【レビュー】『”新しい景色”への挑戦が迎えた残酷な結末』~決勝トーナメント1回戦 日本VSクロアチア~

試合結果

2022 FIFA カタールワールドカップ
決勝トーナメント1回戦
12/5 24:00K.O. @アル・ジャヌーブ・スタジアム
日本(1-1)クロアチア
43分 前田大然
55分 イヴァン・ペリシッチ
PK戦
日本(1-3)クロアチア

スタメン

マッチレポート

またしても立ちはだかったベスト8の壁

“新しい景色”への挑戦は死闘だった。

スペイン戦から引き続き[3‐4‐2‐1(5-4-1)]を採用した日本は、前回大会の準優勝国であるクロアチアを相手に全く引けを取らない。前田大然を先頭にハイプレスを行ったかと思えば、自陣でブロックを構えて迎撃体制を整える。全員が意思統一されており、守備のメリハリをしっかりと付けることで“良い守備から良い攻撃”を展開していく。しかし、そう簡単に攻略できないのがクロアチア。個人戦術に秀でた選手たちが、状況に応じて最適なプレーを選択する。イヴァン・ペリシッチがピッチの至る所に顔を出し、グヴァルディオルが後方から左足で鋭いロングフィードを蹴り込んできた。

日本は長短のパスを織り交ぜた攻撃を受けて、自陣で守る時間が増える。しかし、権田修一やケガから復帰した冨安健洋を中心に身体を張って対応。遠藤航と守田英正がこぼれ球を回収することで徐々にリズムを取り戻すと、待望の瞬間は43分に訪れる。右CKから短くパスをつなぐと、堂安律が左足でクロス。これに反応した吉田麻也がファーサイドで折り返し、最後は前田が押し込んだ。デザインしたセットプレーが奏功し、先制に成功した。

1‐0で迎えた後半、日本は追加点を奪うべく攻勢に出た。しかし、開始直後に鎌田が放ったミドルシュートが枠を越え、セットプレーでも仕留めきれない。すると、痛恨の一撃を食らう。クロアチアがゴール前に躊躇なくロングボールを放り込んでくる中、55分に右サイドから侵入を許すと、デヤン・ロヴレンのクロスからペリシッチに強烈なヘディングシュートを叩き込まれてしまった。

同点とされた日本は、途中出場の三笘薫、浅野拓磨、南野拓実を中心に決勝点を狙うも、決め手を欠いた。1‐1で突入した延長戦でもスコアは動かず、試合はPK戦へ。日本は1人目の南野がシュートを止められると、2人目の三笘も失敗。3人目の浅野はネットを揺らすも、吉田のキックがGKに防がれた。逆にクロアチアは3人がPKを成功させて、勝負あり。

日本はPK戦まで縺れ込む激闘を演じ、“新しい景色”にあと1歩まで迫るも、届かなかった。ドイツとスペインを撃破したチームでもベスト8の壁を越えられず。4年間に及ぶ森保ジャパンの挑戦が幕を閉じた。

コラム

12年前と同様に命運を握ったPK戦

信じられなかったし、信じたくなかった。

2勝1敗でグループリーグを突破した2010年の南アフリカ大会、ベスト8をかけた試合はPKだった。先攻のパラグアイが次々と決める中、後攻の日本は1人目の遠藤保仁が右上、2人目の長谷部誠が左上に決める。そして、迎えた3人目。駒野友一のシュートがバーを叩く。4人目の本田圭佑がネットを揺らすも、相手が全員成功させたことで敗戦を喫した。

12年の年月を経て迎えたカタール大会も2勝1敗でGLを突破し、PK戦が命運を握った。先攻で始まった今回は南野が右下、三笘が左下に放ったシュートが止められる。浅野は右に決めるも、吉田の左下へのキックがストップされた。

延長後半、日本は攻撃にリスクをかけなくなり、PK戦で勝負をつける決心をしたように見えた。しかし、フタを空けると、甘いコースに緩いシュートが連続して飛んだ。「PKを外すことができるのは、PKを蹴る勇気を持った者だけだ」(ロベルト・バッジョ)という名言があるように、外した選手を非難するつもりは毛頭ない。それでも決してうまいとは言えないキックだったし、挙手制でキッカーを決めたところに準備不足を感じる。

2010年に同じ“形”で国として苦汁を飲んだではないか。再びやってきた残酷過ぎる結末が日本サッカーの現在地を決めつけてくるようで悔しくて仕方ない。確実に進化、進歩しているはずなのに。結果が全ての勝負は実に厳しいものである。

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