【勝因】『対策されても凌駕するサカ。格の違いを示す1ゴール1アシスト』~ユーロ2024予選グループC第2節イングランドVSウクライナ~

試合結果

UEFAユーロ予選 グループC第2節
3/27 @ウェンブリー・スタジアム
イングランド(2-0)ウクライナ
37分 ハリー・ケイン
40分 ブカヨ・サカ

スタメン

ユーロ2024予選グループC第2節、前回大会準優勝のイングランドがウクライナと対戦した。イングランドにとってW杯後初のホーム戦であり、ウェンブリー・スタジアムが大観衆に包み込まれる中、ブカヨ・サカが1ゴール1アシストの大活躍でチームを予選2連勝へ導いた。

右ウイングで先発したサカは、ウクライナの徹底したマークに遭った。サカにボールが渡りそうになると、ウクライナの左SBが素早く寄せてまずは縦を塞ぐ。次にアーセナルで共にプレーするボランチのオレクサンドル・ジンチェンコがすぐにカットインのコースを消す。サカはボールを持つときに常に数的不利を強いられた。

しかし、サカはウクライナの厳戒態勢をもろともせずに右サイドを推進していく。タッチライン沿いでボールを持つと、まずは縦に仕掛けるのではなくタメを作り、味方にパスを出す。自分を2選手がマークしているということは、どこかに空いている選手がいるはずで、右インサイドハーフのジョーダン・ヘンダーソンがフリーになることが多かった。サカは左足でボールを扱い相手左SBと正対しながらもしっかりと周りの状況を把握し、チームとして優位に立つべく自分が2選手にマークされる状況を逆手に取るように味方を生かすプレー選択をした。

ボールを持ったサカがドリブルで突破するためには相手2選手を同時に抜かなければならない。しかし、ファーストプレーで味方との連係をチラつかせたことで、サカの後方支援役を担うヘンダーソンのサポートがウクライナの左サイドをかく乱する。サカは相手2選手に対して縦突破、カットイン、ヘンダーソンとの連係プレーという3つの選択肢を突き付けることで、駆け引きで主導権を握った。

状況判断に優れたドリブラーは豊富な選択肢の中から最善の一手を繰り出し、右サイドを制圧した。16分に外を回るヘンダーソンを囮にカットインして鋭いクロスを放り込み、25分には縦へのドリブルを警戒する相手左SBの股間を通して突破してファウルを獲得する。

さらにサカはボールを持っていない状況でも勝負できる選手であり、内側から相手の背後に抜け出すランニングも効果的に織り交ぜて、相手DFに的を絞らせない攻撃を展開していった。

そして37分にサカは右サイドでパスを受けると、ドリブル突破を警戒して寄せ切れない相手2選手を前に左のアウトサイドでボールを半歩ずらす。一瞬の切り返しで角度を作り、左足で鋭いクロスを供給する。きれいな弧を描いたボールはジャンプする相手DFの頭を越えていき、ファーサイドから飛び込んだハリー・ケインにピンポイントで届く。正確な左足のクロスでケインの代表通算50ゴールを演出し、イングランドが先制に成功した。

さらにその3分後だった。タッチライン沿いに張っていたサカが内側に立つ。ジョン・ストーンズからの縦パスを1タッチでフリックし、ボールはケインを経由しヘンダーソンへ。再びヘンダーソンから鋭い縦パスがサカの足元に入ると、ゴールと相手選手を背にした状態から外へのボディフェイクを入れる。相手の逆を取って中へターンすると、左足を一閃。鮮やかなコントロールショットがゴール左スミに吸い込まれた。代表通算5点目は目の覚めるような強烈な一撃で、チームの勝利を大きく手繰り寄せる追加点となった。

相手に対策されても、それを上回っていく。厳しいマークを逆手に取る賢さを出しながら、自身の質の高いプレーを発揮しやすい状況を作った。どんな状況でも自分の力を引き出す術を持っているサカは今季プレミアリーグで12ゴール10アシストの大活躍中。国を背負った試合でも格の違いを見せ、21歳ながら世界有数のウイングへの階段を着実に上っている。


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