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withコロナ「マスクとメイク」のインサイト ④スキンケアにウェイト

先号リップメイクが出来ないというマスク着用のダイレクトなインサイトでしたが、コロナ影響下の生活者の視点はスキンケアに向いていきます。

「スキンケアにウェイト」の3つのインサイト群~顕在欲求と潜在欲求の仕分け

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スキンケアにウェイトというキーインサイトは3つのインサイト群で成り立っています。
1) マスクでの肌トラブル・・・そうなんだ、マスクって保護するものと思ってたたら、肌トラブルを引き起こすんだ。どんな肌トラブルなんだろう?
2) この際、スキンケア極める・・・メイクが出来なくなって、スキンケアに関心が移った?
3) マスク焼けが気になる・・・夏に向かって紫外線が強くなることの反映?
最初の印象はこんな感じでしょうか?

そんな疑問とか関心をもって、先ずは、既に発表されている関連情報を簡単にチェックしてみましょう。
その目的は顕在欲求(顕在ニーズ)と潜在欲求(潜在ニーズ)の仕分けにあります。

今、市場がすでに気が付いている消費者の欲求は顕在欲求です、潜在欲求は市場が気づいてない欲求。実は顕在欲求か潜在欲求かは消費者のなかになるのではなく、欲求を活用する第三者、そのマーケティングに関わる企業が判定するものなのです。ふだんの会議の議題に上がった、自分たちがすでにオープンにした、いわば、「知ってる」欲求は顕在欲求の箱に入れられます。

インサイトは、潜在欲求をもちろん大事にしますが、顕在欲求だからといって捨て去ることはしません。顕在欲求のなかで未来につながる欲求は、当然キーインサイトにしっかりと位置付けられます。そのキーインサイトは、世界中の企業が目をつけ、もっと大きく育てて果実を得ようとするでしょう。

化粧品メーカーの株式会社シーボンは、マスクとの接触によってニキビや肌荒れが生じるという皮膚科医の話を紹介しています。

カバーマーク株式会社(本社:大阪)は「マスクにメイクがつきにくい“ジェルおしろい”」を発売して、ヒットさせています。

類似品を出してブランド力、流通力で凌駕する、コスト競争を仕掛けるのは競争型マーケティングです。その際の差別化ポイント発見にもインサイトは役立ちます。
しかし、インサイトが活躍する本来の場面は、先だって市場にアクションを起こして先行利益、高いシェア、さらには新市場創造を狙うイノベーティブなマーケティングにあります。

資生堂の「夏のマスク着用に関するインターネットでの意識調査」

6月15日にリリースされた株式会社資生堂の「夏のマスク着用に関するインターネットでの意識調査」では「夏のマスク着用」という限定はありながら
「メイク落ち」「肌荒れ・ニキビ」「マスク焼け」など主要なキーワードが示されています。

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調査での選択肢は、あらかじめ調査する側があらかじめ用意(プリコード)するもので、そのためにみんなで知恵を絞ったり、予備的なヒアリングをすることもあります。(SNSインサイト解析で得られたキーインサイトは定性分析プロセスから生まれていますので、それを仮説段階と位置付けて定量調査に測ることはよくあります。)

定量調査でおよそ上位に来るのは顕在ニーズとみなした方がよく、マーケティングのテーマとするにはさらなる差別化が求められます。
逆に、上の選択肢のなかでは「マスクをするとメイクが決まらない感じがする」「マスクとヘアスタイルのバランスがうまく決まらない」は、資生堂ならではの視点、潜在ニーズと言えそうです。

ちなみに同じ調査を用いた『“マスクヘア”と“マスクメイク”のポイントは「前髪×眉」のバランス』の記事では、使用の減った「ポイントメイクアイテム」の結果が出ています。

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「口紅・リップグロス」を88%の人が減ったと答えています。「ほうべに・チーク」の65%減も大きな数字、コロナショックを最も受けたのはリップメイク系、次いでチーク系商品と言えます。

「スキンケアにウェイト」に連なるインサイト
~価値マップ

さて、キーインサイト「スキンケアにウェイト」に戻るとしましょう。
「欲求カード」を含めた価値マップは以下です。

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この価値マップを眺めて、あなたの脳内のアイデア起動装置は、どの情報に目をとめ、どんなインスピレーションを生んだでしょうか?
一つでもあれば、それは「インサイト」ですし、「欲求カード」をあなたならではのキーインサイトに昇格させても構わないのです。

1) マスクでの肌トラブル・・・すでに顕在欲求のこのインサイト群では、「痛い」ほどの肌荒れ、「ドロドロ」状態などの肌トラブルがリアルに浮き上がってきます。
私が注目したのは「表情筋も死んでいる」という発言です。マスクをすることで表情が失なわれている。直接的には表情筋体操のニーズもありそう。
「表情が失われる」インパクトは化粧品市場のみならずオンラインビジネス市場、飲食市場、アミューズメント市場などでもチェックしておいた方がいいインサイトでしょう。「表情の豊かさ」の価値が浮上する時代が来るかもしれません。

2) この際、スキンケア極める・・・マスクにファンデーション、チークが付くから「限りなく薄く」「ノーファンデ」の心理。どうせなら「この際スキンケアを極めてみよう」という欲求、これも、以前からあるスキンケア欲求、素の美しさへのあこがれが、マスク着用を機会に刺激されていると見てよいと思います。
「すっぴん磨くのも限界」と「素の美へのあこがれ」、両者の間に将来の新市場の余地がありそうです。

3) マスク焼けが気になる・・・顕在化している「マスク焼け」。「マスク焼け」の先には、「問題はメイク崩れとマスク焼け」の発言が示唆するように、メイク崩れとセットでのソリューションが待たれています。


これまで4つのキーインサイトそれぞれを読み解いて来ました。次号は、このテーマの最終回です。マスクとメイクのインサイト、全体の価値マップをまとめとして提示します。
(金、富樫)

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