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書きとめておかないと忘れてしまうので

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記事一覧

遠足の思い出

遠足の思い出

先日、宮崎県高千穂町について書いた。
よく大人の女性に「九州でどこか行きたいところある?」と尋ねると、割と高い確率で出る地名である。神話の里、パワースポット、翡翠色の水面をたたえる渓谷でボートを漕いでみたいなどのご意見が多い。私は高千穂町から車で1時間ぐらいのところの出身で、こんなイメージを大人になってから聞いたときには結構へぇー、そうなの?となった。私にとって高千穂は、宮崎には珍しく雪の降るとこ

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エドワード・ケアリー著 『飢渇の人』

『飢渇(きかつ)の人』はイギリス生まれで現在はアメリカで活躍する作家による短編集である。翻訳者の古屋美登里さんのご尽力により日の目を見た、世界初の短編集とのこと。16の作品のなかには、出版が決まったのちに書き下ろされたものもあるそうで、数珠の名作から新作まで読めるとはお得である。

どんな世界へ連れていってくれるのか。少しだけ紹介すると、村に突然現れた緑色の地底人の話(『おれらの怪物』)や、人の髪

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書棚を買うつもりだったのに

新しい書棚を入れるのよと、人に会うごとに自慢げに話してから随分経った。今の書棚が満杯になり、納めるスペースではない天板の上や、足元の床にまで広がりつつあったし、なんせ書籍は毎日のように発売される。これからも良い本にたくさん出会うに違いないから拡張決定と考えた。オフィス用のコピー機は場所を取り過ぎていたので処分し、壁一面の書棚スペースを用意した。書棚について調べ、家具のプロに話を聞き、お目当の品も見

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8月某日 雨ですね

 梅雨の間、降って困るような大雨がないなあと思っていた。今や盛夏をなかったものにし、暮らしを脅かすほどの雨が降り続いている。辟易を通り越して、恐ろしい。被害にあわれた方にお見舞いを申し上げます。
 未曾有の雨は子どもたちの笑い声や日焼けなど夏の体験を奪った。憎いのは感染症もである。管理者たちによる制約がかかるから(ありがたいことなのだけど)、余計にままならない。普段自由に生きているように見えて、実

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8月某日 自動運転

8月某日 自動運転

昨日は裏返しになって、にっちもさっちもいかなくなっている蝉を2匹助けた。自宅に戻っていいことしたなあ、蝉の恩返しなんてあるかしらなんて思いながら雑誌をめくっていたら、沢木耕太郎さんが同じく蝉をレスキューする話をお書きになっていた。うれしいけれど、沢木さんのような大家と似た行動をとってしまって、ああすみません、という感じである。

自動運転(自動運行装置)にまつわる道路交通法が気になっていたので少し

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『スーパーノヴァ』を観て

二日続けて、カラスが蝉を捕食する瞬間に遭遇する。ワシワシした声が急に変調して、ジジジとなって消え去るのってひとつのホラーです。

映画『スーパーノヴァ』を観ました。コリン・ファースとスタンリー・トゥッチのカップルが愛の素晴らしさを音楽のように全身で奏でます。ときに激しく、優しく、哀しさをもって。愛する人のためにできることとは何なのでしょう。答えはなかなか出そうにないけれど、年を重ねたらまた観たいと

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『プロミシング・ヤング・ウーマン』を観て

『プロミシング・ヤング・ウーマン』を観て

親友を傷つけた昔の同級生を断罪し、復讐をする物語。元医大生で現在はカフェ店員の主人公をキャリー・マリガンが演じます。彼女といえば『わたしを離さないで』『未来を花束にして』といった社会性のある映画が印象深いところ。聞いたところによると脚本を吟味して出演作を選ぶことで知られているそうです。そうと聞いたらますます放っておけませんよね。

映画は最初から度肝を抜かれます。キャリー・マリガン演じるキャシーは

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7月某日

昨夜はジャーナリストの江川紹子さんとノンフィクションライターの石戸諭さんの対談を視聴した。短い休憩を挟んで3時間、ほぼぶっ通しの濃密な時間であった。ともに新聞記者出身であり、今の報道に憂いをもつお二人である。首相会見や数々の取材現場に置かれる記者の現状について、思うところを自由に言い合っていた。報道の現在地を少し垣間見れたように思う。

もっとも興味をひかれたのは、二人の意見が交差しなかったところ

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7月某日

運転免許証の更新に行く。1時間ほどの講習を受けた。運転は決して上手といえない身分なので、ありがたい。交通安全と一言ではいうが範囲は広い。講師は1時間という短い間に、最近の傾向から地域の特例、近年改定された道路交通法について、コンパクトに伝えてくださった。前のめりなほどに早口で、かつマスクをしているので語尾が聞き取りづらいのではあるが、重要性はひしひしと伝わってくる。間に10分の動画も挟みながら、な

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7月某日

子どもが2歳ぐらいの頃。先生との連絡ツールであるお帳面にこう書かれた。「靴を揃えていました。物を大切にする心が育ってきていますね」。保育士の先生のご指導をありがたく感じると同時に、生き物っていうのはそういう力を少しずつ身につけながら人間になっていくのかと感心した。物を大事にするのは人として基本でもある。よし、よし、ふふふと思ったものだ。
 
あれから数年。子どもの机は物であふれている。椅子の下にも

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7月某日

扇風機を買いました。デザイン性と機能性に優れたあのカッコいいの、と言いたいところだけど、予算の都合もあってそちらは泣く泣く見送りました。

あまりにも暑いので今晩使いたくて、家電店で買うことに。ピンキリな扇風機がずらーりと並んでおりました。両サイド2列が2つあったのでざっと40台はあったでしょう。どこがどう違うのか、素人目からするともう選ぶ基準が価格しかなくて、困っちゃって困っちゃって。

でもし

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7月某日

昨夜、布団に入ると子どもから「生まれてきたときどうだった?」と尋ねられた。産んだときの話だろうと思って、「えっとあのときはね_と伝えたのだけど聞きたかった質問はそうじゃなかったらしい。私が生まれたときどんな気持ちだったか?だそうだ。覚えているわけないんだけど、子どもって面白い。

就職活動中の友人がオンライン面接を初めて受けるというので、微力ながら少しだけ準備のお手伝いをしている。彼はズーム未体験

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7月某日

川沿いのいつもの散歩道を行くと、ちょっと前までたくさんの花をつけていたツツジがしょんぼりしていた。もうすぐ恵みの雨が来るだろうか。

新聞、週刊誌、月刊誌に発表された書評を再録し、本好きにとってはたまらないであろうサイト『ALL REVIEWS』(https://allreviews.jp)。実はこちらのメルマガの巻頭言を1年ほど前から書かせていただいている。現在は5人で週替りで、本にまつわる話な

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