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相貌失認症だけど販売員で1位 致命的な欠陥を抱えながらも、普通に働いている人は存外多い
こんばんは、経営者のこうたです。
世の中には様々な病気があり、多くの人が何かしら抱えています。
病気そのものも大変ですが、何よりも辛いのは周囲に理解されにくいことです。
うつ病はその典型例で、現代人に決して少なくはありません。
私の弟の1人は色弱です。
色弱の世界って説明されても、「大変だな」としか思えないくらいに複雑な世界をしています。
私もいろいろと抱えていますが、その中でも少しレアで誤解されがちな症状なのが、『相貌失認』という認識機能障害です。
1.相貌失認症とは
目・鼻・口などのパーツや輪郭は認識できるが、それらを一つの顔として認識・区別・記憶ができない症状のこと。
程度も振り幅があり、近しい人なら認識できるようになることもあれば、家族すら認識できないこともある。
私は幸いにして近しい人なら認識できますが、それでも髪型が変わったり急に現れたりしたら気づきません。
この症状を抱えている人に共通しているのは、顔以外の情報(話し方、服装、声質など)で判断していること。
例えば新宿の喫煙所で近しい友人と待ち合わせをしている時、普段の髪型と歩き方が同じ人を探します。
「あいつかな?」と思ったらジッと見つめ、答え合わせとして相手がこちらに気づいたら、同時に気づいたかのように声をかけるのです。
でも髪型が違うと、ただでさえ確証を持てずに相手の反応を見るのに、歩き方や背格好は似ているけど微妙に違う気が……となります。
ゆえに、外でたまたま家族とすれ違っても、その場にいるとは思っていないので、相手から声をかけられないと気づきません。
なんとなく似ているなと思っても、他人の空似はけっこういる。
だからまたジッと見つめ、相手がこちらに反応したら確信を持つ、という流れが必要になるのです。
こちらに気づかなかったら、私はなかったことにしてスルーします。
2.自分も誤解していたほどに分かりにくい
実は自分が病気だと気づいたのは、つい先月なんです。
上の記事では、「人の顔を覚えるのが苦手」という認識だったほどですからね。
たまたま病院で雑談として話したら疑いがあると言われ、詳しく調べてみたら当たりだったという流れです。
『人の顔を覚えるのが苦手』って、『方向音痴』と同じような感覚でした。
当人の私ですらこの認識だったので、一般の人の大半も同様の認識をしていることでしょう。
人は、理解できないことに理解を示すことができません。
特に視界に映る世界の差異なんて、一生目にすることができないのですからしっくりこなくて当然です。
弟の色弱ですら、兄の私もいまだにしっくりきていないほどですし。
比較的分かりやすい耳が聞こえない、話せないという症状ですら、「大変だな」よりも「面倒だな」と思われることのほうが多い。
ツラさは痛感しないとツラさとして認識されない。
今で言えば、喘息の咳も同じですね。
ツラいのに、コロナを想起させて敬遠されますから。
3.相貌失認症と販売員
人の顔を覚えられないのに接客業ってできるの? と思うことでしょう。
はい、メチャクチャ苦労しました笑
全国一位をとったのは量販店で働いていた時なのですが、接客中、確認のために30秒でもその場を離れると顔を忘れます。
同じ場所にとどまってくれていればいいのに、たいていはフラッと移動していますからね。
だから私もフラッと歩いて、お客さんが私に気づいて私も気づくなんてことを繰り返していました。
そして小さなお店で働いていると、私を気に入って再来店してくれることが当たり前になります。
お客さんは私のことを当然覚えてくれているのに、私は全く思い出せない。
顔が思い出せないので、接客した内容も思い出せない。
「多くのお客さんを接客しているのでごっちゃになってしまって……」という苦しい言い訳をして、お客さんから情報を引き出します。
基本的に接客した内容は全部覚えていますから、断片的にでも情報をいただければ引っ張り出し、その時に雑談した内容も思い出してなんとか事なきを得る、というのが一般的な流れ。
特にお年寄りは服装も話し方も雑談の内容も似ているので、本当に苦労しました。
ただ、苦労したのは事実ですけど、商品を売ること自体には関係してきません。
そして相貌失認症のおかげで、私は全国一位になれたのです。
4.情報を得る癖が相手の機微を察する能力に進化した
