寛大さん、「探究学習」ってなんですか? vol.5 オンラインの学びに関するアンケートの結果を見ながら対話する
「オンラインの学び」に関するアンケート
2021年11月~12月、私たちはタイモブのOB/OGにアンケートを実施しました。テーマは「オンラインプログラムへの参加に関する意識調査」。パンデミックが始まり、気軽な海外渡航ができなくなりました。また、学校向けの探究学習の授業の中でより幅広くグローバルなテーマを扱うといった観点からも、私たちはオンラインでの海外インターンシップや、グローバル探究プログラムを開発し、皆さんに提供してきました。
しかし、オンラインでの学びが一般化しつつある今もよく聞かれる質問があります。それは「やっぱり(オンラインは)リアルには勝てないんじゃないの?」というもの。
2000名ほどのメルマガメンバーとSNS等で呼びかけたところ、小学生から50代まで、56名が回答してくれました。
アンケート結果には前回の記事でも触れましたが、今回は改めて振り返り、当社COOの中村との対話を続けていきます。
今回の回答者の年齢分布は上記の通りで、大学生~30代の社会人までがボリュームゾーンとなりました。
まずは、回答者の傾向を知るために「今興味があること・挑戦してみたいこと」を聞きました。
「若者の海外離れ」が報道されていますが、今回のアンケート回答者は全体的に海外志向が高く、また3割程度の人が国内外の起業に興味を持っているということがわかりました。タイモブOB/OGの傾向を表しているとも言えます。
続いて、これまでに受けたことのあるオンラインプログラムについて聞きました。
上記をふまえて、「オンラインプログラムへの参加を通じて、自分の人生に対する価値観や考え方に変化が起きたことはありますか」と聞いたところ、回答は以下の結果となりました。
84%の回答者が「はい」と答えました。具体的な価値観の変化について、どのような変化があったか聞いたところ、以下の結果となりました。
オンラインプログラムの特性として、これまで海外渡航が前提だったプログラムにも自宅や学校から参加できるようになった点があります。これによって、今までプログラムに参加できなかった層の参加者にも新たな学びの場を提供できるようになったと当社では考えます。
COOの中村はこの結果に対し、以下のようなコメントを寄せています。
「(この調査ではタイモブのプログラムに言及していないものの、)タイモブのプログラムに絞ると、参加者同士が対話する内容が多いんです。その過程で新しく学びたい分野や領域が見えてくるんだと思います。これに興味があったら、この部分も調べてみたいよね、とか。新しい知識を得るだけでなく、興味のある領域が広がったという感覚は、きっと対話を通じて得られる感覚なのではと思います。何かの正解を導き出すために話し合うわけではなく、対話のプロセスそのものでの気づきが得られるんです」
そして、良質なオンラインプログラムに必要な要素を探るために、「参加してよかったと思えるオンラインプログラムに必要だと思う要素」についても聞きました。
これらの結果からは、参加者が自分とは違う価値観・考え方に触れることを重要視していること、自己課題化しやすいテーマであることの重要性が読み取れます。
併せて、COOの中村は「アウトプットの重要性」にも言及します。
「インプットばかりだと結局つまらなくなってしまいますよね。そのプログラムに参加してよかったかどうか、というのは、参加後の行動変容の有無である程度測れると考えています。行動変容を起こしやすくするためのきっかけとして、アウトプットが重要だと考えています。発表の場があったり、あるいは社会になにか発信してみたり、そうした体験によって、プログラムで得た気づきが自分のものになっていく。周囲からのフィードバックなども継続して行動するモチベーションになりますよね。だからこそアウトプット(アクション)まで設計されたプログラムに参加すると、より充実感や自己成長を感じることができるのではないでしょうか」
当社では今後も、プログラムやコンテンツの向上に向けて、こうした意識調査・アンケートを定期的に実施していく予定です。ご協力いただいた皆様、本当にありがとうございました。
正直、オンラインで結果を出すのは難しい。だからこそ問題解決能力が身につく
ー 寛大さん、一緒に今回の調査結果を見てきましたが、どんな感想を持ちましたか。オンラインでの学習はリアルと比較すると学習効率が悪いと考えられがちだと考えていましたが、実際には多くの人がオンラインのプログラムからもたくさんの気づきを得ていることがわかりました。
