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'03/大学生/東京

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モーリタニアのプルプル

 特に熱心に書きたいことがあるわけではないけど、深い時間まで寝付くことができなかったので、この文章を書いている。おまけに今は家のお酒を切らしている。家のお酒を切らしているということはつまり、家でお酒を飲めないことを意味する。家でお酒を飲めないということはつまり、実質的に寝るのが不可能であることを意味する。家には業務用のウイスキーとレモンサワーの素があるのだけど、この二つが仲良く揃って空になった。レモンサワーの方は消費が激しいので、まあ納得がいくけど、どうしたことか普段あまり飲

    • 誠実になろう!

       図々しい人になってやろう、というのが大学に入学した当初の目標の一つだった。図々しくて、横柄で、破天荒な人になってやろう。この目標自体考えてみたら図々しいものだけど、もしかしたら共感してくれる人もいるかもしれない。皆さんの周りに図々しい人はいませんか? 図々しい人に振り回された経験はありませんか? きっとたいていの人はあると思います。ありませんか? もしないのであれば、あなたが図々しい人ということになります。  図々しい人はいつだって得をする。というより、相手に損をさせて相対

      • 三島は心のプロテイン

           太宰と三島についての個人的な感想を書こうと思う。すべてを書こうとするとものすごい文量になってしまうので、そしてそれを書くほどの熱量はないので、ここに書くのはほんの一部ということになる。最近、太宰の文章を読んだときに、やっぱり自分はあまりこの人の文章を受け付けないなと思ったので、そのあたりの所感をつらつらと書き連ねるつもりだ。  三島が初めて太宰と対面した際、面と向かって「僕は太宰さんの文学が嫌いなんです」と言い放ったのは有名な話だけど、可能なら僕も腰巾着のように三島

        •  今日は雨降りの火曜日で、低気圧で頭はぐらぐらして、ゼミの発表があって、ヤクルトは雨天コールド負けを喫した。だから悪い一日だったかという別にそうでもなくて、どちらかというと良い一日だった。どのあたりがいい一日だったかと聞かれるとそれはあまりうまく言葉にできないけど、とにかく良い日にだったと思うから、今日はやっぱり良い一日だったのだ。よく、お気に入りの傘があれば雨も好きになる、みたいなことを言うけどそれは詭弁で、雨はいつだって人を陰湿でみじめで暗い気持ちにさせる。だけど、まあそ

        モーリタニアのプルプル

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        • 日常
          8本
        • 小説
          4本
        • 写真日記
          2本

        記事

          「telecine」

           十年前、わたしは恋をしていた。  16㎜フィルムの荒い粒子の向こう側、白くぼやぼやとした世界のなかで、わたしはきみを追いかけていた。  きみと過ごしたのはせいぜい一年と少しで、そのうちの半分はわたしの片思いだったのに、わたしにはそれが、何よりも長く濃い一年だったような、そんな気がします。それはきみと過ごしたからというのはもちろん、わたしがまだ本気でカメラをやっていたからです。あの頃、わたしは夢を追いかけていた。夢を叶えることだけが幸せの在り方だと信じていた。結局その夢は思い

          「telecine」

          依存について

             毎晩泥酔するまで酒を飲む。  さほどの危機感も罪悪感もない。ただ体に悪いという事実は翌朝の目覚めの悪さからもわかっているつもりで、多少は加減しようという気ではいるけど、実際のところ量にまったく変化はない。休肝日もない。そのうち痛風にでもなれば懲りて飲まなくなるだろうけど、そう思えば思うほど、痛風こそが到達点でありその到達点までは飲んでもいいというおかしな解釈になって、むしろ飲酒を促すようだ。  酒の耐久度はおおよそ遺伝で決まると言うけど、僕の場合両親はそれほど酒に強い

          依存について

          「ハッピーライフ」

           部屋のブレーカーが落ちたとき、君は手にドライヤーを握りしめていた。薄闇のフローリングには月明かりがレースカーテンを通して水面のような模様を映している。それは君の足元にも不規則な影を落とす。君はそのままの姿勢で硬直して、影の形を目で追いながらふと、まるで忘れていた遠い記憶を思い出したみたいにふと、自分は何のために生きているのだろうかと考えた。  それはある程度年を重ねてから人並みに考えてきたことのような気がしたが、それほどまで深刻に向き合って考えたのは初めてのことだった。君は

