withコロナ「マスクとメイク」のインサイト ③リップメイクが出来ない
時短メイクの次、3つ目のキーインサイトはリップメイクが出来ない。
ん~と考えてしまいますね、これってインサイトなの?「マスクをつけると唇が隠れるからリップメイクしても意味がない」なら分かり切ったこと。
実はこの言葉の「出来ない」というのが鍵で、「したいけど出来ない」という消費者の欲求(もとはマスク・メイク関連ツイート、4月17日~5月18日81,162件から)に基づいています。
インサイトは消費者の本音を観察者の洞察(インサイト)をすることによって得られるとおよそ定義されています。
そのインサイトを見て新しいアイデアが生まれるならインサイトというのも、インサイトかそうではないかを結果論的に判定する定義です。
「マスクをしてるのでリップメイクが出来ない」⇒「マスクをしてもリップメイクが出来る」がこのインサイトの究極的に示唆するアイデアなのです。
ただ、ホームランを打ちたい⇒ホームランの打てるバットを作りましょう、とはいかない。
そんなこと言われてもでしょうから、このキーインサイトをもう少し詳しく見てみましょう。
キーインサイト③リップメイクが出来ない、を関連インサイト群で読み解く
リップメイクができないは「食事の時に気になる」「メイクのモチベーション下がる」「ネイルとヘアに凝る」の3つのインサイト軸に分かれています。どれか、あなたのアイデアを刺激する軸がありましか?
私はまず「ネイルとヘアに凝る」に目が行きました。そうか、そこに行ったかという感じです。コロナ禍で、マスクをして「アイメイク」は分かりますが、それだけでは物足りなくて行った先が「ネイル」と「ヘア」。
『マスクで女性のメイクはどうなるんだろうね?』
『けっこうネイルとヘアにシフトしているみたいですよ』
『どうして?』
『マスクでリップメイクのモチベーションが下がって、おしゃれ欲求がネイルとヘアに向かったようです』
悪くない会話ですね。
『リップメイクのようなネイルメイクはありってこと?』
アイデアはもうすぐ近くまで来ています。
「リップメイクが出来ない」に連なるインサイト
~価値マップ(欲求カード付き)
これは、キーインサイト「リップメイクが出来ない」に連なるインサイトを整理したものです。
青地枠のカードは「マスク メイク」で検索したツイートを要約したもの、「欲求カード」と呼んでいます。ツイッターにあふれるつぶやきがイメージ出来たでしょうか。質問に答えるでもなく、自分語り、他の人にどう思われるかというバイアスが最も低いSNS、ツイッターならではの発言です。
上の図の構成について。
ふつう人は左から右に見ますので、キーインサイトから出発して関連する「欲求カード」を連ねたように見えますが、実際には逆。「欲求カード」を整理・集約しながら、結果的にキーインサイトを発見していきます。
作業的には右から左への流れ、この解析図は「価値マップ」と言って、KJ法の考え方がベースになっています。
(81,162件のツイートから1,000件前後のインサイト素材となるテキストを抽出、約80枚の「欲求カード」に変換します。)
食事の時に気になるは、「マスクを外していつものようにメイクしていない唇が気になる」もしくは「ノーメイクの唇が気になる(恥ずかしい)」「リップメイクの崩れが気になる」がこの部分のニーズです。
例えば『ノーメイクのようなマスク崩れしないリップメイク』『リップ崩れしないマスク』がダイレクトな商品アイデアとして浮かびます。
また『飲食店の化粧室のしつらえ、お店に入って化粧室にまず直行できるサービス』などUXにもヒントを与えてくれます。
「メイクのモチベーション下がる」~メイク市場全体の危機
この価値マップを見ると「食事の時に気になる」と「メイクのモチベーションが下がる」「ネイルとヘアに凝る」は別の塊りであることが伝わってきます。
そして後者の起点は「メイクのモチベーションが下がる」(だから「ネイルとヘアに凝る」)にあることが理解できます。
マスク→リップメイクが出来ない→メイクのモチベーションが下がるは
化粧品全体に大きな影響を及ぼすインサイトです。その心は「リップメイクが出来なくてしょぼん」というつぶやきによく現れています。私はメイクのモチベーションがリップメイクにあることを知りませんでした。
ネイルとヘアに移行するというのは消費者が見つけた一つの答えです。
しかし、メイクの動機が消失した状態を市場の大きな問題としてとらえ、
メイクの楽しさをどこでどう作り出していくか。
メーカー、流通に携わる人の知恵の絞りどころではないでしょうか。広告をはじめとする様々なプロモ―ション、PR、店頭、アプリなどでの情報提供、新商品開発・・・さまざまな施策が考えられます。
次回はいよいよ最後のキーインサイト④スキンケアにウェイトです。スキンケアへの関心増は売れ行きにもすでに表れているようです。次の一手のために、その心(インサイト)を覗きます。
(金、富樫)
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