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なぜプロジェクトマネジメントが機能しないのか 48 再考③

日本で最初の民間シンクタンクで、プロジェクトマネジメントのコンサルタントとして、ある時はPМ、ある時はPМОとして、お客様と問題解決に取り組んでいます。本記事では、まだPМBОKには書かれていない暗黙知を言語化し、形式知としてお伝えすることにチャレンジしてみようと思います
マガジン:https://note.com/think_think_ab/m/m0e070db46016

「不確実性」に対する2つの戦略

第47回(前回)では、
プロジェクトマネジメントの目的は、プロジェクト固有の目的によらず、「QCDバランス」の確保であること、そして、「不確実性」とは「QCDバランスを損なう、あるいは脅かすもの」であると述べました。

今回は、
その「不確実性」に対する2つの戦略を深掘りして言語化してみます。

「不確実性」に対する戦略には、能動的なプロアクティブ戦略と、受動的なリアクティブ戦略の2つがあります。

■ プロアクティブ戦略 ■

プロアクティブ戦略は、
不確実性に対してプロジェクトが影響が及ぼせることを前提に、「不確実性を主体的に早期排除していく戦略」です。

具体的には、
タスクをできるだけ早く開始するよう計画し、不確実性によるリスクの顕在化タイミングを早め、(お金やリソースのように後から追加できない)時間的バッファを確保することで、プロジェクト全体のQCDバランスを確保しようとする戦略です。

やるべきこと(スコープ)を先に決め、
その後に設計・構築工程をもつウォーターフォールモデルは、この戦略によるモデルです。(不思議なことに、なぜかこうした説明はあまり見かけません。もしかすると、手段の適用方法が主たる論点になると、もともとの戦略は省かれてしまうのかもしれません)

■ リアクティブ戦略 ■

一方、リアクティブ戦略は、
不確実性に対してプロジェクトは影響を及ぼせないこと(すなわち、主体的に早期排除することはできないこと)を前提に、「成行きでの不確実性によるリスクの顕在化を受け入れ、顕在化した結果を踏まえて比較的短い期間(数週間から1ヶ月程度)の計画を繰り返すことで、状況に柔軟に対応しようとする戦略」です。

プロジェクト全体のQCDバランスを志向せず、スプリント毎のQCDバランスを繰り返すアジャイルモデルは、この戦略によるモデルです

どちらの戦略を選ぶかは、
「不確実性」に対してプロジェクトが影響を及ぼすことができ、不確実性によるリスクの顕在化タイミングをできるだ早めに計画できるかどうかに依存します。

いいかえると、
「不確実性」が、プロジェクトの影響をおよぼせるプロジェクト内部のものか、影響を及ぼせないプロジェクト外部のものか、によって戦略を選び、適用するモデルを判断することになります。

ウォーターフォールモデルのタスク配置

ウォーターフォールモデルの前提となる戦略は、
「タスクをできるだけ早く開始し、リスクの顕在化タイミングを早めてQCDバランスを確保しようとする戦略」です。

この戦略を徹底した場合、
WBS上のタスクは全て「できるだけ早く開始」するように配置されます。

ちなみに、
MSPrjectでプロジェクト開始日を指定してタスクを追加した場合、「できるだけ早く」とのタスク属性が初期値となり、自動的にできるだけ早く開始するようにWBSに配置されます。つまり、全てのタスクは自動的にできるだけ早く開始されるようになります。

このことは、
ウォーターフォールモデルの戦略がMSPrjectにすでに実装されており、MSPrjectを使うだけで自動的にWBSに戦略が戦術(できるだけ早く配置)として、織り込まれるということです(全くの余談ですが、せっかくMSPrjectを使っても、タスクの開始日・終了日をいれてしまうと、タスクの自動配置の機能は発動しませんのでご注意ください^ ^;)

一方、
エクセルやパワーポイントによるWBSには、MSPrjectのような機能はありませんので、頭の中で考えて配置しなければなりません。その際、WBSを作成するPMが「ウォーターフォールモデルのもともとの戦略」を理解していなければ、残念ながら、タスクはできるだけ早くに配置されることはありません。

ちなみに、
日本でのMSPrjectの普及率は欧米に比べて20分の1から10分の1といわれています。このあたりにも、プロジェクトマネジメントが機能しない理由が潜んでいるのかもしれません。

みなさんは、
エクセルやパワーポイントでWBSを作成する際、全てのタスクについて、できるだけ早く開始できるよう考えておりますでしょうか。

今回の考察を踏まえて、
プロジェクトマネジメントを再考すると以下のようになります。
凡例:≠ これまでの一般的な(PMBOK的な)解釈、= 再考後の解釈

プロジェクトマネジメント実施にあたっての論点
≠ モデルありき(どのモデルを使うか、いかにモデルを適用するかが論点)
= 戦略ありき(戦略はどうするか、前提の不確実性の条件はどうかが論点)
 ※モデルはその後。

ウォーターフォールモデルとは
≠ 全体計画に基づいてプロセスを順番に推進するモデル
= 不確実性に対するプロアクティブ戦略の実践的モデル

ウォーターフォールモデルにおけるタスク配置の考え方
≠ 成り行き(経験に依存。留意はタスクの先行関係程度まで)
= できるだけ早く(まずは早く。先行関係やリソース制約は後)


追伸
:抽象的な内容が多くなってきており、
   十分に言語化できていない可能性があります。
・〇〇〇の部分が何言ってるかよくわからない。
・〇〇〇はこういう理解でよいあっているのか。
・〇〇〇は間違い。こういうことではないのか。等、
お問合せは、コメントかこちら(DМ)から頂けると幸いです。
お気軽にどうぞ。

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