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映画大好き

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#映画レビュー

『プロミシング・ヤング・ウーマン』を観て

『プロミシング・ヤング・ウーマン』を観て

親友を傷つけた昔の同級生を断罪し、復讐をする物語。元医大生で現在はカフェ店員の主人公をキャリー・マリガンが演じます。彼女といえば『わたしを離さないで』『未来を花束にして』といった社会性のある映画が印象深いところ。聞いたところによると脚本を吟味して出演作を選ぶことで知られているそうです。そうと聞いたらますます放っておけませんよね。

映画は最初から度肝を抜かれます。キャリー・マリガン演じるキャシーは

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映画『サンドラの小さな家』を観て

 観る前に抱いていた期待は、いい意味で裏切られた。『サンドラの小さな家』はDV夫から逃げて棲む家を失った母親が、自力で家を建てようとする話である。筋は知っていたけれど、驚いたのはその強さ。子どもを守りつつ、暴力に怯えながら生きる女性のつらさ、公的支援をなかなか受けられない弱い立場の人たちの今が、画面を通して強く訴えかけられる。

 それもそのはず、本作は主役のサンドラを務めたクレア・ダンが友人の窮

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映画『わたしの叔父さん』を観て

人の善意とはこんなにもあたたかいものなのか、と思えた映画であった。それと同時に人生とはどうしようもないときもあって、優しさがいくつ集まっても越えられないものもあるという、切なさも感じた。

『わたしの叔父さん』は、家族を早くに亡くし、農場を営む叔父さんに引き取られたクリスの毎日を描いている。クリスは若く美しい。大っぴらに将来を望んでも咎められることはないはずなのに、自分で自分にブレーキをかけている

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映画『この世界に残されて』を観て

映画『この世界に残されて』を観て

 『この世界に残されて』はナチスドイツの支配下にあり、約56万のユダヤ人が殺害されたハンガリーの戦後、1948年が舞台である。この年はソ連支配が強まり始めたころであった。ホロコーストの残酷な爪痕と社会主義化前夜の市井の人々が描かれる。

 両親と妹を失った16歳のクララ(アビゲール・スーケ)は、診療で出会った寡黙な中年医師アルド(カーロイ・ハイデュク)に同じ境遇を嗅ぎとり、心を寄せるようになる。彼

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映画『ミッドナイトスワン』(9/25公開)

映画『ミッドナイトスワン』(9/25公開)

 内田英治監督・草彅剛主演の『ミッドナイトスワン』が9/25に公開される。SNSを活用した宣伝員の公募で運良く50人のうちの一人に選ばれ、一足先に鑑賞した。紹介したく、短く記す。

 あらすじはこうだ。新宿のニューハーフクラブで働く凪沙(なぎさ・草彅剛)のもとに、中学生の一果(いちか・服部樹咲)が転がり込む。実の親により傷つけられた少女は自分との折り合いがつけられずにいた。間もなく少女はバレエと出

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映画『ペイン・アンド・グローリー』を観て

映画『ペイン・アンド・グローリー』を観て

 人は、少なくとも私は、落し物をしながら人生を歩いているのかも。何も間違いを起こさない人生、思った通りの人生なんてあるのだろうか。そう考えさせてくれた作品である。

 6月に観たスペイン映画『ペイン・アンド・グローリー』は、『オール・アバウト・マイ・マザー』の傑作で知られるペドロ・アルモドバル監督の最新作。主演はアントニオ・バンデラスで、年を重ねるほどに美しいペネロペ・クルスがまたいきいきとしてい

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映画『レイニーデイ・イン・ニューヨーク』を観て

映画『レイニーデイ・イン・ニューヨーク』を観て

 スクリーンが暗くなってから、ああこのままうっとりし続けたい、映画館よ、どうか明るくならないで、と思っちゃいました。ロマンティックでちょっぴりエゴイスティックな、ウッディ・アレン監督「レイニーデイ・イン・ニューヨーク」。

 大都市ニューヨークの裕福な家庭で育ち、金銭と教育という十分な資産を持ちながら自らを持て余している青年ギャツビー(ティモシー・シャラメ)と、銀行家の娘でジャーナリスト志望のアシ

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