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「初めまして」

「初めまして」

 あなたが初めましてと言ったとき、私は意識が散漫になっていて、とりとめもないことをあれこれと考えていた。散漫になっていたと言っても、それは散らかった部屋みたいに無作為なものではなくて、もっと均等に、まんべんなく分かれたものだった。少なくとも私はそう思っていたけど、あなたの目に私がどう映っていたかは知らない。よく夢うつつの狭間で誰かに名前を呼ばれた気がして、きっと私はもう夢の中にいるのだなと思っても

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「よっちゃんの飛行機」

「よっちゃんの飛行機」

 

 飛行機が飛んでいた。
 胸がすくような清々しい青空の中で、それはまるでおもちゃみたいにちっぽけだった。そこに数百の人が乗っているなんてとても信じられなかった。
 その飛行機を無意識のまま目で追っていたのはどうしてだろうか。世界ではぐるぐると常にたくさんの飛行機が飛び交っているはずで、僕の目に入る飛行機も数えたらきりがないほど、そしてすぐに忘れてしまうほどあるはずだった。それなのに僕はその一

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「ハッピーライフ」

「ハッピーライフ」

 部屋のブレーカーが落ちたとき、君は手にドライヤーを握りしめていた。薄闇のフローリングには月明かりがレースカーテンを通して水面のような模様を映している。それは君の足元にも不規則な影を落とす。君はそのままの姿勢で硬直して、影の形を目で追いながらふと、まるで忘れていた遠い記憶を思い出したみたいにふと、自分は何のために生きているのだろうかと考えた。
 それはある程度年を重ねてから人並みに考えてきたことの

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「telecine」

「telecine」

 十年前、わたしは恋をしていた。
 16㎜フィルムの荒い粒子の向こう側、白くぼやぼやとした世界のなかで、わたしはきみを追いかけていた。
 きみと過ごしたのはせいぜい一年と少しで、そのうちの半分はわたしの片思いだったのに、わたしにはそれが、何よりも長く濃い一年だったような、そんな気がします。それはきみと過ごしたからというのはもちろん、わたしがまだ本気でカメラをやっていたからです。あの頃、わたしは夢を

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