我々は記憶力が低下したから顔を覚えられないのではなく、認識阻害を受けているから記憶ができないだけ。
記憶力そのものは正常です。
私は相手を覚えるためにしっかりと顔を見ます。
一つでも多くの情報を得て記憶に残すためです。
そしてその情報の一つに、『表情』があります。
実は相貌失認症は、表情が変わるだけでも他人と認識してしまいます。
だからなのか分かりませんが、私には表情の変化を見るたびにそれぞれの顔に見えて、その表情のどれかがその人の本性に思えてしまうのです。
同じ笑顔にしても、度合いや状況によって異なります。
先輩といる時の笑顔、後輩といる時の笑顔、プライベートの時の笑顔、仕事中の笑顔と、全部全く違うのです。
このスキルを鍛えたことで、クローズ中に引っかかった反応、気に入った反応、口では前向きだけど建前を言っている時の反応、ごまかしている反応などが分かるようになりました。
近しい人なら表情に加え、声質や話し方でさらに細かく分かります。
相手の嘘や建前、好みが分かるのですから、販売員としてこれほどのチート能力はありません。
余談ですが、この影響で私は相手の顔をガン見する癖があります。
本来は褒められた行為なのですが、女性が相手だと恥ずかしがられることがしばしば。
なので友人や家族が相手だと目線を逸らす癖ができてしまいました。
今から友人になる人は、その変化を楽しみに仲良くなってください笑
5.デメリット
そもそもとして、私が相貌失認症だと知ったのはついこの間。
販売員の時は相貌失認症の認識はありませんでした。
ただ単に顔を覚えるのが苦手だから、なんとか覚えるコツを身につけようと思っていただけ。
言ってしまえば、相手の表情を読み取るというのは本来備わっていた癖でしかなかったのです。
自分は病気なんだと思っていたら、チート能力に昇華させることはなかったかもしれませんね。
「病気だからしょうがない」は克服の妨げにしかなりません。
実は私が社会人2年目くらいまでの口癖だったのが、「人類の9割は嫌い」でした笑
裏の顔がない人間なんていません。
でも話すと、私には裏が見えてしまうのでどうしても距離を置いてしまう。
つまり、人間が怖かったのです。
プラスよりもマイナスが目立ちますからね。
余談ですが、上記の記事で好みの女性は一瞬で覚えられるとあります。
これは顔を覚えているのではなく、特徴的かつ好みの顔のパーツを記憶しているから覚えている、とのことです。
私はもともと顔の造形で人を好きになることがないです。
だからいいなと思う女性に対しては、「表情が好き」という言い方をいつもしていました。
なので一般的に人気のある女優さんも、実は皆さんほど好きになることがあまりないんですよね。
いいなと思う女性を周りには、「悪いとは言わないけど言うほどじゃない」といつも言われます笑(失礼な話ですが)
これはたぶん、一生理解されない感覚でしょう。
6.普通に働いているからたいしたことないわけじゃない
色弱にしても相貌失認にしても、先天性なら自ら教えなければ露呈する病気ではありません。
「ちょっとおかしいな?」と思っても、『不注意・緊張感がない』で片付けられてしまいます。
まあ先天性だと本人ですら気づかないケースもありますから、仕方がないのかもしれません。
弟の色弱も生まれてからずっと変わった景色なので、そういうものだと思い込んでいましたから。
当時家族は、幼かったこともあって「頭が悪いな」で一蹴していました。
しかし、上述した記事のように弟の努力は凄まじいものでしたし、私も本当に苦労した病気です。
うつ病だって裏では苦しみながらも、決して表に出さず一生懸命な人もたくさんいます。
喘息だって好きで咳をしているわけじゃありません。
正直、症状そのものの理解は不可能です。
ですが苦しんでいる人は、ある程度慣れて克服して考えて、今そこで働いているのです。
特別視する必要はありません。
そういう人も世の中にいるとだけ分かってください。
そして同時に、苦しんでいる人。
周りに迷惑をかけているのであれば、その事実は受け止めましょう。
自分の欠点は分かっているのですから、思考力を働かせてうまく立ち回る術を身につける努力はしましょう。
たまに周りが心配してくれているのに頑張る人がいますが、心配をさせてしまっている時点で迷惑になっています。
勤務中に熱が出たり怪我をしたりするようなものですから、早退をするなどして調整するようにしてください。
お互い、がんばりましょう!
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