中村寛大(以下中村):オンラインで「結果を出す」ことが、リアルよりも難しいのは確かだと思うんです。たとえば、リアルな場での体験は、学習者自身のモチベーションにかかわらず、なんらかの変化や影響を与えてくれます。でも、オンラインの学習を通じて自分で何かを掴み取り、アウトプットまで達成するのは本人のモチベーションがないと難しい。サボったり、逃げたりしようと思えばいくらでも手を抜けますからね。逆に言うと、だからこそオンラインの学びはその課題を通じて問題解決する力を育てていけるのかなと思うんです。
もうすこし踏み込んで考えると「オンラインでできる子は現地に行けばもっとできる子」なんです。
僕の知っている例だと、海外のオンラインインターンをしていて現地企業から内定が出た子もいます。さまざまな制約がある中でインターン活動をして、その奮闘ぶりが評価されて内定につながる、ってすごい快挙ですよね。もちろん僕らもサポートするわけですが。
ー どんなサポートを行うんですか。
中村:サポートといってもソリューションやツールを与えることはありません。対話を通じて一緒にいろんなところに寄り道しながら、参加者自身のスタートライン、探究への入り口まで歩いていくというイメージかもしれません。
探究学習で重要なのはテーマ選定だという話をしました。
基本的には「Why」と「Want to」を深めていくなかでその参加者ならではのテーマを見出していきます。一般参加者向けには「生きがい」を考えるワークショップなどを通じて没頭できるテーマを見つけるサポートをしたり、インターンシップの様子を月次で発表し合うミーティングの場を設定したり。
ー 対話を繰り返していくプロセスを通じて、没頭できるテーマを見つけ出すことが、探究的な学習を成功させる上で必須だということですね。オンラインの場合は難易度が高い分、そのテーマを見つけ出すことが最初のハードルなのかもしれませんね。
学校向けのグローバル探究学習プログラム
ー オンラインプログラムから派生して、学校向けのグローバル探究プログラムについてももう少し聞かせてください。2022年度からの新学習指導要領の中で、探究における生徒の学習の姿について以下のように述べられています。
" 事象を自己の在り方生き方を考えながら捉えることで,感性や問題意識が揺さぶられて,学習活動への取組が真剣になる。自己との関わりを意識して課題を発見する。広範な情報源から多様な方法で情報を収集する。身に付けた知識及び技能を活用し,その有用性を実感する。議論を通して問題の解決方法を生み出す。概念が具体性を増して理解が深まる。見方が広がったことを喜び,更なる学習への意欲を高める。"
(引用:高等学校学習指導要領(平成 30 年告示)解説 総合的な探究の時間編 より)
タイモブが提供している探究学習プログラムは、このプロセスを支援するものだと考えていいですか?
中村:このプロセスは探究学習の基本の型だと思われていて、多くの授業で使われていますが、質の高い学びにつなげるために明らかに抜け落ちてるところがあるんです。
ーというと?
中村:図の中だと、探究の過程における②情報の収集と③整理・分析の過程で、どれだけ専門的な視点でアドバイスできるかが問われていると思っていて。多くの場合、ここのプロセスが生徒や学生側に丸投げされているんですよね。
だから、テーマがよくても研究のレベルが上がらず、発表内容もつまらない……。その分野の人にとっては当たり前の情報をただまとめただけ、という成果にしかならない。極端な話、キーワードをGoogle検索して出て内容を資料化しただけ、なんてザラで。分析や考察もないから「ネットに載ってるやつじゃん」という感想しか持たない。
テーマ選定(①課題の設定)は、前述のとおり「自分の中の問い」に出会えるまで徹底的に付き合います。
それだけでなく、その後の②〜④の工程についても、継続的な対話を通じて学習を深化させていくのがタイモブのグローバル探究学習プログラムの特徴ですね。示唆を与え、問いやアウトプットの精度をともに高めていく。
例えばある学校の授業では個人ごとに探究学習の進捗を管理しており、Slackなどのツールで個別にコミュニケーションを取り合いながら一人一人のサポートをしています。単に研究の内容や進捗を追いかけるのでなく、本人と対話しながらその子がそのテーマを自己課題化できているかまで見ていきます。かなり時間がかかりますが、毎回やっています。
ーわぁ、これはすごい。かなり細かくケアするんですね。
中村:こうして様々な問いかけを行い、リフレクションや内省を促していくと、最初は全然ピンと来てなかった子でも「私、これだと思いました!」って気づきを得る瞬間があるんです。
その瞬間のためにやっています。そうなったらもうあとは自走できますから。
ーありがとうございました。
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