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観了『ある男』

完全に引き込まれた。

冒頭から、なんとなくストーリーはぼやっと思い描けるような気がする話なのだが、それにしても引き込まれた。

『実在はどこにあるのか』

肩書や名前、そういう表面のものを剥ぎ取った時、そこに残るのは何なのか。

この話は『ある男の身元調査をする』ストーリーである。
素性のわからない、ある男。
犯罪者なのか、それとも異なる理由があるのか。

誰かが誰かに成り代わりたいと思う時、そこに何があるのか。

この映画へは、窪田正孝さんを検索してたどり着いた。
ガチバンのときに、まずその容姿に惹かれたのだが、その映画での不器用ながら自分を探す姿、というものを丁寧に演じていることに好感を持ったからだ。

今回はわからない過去を持った男を演じた。
見事であった。

主演の妻夫木聡さんは好青年を演じるのに、私の中で定評があるのだが、静かな中に抱える不満、怒り。
そういったものを演じていて素晴らしいと思った。

さて、ストーリーだが、原作は未読である。
しかし、この映画はまるで丁寧にページをめくるように、1ページ1ページ丁寧に進んでいった。

1ページ進むごとに、ある男の真相に近づいていくわけだが、最初に展開を何となく想像したはずなのに、その世界観に引き込まれていた。
完全に集中して見ていた。

人が1人、名前も何もかもなくしたとき、そこに『その人が生きたという証』はどう残るのか。
『生きる』とは何なのか。

深く考える映画でもあった。


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