を構成する[3-5-2]でスタートすると、相手に襲い掛かる。全体をコンパクトに保ち、奪いに行く姿勢を強く打ち出した。強烈なプレッシャーを掛けて町田を押し込んでいくと、勢いそのままに先制点を強奪する。5分、徳元のロングスローからこぼれ球を拾った河井のシュートはGK、ポストに当たるも、田中が押し込んだ。

不意打ちを突かれた町田は岡山のプレスにさらされながらも、徐々にボールを握る。翁長、平戸、安井が中心になって素早くパスを回し、鄭大世も起点を作って両サイドから鋭いクロスを供給した。しかし、バイスと柳が門番を務める岡山の壁を越えることができない。平戸、太田修、鄭大世が果敢にミドルシュートを狙うも、ことごとくシュートは堀田の正面に飛んだ。

後半は追い掛ける町田が勢いを持って入ろうとしたが、岡山がアグレッシブなプレーでそれを凌駕して打ち消していく。そして、後半開始から10分も経たないうちに追加点を奪う。フィールドプレーヤー全員が敵陣に入り相手のクリアを河野がヘディングし、ボールはチアゴ、デュークとつないで最後は内側に入ってきた佐野が右足を振り抜く。シュートは左スミに決まり、スタジアムを揺らした。

後半も立ち上がりに失点を許した町田は57分に長谷川と山口を投入して[3-4-2-1]から[4-2-3-1]にシステムを変えるも、同じタイミングで本山を入れた岡山の守備強度は全く落ちない。岡山は72分の交代で2トップに入った永井とイグォンが激しくプレスを仕掛けていき、彼らのエネルギーが全体に伝播して一段とギアが上がった。その後も選手交代を駆使して攻守において強度を維持して圧倒し、最後まで試合を支配した。

2020年の開幕戦以来に1万人超のサポーターが集まったスタジアムを熱狂の渦に巻き込んだ。前期に負けたことが記憶から消し飛ぶくらいの完勝は自動昇格圏との勝点差を『5』に縮めた。90分間を通して町田を圧倒し続けた岡山は、リバプールを彷彿させるヘビーメタルのようにアグレッシブなサッカーで夢のJ1昇格へ突き進む。

コラム

導き出した勝利の方程式

今シーズンも残り8試合に差し掛かったところで、岡山が勝利の方程式を導き出した。

第33節・群馬戦、第8節・山形戦(再開試合)、今節・町田戦は先制点を奪うと、守り切って完封での3連勝を達成した。さらに、今季は先制点を奪った試合で負けていない。

もちろん、守備陣の貢献は大きい。堀田、バイス、柳を中心に粘り強く、我慢強く守ることができる守備陣たちは本当に頼もして仕方ない。しかし、全員の守る意識が高いことも無視できない要素である。

今節で言えば、中盤の選手は町田のパスワークに食らいつき、球際を激しく戦った。前線の選手も先発したデュークとチアゴだけでなく、途中出場の永井とイグォンも労を惜しまずにパスコースの限定、奪いに行く守備、プレスバックを続けた。全員がチームのために走る、頑張る、戦うスピリッツを持っているからこそ、組織として守り切る強度が非常に高い。

今節の勝利によって首位の横浜FCとの勝点差は『7』、2位の新潟とは『5』に縮まった。すでに直接対決を終えているため、J1昇格を成し遂げるためには目の前の試合を勝ち続けることが必要になる。「一戦必勝」で臨まなければいけない試合だからこそ、先制点を取って逃げ切る形に持っていけるか、がカギを握ると思う。これからは1試合ごとにプレッシャーが重くなっていくが、勝ちパターンがあるから大丈夫。そう言い聞かせて自信を持って戦った先に、一緒に夢を見たい。

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難波拓未|サッカーライター
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