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なぜプロジェクトマネジメントが機能しないのか 47 再考②

日本で最初の民間シンクタンクで、プロジェクトマネジメントのコンサルタントとして、ある時はPМ、ある時はPМОとして、お客様と問題解決に取り組んでいます。本記事では、まだPМBОKには書かれていない暗黙知を言語化し、形式知としてお伝えすることにチャレンジしてみようと思います
マガジン:https://note.com/think_think_ab/m/m0e070db46016

目的の統合

第46回では、
プロジェクトマネジメントに関する次の3点について再考いたしました。
凡例:≠ これまでの一般的な(PMBOK的な)解釈、= 再考後の解釈

プロジェクトマネジメントの目的
≠ プロジェクトの効果的、効率的な遂行
= QCDバランスの確保(すなわち不確実性の早期排除)

QCDバランスのQ
≠ 品質
= スコープ(品質を含むS(スコープ))

S(スコープ)の意味
≠ ユーザのやりたいこと
= ユーザのやりたいこと ✖️ 実現性のあるもの

今回は、
3つのうちのひとつ目をもう少し深堀し、プロジェクトの「固有の目的」とプロジェクトマネジメントの「普遍的な目的」との関係(目的の統合)について、言語化してみます。

PMBOKでは、
PMBOKの知識をプロジェクトの目的や状況にあわせてテーラリングするように説明されています。すなわち、PMBOKの知識(=道具)は提供するので、あとはプロジェクトの目的や戦略にあわせて自由に使ってください。という提供の仕方です。

ところが、
実はプロジェクト固有の目的によって知識(=道具)の使い方は変わりません(テーラリングは不要なのです)

なぜならば、
プロジェクトマネジメントの目的は常に「QCDバランスの確保」という「普遍的な目的」(第46回参照)であり、その達成を通してプロジェクトの「固有の目的」を支える関係にあるためです。(プロジェクトとプロジェクトマネジメントの目的が異なることは第46回参照)

補足すると、
プロジェクトの「固有の目的」によって、PMBOKで説明されているプロジェクトの効果的・効率的な遂行や、コミュニケーション管理、リスク管理などが、「QCDバランスの確保」よりも優先されることはありません。「QCDバランスの確保」を最優先したうえで、プロジェクトの効果的・効率的な遂行や各種管理に意味があるのです。

逆にいうと、
PMBOKのそれぞれの知識やフレームワークがプロジェクト固有の目的を直接的に支える(寄与する)ことはなく、必ず「QCDバランスの確保」の達成を通して、間接的にプロジェクトの「固有の目的」を支える(寄与する)関係にあります。

つまり、
プロジェクトマネジメント(=PMBOKの知識やフレームワーク)の目的は、プロジェクトの「固有の目的」によらず、常に「QCDバランスの確保」であり、PMBOKの知識は常に「QCDバランスの確保」を目的として扱われるべきものなのです。

このように、
PMBOKでは、プロジェクトマネジメントの「普遍的な目的」とプロジェクトの「固有の目的」の関係性の説明、言い換えると2つの異なる目的の統合部分の説明が不足しています。

そして、
このことがPMBOKの知識やフレームワークの扱いを深く理解する際の障害となり、多くのプロジェクトにおいて、プロジェクトマネジメントが機能しない根源的な原因になっています。(理解が浅いと、普遍的な目的である「QCDバランス」にこだわるマインドセットも浅くなり、せっかくの道具を目的に合わせて正しく使えません)

「QCDバランス」と「効率」

では、
プロジェクトにおいて、「QCDバランスの確保」を損なうもの、あるいは脅かすものは何でしょうか。

それは、「不確実性」です。

極論ですが、不確実性がなければプロジェクトマネジメントはいりません。なぜならば、不確実性がなければ、プロジェクトが始まった途端にQCDはバランスし、その後もプロジェクト完了までバランスし続けます。その場合、実はプロジェクトマネジメントが機能しなくても、QCDはバランスしたまま完了します。すなわち、PMBOKの知識がなくてもプロジェクトを無事に完了させることができることになります。

実際のプロジェクトは、
その「1回性(唯一性)」のため「不確実性」がないということはありませんが、定型業務のように同じことを幾度も繰り返す業務には「不確実性」がほとんどありません。そのため、定型業務における要諦は「QCDバランス」ではなく「効率UP」になります。

加えて、補足すると、
定型業務の「効率UP」は、定型業務の固有性に大きく依存するため、実は、PMBOKの知識やフレームワークはほとんど役に立ちません。(→ PMBOKの知識やフレームワークは、非定型業務(1回性業務)のQCDバランス確保のための道具であって、「効率UP」のための道具ではないのです ※)

※:もちろん、PMBOKの知識やフレームワークを参照することで、「非定型業務の場合は、大体こんなことをやるよね」程度の効率はUPしますが、それ以上の効果はありません。

これまでの考察を踏まえると、以下のように再考することができます。
凡例:≠ これまでの一般的な(PMBOK的な)解釈、= 再考後の解釈

プロジェクトマネジメントの目的
≠ プロジェクト固有の目的に依存
= プロジェクト固有の目的に関わらず「QCDバランス」が目的

PMBOKの知識(道具)のテーラリング
≠ プロジェクト固有の目的にあわせてテーラリングが必要
= プロジェクト固有の目的にあわせるテーラリングは不要

PMBOKの知識によるプロジェクト固有の目的の支えかた
≠ 知識がプロジェクト固有の目的を直接的に支える
= 知識はQCDバランスの達成を通して間接的に支える

追伸:抽象的な内容が多くなっており、
   十分に言語化できていない可能性があります。
・〇〇〇の部分が何言ってるかよくわからない。
・〇〇〇はこういう理解でよいあっているのか。
・〇〇〇は間違い。こういうことではないのか。等、
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