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宮本常一の雑誌『口承文学』休刊理由について

 以下の記事で紹介したように、宮本常一は雑誌『口承文学』を発行していたが、この雑誌を第12号(昭和11年3月)で休刊させている。第12号に「休刊の辞」が掲載されているので、以下に引用してみたい。

本誌は本号を以て休刊する。その第一の理由は謄写版による雑誌の意義はきわめて小であると思うからである。その第二は小誌分立の時代ではないと思う。従ってこの二つのものを除き得る日が来たら、何時でも再刊する心算でいる。/本誌には本誌の特色をやや持ち得る様になって休刊するのであるから決してその目的を達しての事でもない。また矢つき刀折れての事でもない。その点心残りも多い訳であるが、休刊を喜んでくれる先輩を多く持った事がこの事を決心せしめたのである。そのいう所は更に我々同人が一だんと勉強し、日本民俗学の大成に致たさなければならぬ、と。

 宮本は『口承文学』の休刊理由を地域の小さな謄写版雑誌の意義が薄くなったこと、大きな雑誌に情報を集約する必要があることとしている。当時、各地域で宮本の発行していたような小さな雑誌が多く発行されていたが、情報の共有、集約やそれを活用した柳田国男の民俗学の方法である事例の比較を加速させて民俗学を発展させることを宮本は意図していたのだろう。

 この宮本の考えと対照的であったのは、拙noteでも度々紹介している加賀紫水の『土の香』である。以下の記事で紹介したように、加賀は柳田と交流があったが、一定の距離を取っていた。宮本も関わっていた柳田周辺の民俗学の動向と縁が薄く、小さな雑誌であり続けた『土の香』は柳田の民俗学と異なった価値観で発行されていたように思われる。


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