          「ハッピーライフ」

          「よっちゃんの飛行機」

             飛行機が飛んでいた。  胸がすくような清々しい青空の中で、それはまるでおもちゃみたいにちっぽけだった。そこに数百の人が乗っているなんてとても信じられなかった。  その飛行機を無意識のまま目で追っていたのはどうしてだろうか。世界ではぐるぐると常にたくさんの飛行機が飛び交っているはずで、僕の目に入る飛行機も数えたらきりがないほど、そしてすぐに忘れてしまうほどあるはずだった。それなのに僕はその一機の飛行機を吸い寄せられるようにして見入っているのだった。  僕の生まれ育った街

          「よっちゃんの飛行機」

          紫陽花みたいな傘

           小さい頃、街ゆく人々が乱々に傘を差して歩いていくのを見て、それが紫陽花みたいだと思ったことがある。  そう思ったっていうことはおそらく高いところから街を見下ろしていたのだと思うけど、それがどこだったかなんて覚えてないし、まあ別にどこでもいいか、人々はビニールのとか赤いのとか紺色のとか花柄のとかじょうごを逆さにしたみたいなユニークな形のとか、それはそれは個性あふれる傘を差しながら、押し合いへし合いどこどこ街を歩いてた。そしてそれを見てまだほんの五、六歳の幼気な少年は紫陽花みた

          紫陽花みたいな傘

          「初めまして」

           あなたが初めましてと言ったとき、私は意識が散漫になっていて、とりとめもないことをあれこれと考えていた。散漫になっていたと言っても、それは散らかった部屋みたいに無作為なものではなくて、もっと均等に、まんべんなく分かれたものだった。少なくとも私はそう思っていたけど、あなたの目に私がどう映っていたかは知らない。よく夢うつつの狭間で誰かに名前を呼ばれた気がして、きっと私はもう夢の中にいるのだなと思っても、後から人に話を聞くとやっぱり本当に私の名前を呼んでいたらしくて腑に落ちるときが

          「初めまして」

          小泉進次郎と陽気な豚

           ちょうど今帰省しているので、家の近所を散歩してその景色を写真に収めてきた。  知ったつもりでいた家の近所にも知らない道はたくさんあった。街は歩けば歩くほど深みが増すなぁと、感心してしまった。僕はまるで未開の地を探検するみたいな気分で近所を散歩した。  僕は知らない街を歩いて、そこで生活する自分を想像したり、そこで生まれ育つ人と出会うのが好きだ。街には街の表情があって、その違いを見つけるのが楽しい。またところは違えど思わぬ共通点が見つかったりして、それも楽しい。  僕は今回

          小泉進次郎と陽気な豚

          思い出を掘りおこす

           今日の朝、実家に到着した。夏以来の帰省だ。  何の気なしに押し入れを開けたら、もうたまらなく懐かしくておかしな思い出の品が、山のように出てきた。だからそれをちょっとだけ紹介したい。  本当に個人的な思い出の品だけど、少しでも誰かが共感してくれたらうれしい。

          思い出を掘りおこす

          そういえばあの頃、マフラーは絶対のかわいいだった

           さっきすれ違った中学生がマフラーをしていた。  それも一人ではなかった。学校の帰りだろうか、列をなした中学生のうちにちらほらマフラーをしている子がいた。見間違いじゃないかと思ったけど、やっぱりマフラーをしていた。まだそれほど寒くはないだろうにとか思いつつも、冬を待ちきれず張り切ってしまうその姿に何だか無性に嬉しくなる。  マフラーをしている子のほとんどは女の子で、そんな女の子の横で男の子たちはぶんぶんと傘を振り回していて、それもいいよね。僕だっていつの日か学校の帰り道とかに

          そういえばあの頃、マフラーは絶対のかわいいだった

          創造的人生の持ち時間は4年だ

           旅の恥はかき捨てというけれど、果たしてそれと同じだろうか。  東京の恥はかき捨て。  この街では誰も僕のことを知らない。知らない街の知らない角を、一つ二つと曲がってみれば、僕は何者でもない匿名になれる。奇抜なこの街の中で、自分の持つささやかな個性などいったい誰が見向きを起こす? 誰彼と自分は変わらない。自分だけが特別ではない。その当たり前の事実が、ときに心地よかったり、ときに自分を傷つけたりする。  過去の自分が全くなかったことになるみたいで、悪くない。どこに自分はいるのだ

          創造的人生の持ち時間は4年だ