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なぜプロジェクトマネジメントが機能しないのか 43 アジャイルの条件①

日本で最初の民間シンクタンクで、プロジェクトマネジメントのコンサルタントとして、ある時はPМ、ある時はPМОとして、お客様と問題解決に取り組んでいます。本記事では、まだPМBОKには書かれていない暗黙知を言語化し、形式知としてお伝えすることにチャレンジしてみようと思います
マガジン:https://note.com/think_think_ab/m/m0e070db46016

アジャイルとウォーターフォール

これまで、本マガジンでは、
プロジェクトマネジメントが機能しない理由について
ウォーターフォールモデルを前提に考察してきましたが、

最近は、あらゆる場面で、
アジャイル開発の採用や試行を見かけるようになったため、

アジャイルとウォーターフォールを比較しながら、
その適用にあたっての留意事項について考察してみます。

予測可能性と変化可能性

プロジェクトは、
本マガジンで扱っている「不確実性」との観点から、
スコープの予測可能性と変化可能性の2軸で分類されます。

スコープの「予測可能性」:スコープを決められるかどうか
スコープの「変化可能性」:スコープが変更されるかどうか

実は、
予測可能性が低く、スコープが決められない場合
QCDはプロジェクト期間を通して、バランスすることはありません。

これらはいわゆる探索型のプロジェクトで、例えば、
新しい製品や技術の開発、宇宙事業プロジェクトなどです。

また、
変化可能性が高く、スコープの変更が前提の場合も、
QCDはプロジェクト期間を通して、バランスすることはありません。
(もう少し正確にいうと、一時的にバランスする瞬間はあります)

これらは外部環境の変化影響を強く受けるプロジェクトで、
例えば、消費者の嗜好の影響を受ける季節商品の小売やアパレル、
天候に左右される農業や建設、イベント運営プロジェクトなどです。

結果、
QCDがバランスするプロジェクトは、
予想可能性が高く、変化可能性の低いプロジェクトのみ
で、

ウォーターフォール型のマネジメントが適用できるのは、
このタイプのプロジェクトのみとなります。

ただ、
投資効果から(一か八か的なプロジェクトは非効率なので)、

実は、世の中のほとんどのプロジェクトは
予想可能性が高く、変化可能性の低いタイプにあたります。

一方、
アジャイルは、
「スコープが決められない」、「スコープが変化してしまう」、
 との状況への対応を目的としているため、

アジャイルには、
そもそもQCDバランスとの概念はなく、
プロジェクト全体のQCDバランスを支えるプロセスや手法はありません。
(もう少し正確には、スプリント内のQCDバランスの概念はあります)

変化の外部要素と内部要素

前述までの内容によれば、
アジャイルを適用すべきプロジェクトは比較的、特殊な条件となりますが、

最近では、
条件を気にすることなく、アジャイル採用の雰囲気と流れになっています。

なぜでしょうか。

それは、
外部の変化要素と、内部の変化要素という、
本来は区別すべきことを、区別せずに扱ってしまっているためです。

変化要素は、
その所在によって外部要素と内部要素にわけられます。

外部の変化要素:
 市場の変化や、規制の変化、技術の変化などの外部要素。
 プロジェクトマネジメントが影響を及ぼせないもの。

内部の変化要素:
 顧客やユーザ部門の要件決定の遅延や見直し、
 採用する技術の組み合わせによる実現性の不確かさ。など、
 プロジェクトマネジメントが影響を及ぼせるもの。

前述のうち、内部の変化要素は、
プロジェクトマネジメントが影響を及ぼせるものであり、

本来、
プロジェクトマネジメントを機能せることで
スコープを決めることができ、その後の変化抑制できるものです。

いいかえると、
QCDをバランスさせることができるものですが、

それを諦めて、
アジャイルを志向する構造になってしまっています。

では、なぜあきらめてしまうのでしょうか、
また、なぜそのような志向になってしまうのでしょうか。
(次に続くことになってしまいました💦)

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